第77話 隠し事を話された側は逃げられない
【B72】
探索を続けて早二日目も終盤、階層は現在72階。ほぼ走りっぱなし、マジ深いんですけど勘弁して欲しい。
「まさかたった二日でこんな所まで……」
「リーダーの露払いが秀逸だからな」
「そうね、どこまでいっても一撃で済むからこんなに早いのよね」
そうは言うけど一撃じゃないとおぶられてる姉さんが危ないですから。おぶってるエルメスさんも危ないし。それにさっきから割と敵のレベルも上がってるからあんま油断出来ないで、つまり余裕って程でもない。
「ところでエルメスさん、このダンジョンどう見ます?」
「ん、というと?」
「ダンジョンボスは誰かなって」
「ふむ、こういったランダムに魔物が生成されるダンジョンでは階層ボス、ダンジョンボス共に予想がつかない。そこが難しい所でもあるんだが、私としてはスリルみたいな物だな」
想定は無理か。まぁ……余り気にしなくても大丈夫か、多分そこは本当に大丈夫だろう。どっかのメタルオロチみたいな事でも無い限りは。
「成る程なるほど。因みにここの噂話での難易度と実際の状況を垣間見るに、何階くらいまでありそう?」
「恐らく90階、そしてレベルは150もあり得るだろう」
「え、レベル150のダンジョンボス……そんなの普通の探索じゃ攻略は無理よ」
「だから今日まで残っていたのだろうな。まぁリーダーから見れば瑣末な問題だ」
「た、確かに」
「こらそこ、油断しない」
「おっと済まない、それは私の役目だったな」
まだまだ今は冗談を言える程度だが、問題はここからだ。ここからは小さなミスが命に関わる可能性がある。パイセンやモモといる時とは訳が違う。それに回復の手段もない、攻撃は最大の防御でいくしない。
「とはいえ目標が恐らく90階であろう予想は立った。となると残りは20階層未満。今日はどこまで攻める?」
「ボス戦当日に余り無理はしたくない上に、帰ってからの事もある。もう少し進みたいんだけど、いける?」
「私はただのお荷物よ、せめて足は引っ張りたくない」
「私もただの同行者だ、リーダーが決めてくれ」
「よし、なら今日は85階まで攻める」
「む、意外と進むのだな」
「姉さんに体力がついてきてるのと、やっぱ向こうが気がかりなのでのんびりはしてられませんから」
「……やけに気にするな、そんなにか?」
「何もなかったらそれで良し、あっても対処できるがベストっしょ? 行ったら終わってたとか洒落になりませんから」
「……ありがとう」
「へ?」
「そこまで私の国の事を考えてくれて……ありがとう」
「いや……これは、まぁあれですわ、恩返しっすわ」
「もう……返せてるわよ、ルナレシアもきっとそう思ってる。私がもっとしっかししなくちゃいけないのに、いつも貴方たちに負んぶに抱っこで。自分でやろうとしても失敗し……」
「マイケルオンザヘッド!」
「痛っ!?」
「そういう所はパイセンとそっくりですね姉さん」
「……え?」
「だから放って置けないんだよなー全く」
「ふ、リーダーはお節介者だな。私は自分の欲に素直なタイプだからな、良い事だと思うしそういう所は好きだぞ」
「ちち違うから、そういうアレはアレだから。俺とかただのオタクだからほらあれ、ガチ勢ですから。余計な事言うなし」
「それにしてもお節介で救われる国っていうのも凄いスケールね」
「リーダーの器なら瑣末な事なのだろう」
「違いますから」
やれやれ、これはもう最初にパイセンと関わった所から立ってたフラグで、その前に俺が貰った大恩がある訳ですから。
多分それとこれとが等価交換なんですって。きっと最初からその意識だから……こんなに関わってるんだろうな。正直、部外者が首を突っ込み過ぎだとは思ってる。だからパイセンの世話をアレコレするのもこの件までだ。そこからは……。いや、またその時に考えればいいか。
余計なフラグは立てるべきじゃねっすわ。
危ない危ない。
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【B85】
「ふぅ……ここまでにしておくか。あと5階層くらいならすぐでしょ」
「今日は流石にちょっと疲れたな……」
「私も足が痛いわね」
78階層を過ぎだと所でレベル110を突破した姉さんが、不慣れとはいえそろそろ自分で自分は守るから、急ぎましょ! と言い出してくれたので、そこからは三人で並走。
そして何とか寝る事も、休む事すら殆どせずにここまで辿り着いた。かなり無茶させたのにほんと頑張ってくれましたわ。ここはひとつ、アレの出番ですね。
「とは言っても、ここじゃ碌に休めないし……座って寝ようかしら」
「ふははは、ここは俺に任せろ」
「どうしたんだリーダー? まさか自らの」
「違うから」
「ふむ、では何だと言うんだ?」
実はまだ少しだけアレが残ってたんですよね、この間のあの力が。
「いでよ! 砂のベッド!」
「えっ!?」
「成る程……盗賊のアジトでの力か」
「しょゆ事」
静かに生成される砂のベッド。ふむ、まぁこんなもんか。そうは言ってもこの力はこの間の残りカスですから、ベッドは二つまでしか出来ませんでしたけどね。ま、足りてるからいいんだけど。
「リーダーはこんな事も出来るんだな」
「もうこれで完全に打ち止めだから昨日は出せなかったんすわ。んじゃ俺は向こうで……」
「待つんだリーダー」
ガシッと俺の腕を掴むエルメス氏、あはん。
嫌な予感しかしない、ボスケテ。
「リーダーは他人の能力を吸収、応用が出来る。合っているな?」
「え、あ、はい」
エルメスさんは俺の目の前で神妙な趣きで少しだけ下を見て……そして顔を上げる。何なに、何が始まるの?
「……隠していてすまなかった。レベルも全て晒してくれているリーダーを信じよう」
「ワッツ?」
「私の能力は二つある、一つは植物を操る力だ」
「……それは凄いですね、もしやベッドくらいなら?」
「作れる」
「おっふ、デジマ? カッコつけたのに」
「そしてもう一つが、癒しの力だ」
え、癒しの力? 嘘だろ……。
「似合わねぇ……」
「言われると思った。ふふ、しかしまぁこれはエルフの特性みたいな物だからな」
「成る程ね、でそれが何か?」
「リーダーは本当に偏見がないな。癒しの力は珍しいから使えると分かると周りに利用されやすい、分かるな?」
「……確かに。でも種族的なアレでそ? みんな知ってんじゃないの?」
「だから種族ぐるみで隠している、他言無用だ」
「えぇ……まぁ言わないけど」
「よろしく頼む」
「……で、なんでまた今それを? ハッ!? ま、まさか……!!」
「ふ、察しの通りだ。私は今、無用に魔力が余っている。そして眠るとそれは回復するだろう。つまり……リーダーに一部預けるのが得策かと思ってね」
癒しの力を? つまり俺が回復魔法を使える様になるって事? 超絶便利なんですけどそれ。
「デジマ? 良いの?」
「リーダーが使ったのなら、その癒しの力はリーダーの力と認識されて私としてもやり易いからね。どうかな?」
成る程、俺が目立つ事で影での回復もやり易くなるって事か。実際は表立ってる俺もそれなりのリスクを払っていると。そこまで考えたら……まぁ確かにお互いにメリットのある話。
「確かにそれなら……合理的か」
「私の場合、分からない様に癒しの力と植物の力を混ぜて使う事が多いから、今回もその状態で渡そう。【世界樹の息吹】だ、受け取ってくれ」
「……どうやって?」
「無駄なく行くには接触するのがいいだろう。より密な方が良い、さぁ接吻を……」
「やめなさい」
「なんなら君と直接繋が」
「よせよせやめっ、やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」
「何やってるのよ貴方たち……」
「仕方ない、ならこっちに来てくれ」
「だ、抱きつくだけで良い訳? そそそれくらいなら余裕ですから、舐めんなし」
「ふ、なら良かった。一晩中私の魔力を吸って貰おう」
「……ワッツ?」
「……不潔ね」
二つ生み出したベッドのうち、一つは姉さんが。
そしてもう一つで俺とエルメスさんが寝ました。
一応言っとくけどさ。
寝れる訳ないから。




