第78話 大抵の事は真実の方が残酷
「お、噂通りの」
「赤い扉……初めて見るわ」
「ふふ、前回見た時は震えたよ。死んだと思ったね」
「……エルメスさん程の人でも?」
「あぁ、リーダーに一杯食わされてね。それはそれは酷い罠で、私は身体中からあらゆ」
「おほほほい話はそこまでだお前たち、私語はそこまでにしておけ遊びじゃないんだぞやめておけそこまでだストォォォップ!」
「……何をしたのよ貴方」
眼前に迫った赤い扉。そう、ダンジョンボスの存在を示す扉がそこに。けどまぁモジモジしてる暇もないんでサラッと中へとお邪魔する。
「失礼しゃっす」
「ほんと気軽に入るわね……」
「リーダーだからな」
扉の向こうには……二本の棍棒を両手に持った巨大な魔物が全裸待機していた。誰得。
「な、なんて威圧感なの……」
「ギガントアーク……断崖の魔城の門番兵か。確か逸話の中に出てくる魔城を守る三巨兵の内の一体、何故こんな所に」
「以下略」
「へっ?」
「モタモタしてられませんからね。久々登場、秘技マリアナイフ。ほいっと」
俺は腰に忍ばせていた幻のナイフを取り出すと、それを縦に軽く振り下ろした。
【グギャァッ!】
断末魔とも言えない何かを一瞬発そうとした気もするが、間も無くその場に真っ二つに崩れ落ちる。いつもながら出落ち乙。
「え、ちょっ……嘘。まさか……一撃? あんな……怪物を? 嘘でしょ?」
「ふ、これぞ秘技マリアナイフ」
「特殊なナイフには見えないが……」
「マリアナイフ……マリア? ……まさかね」
そのまさか何ですけどまぁそれは良いとしよう。話してても長くなるだけですからね。さてさて。
「ん、問題なく魔力切れてますね。オッケーこいつはもう大丈夫。向こうにまだ何かありそう?」
「一応……階段はあるみたいだな」
「なら見るだけ見て、トットと帰りますか」
「ねぇ二人とも! アレを見て!」
姉さんが指を刺すのは真っ二つにされてから早くも消滅し始めているギガント何とかの残骸。その中から見えてきた……棒?
「んん? エルメスさんあれなんぞ」
「ふむ、ドロップか。ダンジョンボスのドロップとは珍しいな、棒……というより杖か?」
拾い上げたエルメスさんがマジマジとチェック。この人に分からなければ多分何かは判明しない。
「恐らく杖だな、これは一体……何の木だ?」
「何か分かります?」
「待て、調べてみる。……ほう、宝樹シルティッグか」
「また大層な名前が……効果とかは分かります?」
「少し待て、マジック効果は……【収納】か」
「収納?」
「銘を決めて、呼べば出現する杖だ」
「おぉ……何かファンタジーっぽい。他には?」
「特に無いな」
「馬鹿なの? その杖いったい何に使うの?」
「そうだな、効果は無いが……恐ろしく硬い様だ」
「えっ、打撃用? デジマ? 何それ怖い」
「君が持つといい」
「おっふ、なんつー品のない装備。見た目もただの木の一部というかなんというか。打撃用に杖ってそれ大丈夫?」
「ふ、君らしいじゃないか」
「魔法使いの称号なの? 馬鹿にされてるの? ちょっと意味不なんですけどやめてもらえませんかね?」
「何の事だい?」
「こっちの話」
よくわからないまま手渡されたのは実に無骨な杖。何というか、装飾がないというか、只の枝というか。あと地味に長い、軽く1メートルは超えてる。
まぁ取り敢えず名前か。もうなんかどうにでもなれって気分ですわ。
「銘はどうする?」
「混沌の支配者で」
それを言い切ると同時に俺の手元から杖が消失した。おぉ、なんかファンタジーっぽい。
「出す時はどうするんですかね?」
「さぁ?」
「……いでよ混沌の支配者!!」
手を高く掲げ、そして出現するであろうそれを掴む様に振る舞う。するとどうだ。俺の手の内には例の杖が握られているではないか!
「ヤベェこれめっちゃカッコいいじゃん」
「カッコいいの意味が分からないわね……。ねぇそろそろ行きましょ?」
「おっとそうだった、去れ!」
ひとまず手元から杖を消失させ、改めて部屋の奥を確認する。ふむ、階段がありますね。虎穴に入らずんば虎子を得ずってか。
「まぁ取り敢えずダンジョンが消える前に見るだけ見ておきますか」
「ここまで来たんだ、そうしよう」
そして俺たち三人は階段を降り、最終階へと進んだ。
______
「なんだここ?」
「これは……絵?」
そこは不思議な薄暗い部屋だった。
特に何がある訳でもなく、ただ部屋があった。
唯一あるのは壁一面に広がる巨大な絵、そしてそれがまるで物語を描いているかのように左上から右下にかけて横三列に物語が展開している、様に見える。
久々に見たマンガがこれとか洒落になりませんわ。
「何かの物語ですかね?」
「……逸話に、やや似ている気がする」
「逸話に? それってどんな?」
「では……ゴホン。圧倒的な魔の支配者する世界。そこでは闇が蔓延り、光は無い」
「ふむ、左上のそれか」
何と言うか、魔王っぽい魔王がウォーってしてる絵がまず左上に、多分ここが物語のスタート。そこから右にかけてそいつが暴れてる様が描かれている。で、話は二列目へ。
「そんな中、世界に勇者が降り立った。勇者は世界を救うべく、闇に抗った」
「まんま二列目ですね。でもそうなると……」
「そうだ、そこが違う」
二列目には勇者が魔物戦っている様が描かれている。闇の中の一陣の風といった雰囲気。一筋の光かな。
で、三列目には……勇者が魔王に敗れている様子が描かれている。どんな二流ライターだよこれ。バッドエンドにも程がある。
「逸話では魔王は勇者に敗北している。これでは……しかし恐らく流れは同じ物語なのだろう。どういう事だ?」
「これは過去の記録……とかじゃないかしら?」
「いや、過去に帝国が栄えた記録はあっても、勇者が魔王と戦った話は逸話でしか聞かない。架空の物語だ。それに現在も魔王は存在している。だがその勢力はこれ程の力を保持していない」
まぁ魔王ルムたんですからね。
妾はこんな顔ではないのじゃ、無礼者!
とか言いそう。
「なら……未来の話?」
「それならまだあり得るか。しかし噂に聞く魔王の現在の戦力では、恐らくリーダー単独でもある程度抗えるだろう。モモとルナレシアがいては魔王も危ない、その程度の力をここまで誇張するとは思えん」
ふーん、ルムたんじゃないのなら……別に何かいるんですかね、なんか魔王みたいなサムシングが。そういやダンジョンの奥にはそれっぽいのがちょいちょい居るけど……基本的にワンパンですからね。どいつもこいつも絶対的魔王って感じではなかった。最初のアレも含めて、多分全部パシリレベル。
「魔王がこれに当てはまらないのなら、この絵の奴は別の魔王って事?」
「別の……魔王だと?」
「俺さ、魔王は友達なんですよね」
「どんな友好関係なんだ、流石リーダーだな。呆れるよ」
「まぁそれは良いとして、多分と言うか絶対そんな事しない奴だった。ならこれは別人の線でいった方がまだあり得るんじゃね?」
「ふふ、君はなかなか面白い事を言うな。もし仮に別の魔王がどこかにいたとして、それがソレイユの言う通り未来の話だったとする」
「おっふ……それって……」
おいおいやめて下さいよ。
「未曾有の危機、最悪の事態だな」
それは流石にやめて欲しい。
勘弁して。
うーむ、謎に壮大な……雰囲気が。
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