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12.来て早々で悪いが、相談だ-……帝国行き、か?-

全43話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 中には、元は事務机であろうテーブルと椅子が並んでいる。部屋の大きさはそんなに大きくはない。十畳くらいと言えば伝わるだろうか。ただ、建物の構造上そんなに部屋の高さを取れなかったのだろう、アキムとの対比でいえばアンバランスに見える。


「何かやるか?」


 と聞かれたのでマタルは、


「いや、オレはこれがあればいいよ」


 と胸から煙草を出して首をかしげる。その問いに相手が頷いたのを確認してからライターで火をつけて一服する。


「じゃあ、オレも」


 とアキムも胸ポケットに入れていた煙草に火をつける。


 互いが数服ほど無言でその煙を吸っていた。そんな沈黙を破ったのが、


「来て早々で悪いが、相談だ」


 マタルだ。そんな彼に、アキムは顔色を変えずに、


「オレを頼ってきたというところを見ると、この辺りで人探しか、いや違うな。マタルがわざわざここまで来たというところを考えると……帝国行き、か?」


 ――おぉ、凄い。流石は兄弟、昔からそうだが頭はキレるな。


 とは思ったが、


「どうしてそう思った?」


 と笑顔で煙草を持った手のほうで指し示して、そう返してみる。これはマタルなりの会話術と言うべきか、相手に敬意を払いつつ、次に繋げるネタとしても使いやすい。もちろん[そうだろ?]と押されれば[その通りだ]と返すつもりでいる。だが、久々に会った相手、少し会話を楽しんでいたいというのもまた事実である。


 アキムは[そうさなぁ]と一言いったあと、


「消去法、だな。マタルがこのシマで動く可能性は低いと踏んだ。それはお前が軍属しているからだ。まぁ、こっちもそんなに深くは知らないが、どうも食材屋として働いているらしいというところまでは掴んでいる。まぁ、こんなところにいてもな、それくらいの噂は回ってくるんだよ。それから、ちょっと前になるが人探しをしているという話も、な。だから最初は今度も人探しを、と考えた。だが、人探しの件はオレの耳には次第に入ってこなくなった。とすれば人探しはケリが着いたと考えるべきだろう」


 と言って一服する。マタルもスゥーっと一服して息を吐きながら[それで?]と問う。


「人探しも違う、シマで動くのも違う、とくればオレが持っているもの。それは帝国の抜け道だ、とな」


 と言って[アタリか?]と煙草を持った手で指さす。


 マタルは、


「正解だ。流石はこのシマを切り盛りしてるだけはあるよな。詳しくは言えないんだが、帝国で少々[仕事]をしたいと思ってな。ここに来れば一通りは揃うだろうと踏んできた」


 ――そう、アキムなら。元々帝国出身のお前なら持っている横のつながり。それを借りたいんだよ。


 そんなアキムは一言、


「命が惜しければ止めたほうがいい」


 と言った。マタルが[ん?]という表情をしたのを見て、


「お前がやるというならもちろん協力は惜しまない。困った時に助けるのが兄弟だからな。だが、今はお勧めしない、と言っているんだ」


「その訳は?」


 とマタルが聞けば、


「帝国は今、魔女狩りをしている真っ最中なんだ。オレの知り合いも何人か連れていかれた」


 と言ったのだ。


「魔女狩り?」


 ――まさか[モグラ]狩りか? どうして今? まさか、雇い主の言っている事って。


 疑問符とも感嘆符とも取れない表情を察したのだろう、


「どうやら帝国は同盟連合に何某かの仕掛けをしているようだ、とまでは話が出回っている。そこで同盟連合と内通している人間を釣り上げようとしているんだ」


 とまで言われて、マタルは雇い主の言っていた言葉を思い出した。


[もう一つ調べてほしいことがあるんだ。ちょっと難しいかもしれないけど、帝国の内情を仕入れて欲しいんだ。軍の上層部が何を考えていて、次に何をしでかそうとしているかをね]


 ――これはいよいよオレの首も胴体と離れる時が来るかもな。


 とは思ったが、やらない訳にもいかない、と思う。手を抜くというのがまず考えられなかったのだ。


 自分でも雇い主に何故こんなに忠義のようなものを保っているのか分からない時がある。何なら、今すぐにでも縁を切って今まで通りの[稼業]だけを続けていれば、逮捕されることはまずないだろうとも思うし、身の安全がある程度確保されていれば、危険な案件に首を突っ込むのは得策でないのも分かる。


 カネが目当て、というほど生活は苦しくない。それでもマタルが興味を持つもの。それは雇い主の何がそうさせるのか。もしかしたらマタルは彼に[ニンゲン]ではない、仲間でもない[何か]を感じているのかもしれない。


 ――自分でも不思議な感覚だ。


「確かに命は惜しいが、これも仕事なんでね」


 と返す。


「まぁ、お前ならそう言うだろうとは思ったよ」


 と言われたマタルは[そんな風に見えるか?]と笑いながら、


「じゃあ、話の続きだ」


 と告げた。


全43話予定です


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