第76話 邪魔だと気づいた時点で対処すべき
「ねぇ、まさかこのままダンジョンに潜る訳じゃないわよね?」
「まさかもヘチマもないっすよ。ほらさっさと……おっとその前に、ん」
「え?」
「ほら握手、はよ。シェイクハンドはよ」
「え……こう?」
「パーティ、オンザマイケル!」
「何言ってるの?」
「……成る程、まさか私が引率者によるレベルを上げて貰う側になるとは。分からないものだな」
「ほら、エルメスさんも」
「良いのか? 私をパーティに入れて。私は別に家畜で……」
「パーティオン」
「ふふ、君の冷ややかな視線は些か堪えるな。実に心地良い」
「やめなさい」
さて、ステータスを改めて確認しておきますか。
「ステータス、オンザマイケル!」
「何言ってるのよさっきから」
そして我が眼前に久々のアレが……出た!
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名前:アンダーソン
称号:神に選ばれし超絶オタクガチ勢
レベル:473
HP:27537
MP:9133
筋力:27315
敏捷:28801
耐久:27647
精神:26831
魔力:26789
スキル
【幻夢之懐】
パーティオン
【姉さん:レベル24】
【エルメス:レベル118】
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「れ、レベル473……嘘、ここまで強かったなんて……」
「ふ、やはりリーダーはとんでもないな。パーティを組んだ時に私のレベルにリアクションを貰えなかった事など本当に久しぶりだ」
「あーまたちょっと上がったっぽいな。こないだのアレか」
「エンシェントドラゴンがその扱いとは恐れ入る。全く、これを知っていればあの時あそこまで怯える事もなかったというのに。リーダーは私を嬲るのが本当に」
「こら、よしなさい」
取り敢えず二人をパーティに組み込みこのダンジョンでの二人の、特に姉さんの養殖が始まる。さて、ここは果たして何ダンジョンなのか。いざ、パイセンダンジョン(仮)へ!
「まさか本当にこのまま入るの?」
「え、そんなに深い?」
「噂では50よりも深いって」
「そんなもんか。八又の兄貴に比べたらそんなの屁でもないっしょ」
「それはまた淫らな兄貴がいたものだな」
「そうそう、所構わず手を出すわ食い散らかすわでもう大変でしたから。そういえば仲間も食われてました」
「ふ、成る程。それは所謂ねと……」
「さて行きますか!」
「さっきから何の話をしてるのよ」
何だかんだで我々だけのダンジョン探索が今、幕を上げた! デデーン!
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【B1】
「そしたらエルメスさんは姉さんおぶって貰えます?」
「容易い事だ」
「……私まだ演説の時の格好なんだけど」
「ふむ、確かにスカートが長過ぎるな。切るか」
「えっ」
「ここら辺でいいか」
「ちょっと……嘘でしょ? あっ、まっ、キャァァァァ!!」
「はい百合展開乙」
エルメスさんが姉さんの高価そうなロングスカートを膝上20センチくらいの所までバッサリ切り落とす。まぁ引っかかって死にましたとか洒落になりませんからね、当然っちゃ当然か。無論その光景は目に焼き付けましたご馳走さまです。
「もう……こんな事になるならもっとそれらしい格好で来たのに……」
「みんなイレギュラーだから我慢しろし」
「うっ、そうね。国の事なのに甘えた事ばかりでゴメン……よし!」
そして姉さんは自らの行いを恥じ、逆に自らヒラヒラとした上着を脱ぎ捨てて、薄着に!
「さぁ行くわよ!」
「いやこれは冷えるから持っておきましょうよ」
「だな、一日では帰らぬのだから寝る時に困るぞ?」
「そ、そうね。うぅ、恥ずかしい……」
脱ぎ捨てた上着をそっと姉さんに返して我々は遂にダンジョン内を駆け出した。
「前方ゴブリン……二体」
「二体? 珍しいな……流石厳しいダンジョンだけある」
「まぁトントンいきましょうか、倒すのは俺がやりますんで」
「任せよう」
特に触れる必要もなく、手前から素振りの要領で蹴り上げるだけでゴブリンたちは砕け散った。
暫くはこれでいけるっしょ。
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【B31】
「ねぇ……まだ進むの?」
「うーん、確かに結構とばして来たからなぁ。おぶられてるだけとは言え姉さんが危ないか」
「そうだな、私はまだ問題ないが少し休んだ方がいいかもしれない」
「もう少しくらいなら大丈夫よ? 不思議なんだけど、疲れてるけど大分マシでもあるの」
「あー、レベル上がってるから体力も自然回復してる訳ですか。ならもうちょい行く?」
「リーダーに任せよう」
さっきの階で出て来たの階層ボスが漸くゴブリンファイター二体だった。まぁ強いとは言え今までに比べればそれ程マズイ何かも感じない。
【B40】
「グリーンドラゴンも瞬殺か」
「アレくらいならエルメスさんでも瞬殺っしょ」
「まぁ確かにまだ問題は無さそうだ」
「会話が凄いわね……」
何だかんだでもう40階。流石にそろそろ体力的に辛そうな姉さんもご一緒なので、今日はここで休む事に。
「さて、取り敢えず今日はここまでだから軽く寝ますか」
「寝られるかしら……」
「ほい、こんな物しかないけど」
「あ……、ありがと。マントの上で寝てもいいの?」
「まぁ多少の汚れ対策にしかなりませんが」
「ううん、嬉しい」
「さて、リーダーは私の上かな?」
「おいやめろ」
「成る程、私がう」
「やめろぉぉぉぉ!!」
結局疲れていたのか姉さんはすぐに就寝。エルメスさんもクスクス笑いながら眠りについた。
やれやれ、急がないととつい焦るけど、茶化してくれるエルメスさんのお陰で何とか冷静でいられている。
向こうは向こうで上手くやってくれてるはずだ。信じて、ここを丁寧にこなそう。
出来るだけ、足早に。