89話 見せてやるよ
夢を見た。
久しく見ていなかった、あの悪夢のような日々の……
毎日、登校して殴られ蹴られ。
殴られ蹴られ殴られ蹴られ殴られ蹴られを繰り返し、誰にも言えない日々が続いた。
誰にも助けを求めなかった、いつか来てくれると思ったから。
親に、藤宮に心配をかけたくなかった。
だけど本当は誰かに助けて欲しかった。
樋口ぐらいにしか助けてもらえなかった。
他のクラスメイトは誰も助けてくれなかった、巻き込まれたくないからだろう。
逆恨みだっていうのはわかってる。
自分が助けを早く求めなかったから、ほかに何かすれば結果は変わっていたかもしれない。
だけどそれでも……
「"僕"は、君たちを────」
***
「──きろ、起きろ!」
「はっ……!」
そして俺は自分の部屋で目を覚ました。
目の前には俺を起こしに来たであろう慎が焦った様子で立っていた。
「お前大丈夫か?すごくうなされてたぞ」
「うなされてた?」
その時、俺の体からすごく汗が出ていることに気づいた。
変な夢でも見てたのか?どんなの見てたのかよく思い出せない……
「大丈夫だ、心配させて悪いな」
俺はそう言い布団を出て、リビングへ慎と共に向かった。
リビングへ向かっているとき、慎が気まずそうに口を開いた。
「昨日は悪かったな……
あの後、体調とか大丈夫だったか?」
「あぁ、あの後少し気分悪かったけどすぐに寝たおかげか今はなんともない」
俺がそういうと慎はホッとした様子を浮かべ、俺たちはリビングへ着いた。
そこにはリリ、ルル、雫さん、キリサメが座っており俺たちは急いで座布団に座りご飯を食べていった。
***
俺とキリサメ、慎は食事を終えたのち庭へ来ていた。
「さっ修行始めんぞ。
もう決戦まで近くなってきたから慎二は一旦神気出して限界確かめろ」
俺はそれに頷くと俺は抑えていたのを解いた。
その瞬間、神気がうちから吹き出し俺の全身を覆っていく。
グッ……やっぱキッツ、早く外さねぇと。
俺は首にかけていたその石に触れて収納する。
石が収納されたと同時に吹き出していた力がかなり弱まった。
そして俺はそれを制御するのに成功した。
「慎二、今限界どれくらいだ?」
「限界は多分、30くらい。
それ以上からは抑えるのに集中するせいで神気まともに扱えなくなるって感じだ」
「まぁ10日くらいでそれなら上出来、神気の操作とかは大丈夫そうだから今日はそれで終わらせて決戦まで備えとけ」
「わかった」
俺はそう言い、蛇口を閉めるイメージで神気をうちに封じていった。
残り4日、絶対に負けるわけにはいかねぇ……
そして俺たちは修行を続けていった。
***
「んじゃ俺、風呂入ってくるわ〜」
慎はそう言い庭を去っていった。
風呂……そんなんで慎が修行終わるわけねぇだろ、絶対プレゼントの調整とかだな。
俺がそう思いながら去っていく慎を眺めていると、キリサメは口を開いた。
「お前も疲れたろ、少し座ろうぜ」
キリサメはそう言い庭と繋がっている部屋へ向かい、縁側に座った。
俺もそれに従いそこに座る。
「慎二……お前も聞いてるだろうが慎、剣気使えねぇだろ?」
「それがどうかしたのか?」
「いや、お前には伝えておいたほうがいいと思ってな。
あいつには言うんじゃねぇぞ」
キリサメはそう言い、慎の剣気についてのことを話していった。
「慎が、あいつが剣気を使えねぇのには理由があんだよ。
それはよ───」
そしてキリサメは話していった。
その話は俺にとっては衝撃的で、だがどこか納得ができる話だった。
そうか、だからあいつ……
俺がそう思っているとキリサメはずっと上を眺めていた。
「また、想像してんのか?」
「あぁ……想像すんのはいいもんだな、誰にも縛られない自由だ」
キリサメは微笑みながらそう言う。
俺もその気持ちを知るために同じように上を見て、空を自分で想像してみる。
うーん……
だが俺は顔を顰めながら……
「けど、やっぱ生で見たほうが綺麗だろ。
こんな想像じゃ満足できねぇよ」
「しょうがねぇだろ、ダンジョンの中なんだからよ」
「だったらよ……俺が見せてやるよ、キリサメに」
俺がそう言うと、キリサメは目を開いて驚く。
その後、微笑みを浮かべる。
「どうやって見るんだよ、出れるかわかんねぇだろ」
「……天井、ぶち抜くとか?」
「無理だろ」
そんなことを話す。
何にも意味のないこんなに軽く交わす話がやっぱり俺にはとってはすごく大事な時間だっていうのを話しながら理解する。
この時間を守りたい。
俺は絶対に決戦に勝つことを心に決めるのだった。




