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第4章「デモンストレーション」 - 04

 授業が終わって、マナはミレイに声をかけた。


 「ねえ、ミレイ。今度練習試合があるんだけど、審判をお願いできない?」

 「マナが練習試合なんてちょー珍しいね。いいよ。誰とやるの?」

 「ヘータとバドルスの使い魔だよ」

 「? バドルスくんと試合するの?」

 「違う違う。ヘータとバドルスの使い魔が試合するの」


 ミレイは最初何を言われているのか分からなかったが、少し時間を置いて頭の中で反芻はんすうして話の内容を理解した。


 「もしかして、ヘータくんとオロンくんが戦うのっ!?」

 「そうだよ。そう言ってるじゃん」


 いきなり大声をあげたミレイに、マナは耳を塞ぐようにして返事をした。しかし、ミレイの興奮は治まらない。


 それもそのはずで、ヘータはマナが届け出用紙に体重2kgと書いたようにまだ誰の目から見ても幼い猫で、片やオロンは子供とは言いながらもすでに体高が2メートルもある陸竜ウィルムだ。


 その差たるや、オロンのつま先に引っ掛けられるだけで子猫のヘータにとっては致命傷となりかねないほどなのだ。誰の目から見ても正気の勝負には思えない。


 「何考えてるのよ! ヘータくん、死んじゃうよっ!!」

 「死ぬわけないじゃん」

 「ちょー死ぬよっ! グリフォンとアカセキレイより絶望的だよ。そんな試合、絶対やめて」


 ミレイはマナの肩を掴んで説得しようとしたが、マナはそれにも全く動じた様子もなかった。


 ちなみに、グリフォンとアカセキレイというのはどちらも魔法生物で、へびに睨まれたかえると同じように絶望的な力の差に戦意喪失する様子の言い回しとしてよく使われる組み合わせなのだが、それはまた別の話。


 「どうせ、またバドルスくんが無茶な難癖をつけて無理矢理そんな試合をさせられることになったんだよね。ボクが断ってくる」

 「待って」


 マナが全く事の重大さを理解していないようなのでミレイは自分でバドルスと話をつけようとその場を去ろうとしたが、その手をマナが掴んだ。


 「これはもう了解したことなんだ。今更断るなんてありえないよ。それに、ヘータはミレイが思ってるよりはるかに強いよ」

 「何言ってんの。ヘータくんは隠密専門の使い魔でしょ。実践ならともかく試合なんて無茶に決まってるじゃない」

 「へ?」

 「……あれ? 違うの?」


 これまたマナは知らないことだが、ヘータがフェイクだという説の他に、ヘータが隠密専門の使い魔だという説も多くの支持を集めていた。暗闇の中を足音も立てずに行動できる猫は隠密行動に最適だとうわさされているのだ。


 魔法生物でない猫をあえて選んだのも、魔法生物を検出するセンサーを回避して隠密性を高めるためだと予想されていた。


 「そうか、そういうこじつけもあったか。でも、もう試合することになっちゃったしな」

 「マナ、何言ってるの?」

 「残念ながら、ヘータは正真正銘の戦闘系なんだよね。だから、オロンとの試合でも全然大丈夫だよ」

 「てことは、何かちょーすごい特殊能力があるの?」

 「ないけど、ある意味では特殊能力といえなくもないかな」

 「どういうこと?」

 「それは見てのお楽しみ。それより、話を戻すけど、審判をお願いしたいんだよ」

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