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91話 紛い物の真実


 俺、リリ、慎はリビングに待機していた。

 あの後、キリサメは雫さんの部屋へ運ばれて腹の傷を治すことになった。

 俺たちは居ても邪魔になるだけだろうと思い、リビングに来た。

 だがとても明るい雰囲気で話すことなんかできず、俺はキリサメの無事やルルのことを考えるだけだった。

 ルルが敵だと分かった以上リリ、こいつも敵なんじゃないかと、そんな考えが頭を渦巻く。

 悩むだけじゃ仕方ないか……

 そして俺は口を開いた。


「教えてくれリリ、お前は敵なのか……?」


「慎二お前……!」


「分かってる!

 けど……俺は今、リリを信用できてない。

 ルルについても俺は聞きたい、だから……!」


 リリはただ、顔を俯かせ口を閉ざしていた。

 この表情からルルの裏切りは想定外ってのは十分伝わる、だけどどうしても……

 俺は自分に腹が立ち拳を強く握りしめる。

 慎も同じ気持ちなのだろう、表に出そうとしてないがさっきからずっと警戒を解いていない。


「私は……敵、じゃない。

 ごめん、色々あったせいで心の整理がつかなくて、だけどこのままじゃダメだよね。

 何について聞きたい?」


「ッ……ありがとう。

 まずはルルの裏切りの理由、誰についているのかに心当たりがあるなら教えてくれ」


 裏切っていない、本人の口からそう聞けただけで今の俺には嬉しかった。

 リリは俺の質問に順に答えていく。


「裏切りの理由はよくわからない。

 けど誰についているのかは心当たりがある」


「そいつは……?」


「"タシテス"……だと思う」


 やっぱりか……

 タシテスは以前からキリサメを警戒していた、だからルルを使ってキリサメを……

 俺が考えを整理していると慎が次に口を開いた。


「だがよ、その亜人とルルに接点なんてあったか?」


 確かにタシテスとルルに接点がなさすぎる。

 あいつは慎重な奴だ、できるなら知ってる奴を使いたいはず……

 その疑問が解ける答えはすぐに出された。


「二人には言ってなかったよね。

 実は私たち、2年くらい前まではずっとタシテスの元にいたんだ……」


「あいつの元に?!どうして……」


 初めて聞くその話に俺は驚きをあらわにする。

 そしてリリはその経緯を暗い顔で淡々と話していく。


「私は14年前、このダンジョンの最下層で生まれた。

 右も左も分からない状況、最初の数日一人で彷徨っていると人型の……虎の亜人に出会ったんだ。

 それで私はそいつに捕えられてタシテスの元へと連れてかれたの……」


 虎の亜人、ティグのことか……

 そしてリリはどんどんと話を続けていく。


「そこからずっと私はタシテスの実験体にされて、色々された。

 体を隅々まで調べられたり、体の構造、内部はどうなっているのかの解剖もされた。

 それで私は魔法と魔力を手に入れた。

 毎日が地獄のような日々、苦しくて悲しくて……死にたかった。

 そして実験から数ヶ月が経過した時……ルルが私の地獄に現れた。

 "ルルは私の妹"、唯一の私の救いだった……」


「ずっと気になってたんだが精霊って、姉妹とかの概念ってあるもんなのか?」


 俺のその問いにリリは首を横に振る。


「通常、精霊に姉妹なんていうのは存在しない。

 けど私たちは確かに姉妹なんだよ」


「一体、どういう──」


「"複製体"……

 ルルは私のクローンなんだよ」


「クローン……?そんなわけ……」


「あの子は私と比べたら感情の起伏が激しくないでしょ?

 気とは心の源、それの集合体である精霊はその気がどんな感情を持っているのかに影響する。

 私を素体にしているとはいえ、自然発生したわけじゃないから感情が薄いんだよ」


 慎も俺もそんな話を初めて聞き確かに驚いた。

 リリの話からそれが真実であるとわかる。

 『ただの……リリの紛い物』

 その瞬間、前にルルの言っていたことを思い出した。

 だから、あいつは自分のことを紛い物なんて……


「けど嬉しかった……

 クローンとはいえ私の妹、世界でたった一人の私とちゃんと言葉を交わせた。

 だけど私たちは実験続き、一緒に入れる時間がすごく短かった。

 だから作ったのが……」


 そしてリリはポケットからその石を取り出す。

 それは俺に毎回預けてくれていた石だった。

 そんなに大事なものを俺に二人は預けてくれていたのか……


「これを待っていたら私たちはどこにいても一緒、ずっと二人だっ……て……」


「リリ……」


 その瞬間、リリから涙が溢れ出す。

 リリもルルが裏切ったなんて信じたくないはずだ。

 ルルも、本当に裏切ったのならあんな表情しないはずだ。


「こんなこと、二人に頼むのは……間違ってると思う。

 けど、お願い…私の妹を、助けて……」


 その瞬間、俺の心に数々の感情が浮上する。

 怒り、悲しみ、そして"勇気"……

 まだルルを許さない気持ちもある、だけどリリに、キリサメに頼まれた。

 その瞬間、感情の昂りにより黒い力が俺を包む。


「「任せろ、リリ……!!」」


 俺たちはリリにそう告げるのだった。



この話でも出てきましたがティグってかなり昔からいる存在なんですよね。

だから慎二捕まえに行く時とかでも連れていきましたし……

評価やブックマーク楽しみにしてます。


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