全国の山田太郎さん、ごめんなさい
まず謝辞を、サブタイトルにも書いて有りますが。
全国の山田太郎さん、ごめんなさい! 何がごめんなさいかは、詳しくは本編へ。
# 75 名前にカイザーやエンペラーを付けると、戦闘力が高そうに感じる件
煉獄黒魔炎が迫って来た時に私は、修行中に出くわした黒龍さんを思い出した。
トラウマと言うべきか、既視感……いや? 走馬灯が頭を巡り、あの炎(黒龍)とこの火(厨二魔法)は雲泥の差もあるのにも関わらず、過剰に反応してしまい、どうすればあの黒炎を防げるかを考えていた、今この時!練りに練った策を試すべきだ! と、脳が勘違いをしている私は、腕輪を上に放り投げ、あの黒炎を相殺してやる!という思いを込めた、大津波を引き起こした途端に、リクちゃんとシュリさんはいつも「メルティアちゃんなら大丈夫」やら「メルティアがこの程度でくたばるわけがない」という無駄な信頼感があるせいか、いきなりヤバそうな魔物や魔法が来ても、狼狽える事はまず無いのだが? 明らかに素人が見ても、迎え撃つには場違いな反撃に2人は。
「ちょっ!えっ!? メッ……メルティアちゃん?!」
「は?……おい!正気かメルティアっ!!」
2人が驚くのにも理由がある…… 1つ目は、2キロくらい先には既に、フェルニーラ王国が見えており、このままいけば呑み込まれる可能性があるという事。
2つ目は、危機が迫って来た時に見せる、珍しく必死な顔のメルティア。
3つ目、上2つの状況で推測した結果、魔力が暴走したのではないかという仮説に至った為。
____厨二病魔法を放った男side___
男は大事な任務を受けていた…… フェル二ーラ王国の姫である、フィーリカ·ルクア·チェシア·フェルニーラ様に!我に!直々のご指名だったのだ!概要はこんな感じであった。
まずは、姫様の侍女殿から通信魔法が入ってきて
《姫がお呼びです…… 裏庭に至急、来て欲しいとの事》
我は、直ぐに向かう旨を伝え、猛ダッシュで向かうと? 優雅に紅茶を啜って居られた。
私は2mくらい離れた所で膝を付き、挨拶をした。
「お呼びでしょうか、姫様。
貴女の騎士の、このタウロー · カイザー · ダヤーマーが参りました。どの様な事でも遂行いたしましょう」
「ん? 来たわねヤマダカイザータロウ、貴方には少しばかりやって欲しい事があるの」
「はっ! 何なりと、失礼ながら御1つよろしいでしょうか?」
「何かしら、何か問題があるの?」
「問題と言いますか、我の名はヤマダカイザータロウではなく、タウロー · カイザー · ダヤーマーであります」
すると姫様と侍女は、きょとんした顔で「何か間違っているの?」と、全くピント来てない様なので、我は早々に諦める事にした。
直々に呼び出したという事は、急ぎの用があるのは間違いないので、本題に入る事にした。
「気付いてないのなら仕方がありません、それではまた後日、説明させて頂きます。
それで、頼みたい事とは?」
そう言うと、姫様は真剣な御顔になり、口を開いた。
「ええ、ヤマダカイザータロウ以外では遂行は不可能だと思われる程の、任務よ」
―― 我にしか不可能な任務!? フェル二ーラ王国内でも、今の実力はTOP3(スリー)に入るとは言われてはいる。
現在、駐在している者の中では1番の実力があるから呼ばれたのだろう…… とりあえず、どの様な内容の物かは、聞いておかねばなるまい。
「それで姫様、詳細を伺ってもよろしいでしょうか?」
そう尋ねると、神妙な御顔をしてから、口を開いた。
「本日、我が国に3名でこちらに向かってくる者達がいます。
その中の金髪の女を始末し、1週間後に控えている国祭で使用する宝玉を奪取してください」
―― ん?フェル二ーラ王国祭で使用する国宝の奪取!? 盗まれたということか? いやいや、それは有り得ぬ話だ。
国の創設にも携わり、共に数百年にも渡り歩んで来た、大英雄で在らせられるフェロリーナ様が遅れをとる等、想像もつかぬ話というもの…… しかも、旦那様であるローリッツ様もいらっしゃる為、伝説の神龍を連れていくくらいしなければ、難しいだろう。
そんな自問自答を繰り返した彼は「かしこまりました!行ってまいります」と、現場に急行していった。
タウロー · カイザー · ダヤーマーは、任務の対象の金髪女が、黒龍神の攻撃を耐え忍んだ化物とは、知る由もない。
______タウローside(現在)_____
時は戻り、自信のある魔法の煉獄黒魔炎で仕留めるつもりで放つも、金髪女は無詠唱かと思う程の速さで津波を引き起こし、渾身の火球を蒸発させ、城にまで影響を及ぼすかもしれない程の大きさに愕然した。
これ程までに圧倒的な力を見せつけられた彼は、任務の失敗と死を覚悟した。
______ ルナージュside _______
周りが見えなくなる程、必死になっていたメルティア、そして津波が城を飲み込もうする。
このままでは色々とヤバいので、ルナージュはリクに声を掛け、ある指示をした。
『リク!聞こえたら返事をして!』
「ん? …… ひゃい!?」
『聞こえたわね? メルティアの持ってる、似非海神がくれた槍を、波の中に投げ入れて! じゃないと、国家侵略罪で私達が、国際指名手配犯になるのよ!?』
リクは慌てて、メルティアから槍を奪取し、思いっ切り投げ入れ、津波に触れた所から割れていき、水蒸気となって消えた。
槍はタウローの顔を掠めて、彼は泡を吹きながら後方へ倒れ、気絶した。
まさか黒龍様の炎と、しょぼい火の粉を混同させて、アホみたいな津波を起こす主人に呆れ半分、期待半分という感想を抱き、放心状態の彼女に。
『私の悲願達成(ぐーたら生活)の為に協力してね? 今まで、私達姉妹が成し遂げられなかった、自由を得る為の試練、悪逆魂を1万個、そして…… 私達を人間達と結託して、武具の中に封じ込めた張本人の、父上様を武力で圧倒させる事。
メルティアとなら、貴女となら…… 出来る気がするわ』
________女神side________
―― はぁ…… 何とかなったわね。
ソーラの守護する海域に、幽霊船がいて助かったわ…… あの槍のレプリカが無ければ、愛しのメルティアちゃんが犯罪者になってたわ、後でクリムに礼を言っておかないとね。
しかもあの、黒魔龍様と対峙する何てね…… 流石ヤバいと思って助けに行こうとしたら、急に現れた白龍神様に羽交い締めを受けて、耳をはむはむと、甘噛みしながら。
『エヴュリスちゃ〜ん。
娘が心配なのは分かるけど、行っちゃダメよ? 危険な事を手伝わせたくないのは分かるけど、 今の状況的に猫の手も借りたい気持ちなの…… それは分かるよね? 』
―― それは言われなくとも、重々承知。
だけど、あの子に初めてあった時に約束したもの…… 充実した生活を送ってほしいと。
本当は魔王討伐とかどうでも良かったのに、最初の街で、平和に過ごしてもらえれば他に何も望んでない!生まれ変わってもあの子は何も変わってないじゃないの…… 人に使われるだけ。
そんなの嫌よね? メルティアちゃん。
その為にも、あのクソ爺の策を潰して。
ルリちゃんには、早々に隠居してもらわなくちゃいけないわ…… その為にも、力を貸して。
タウロー · カイザー · ダヤーマーさんは次回にも出てきますが、彼はもっと強くなりますきっと……山田太郎に、栄光あれ!!




