第4章「デモンストレーション」 - 05
マナの再度のお願いを聞いて、ミレイは考え込んだ。
普通に考えてここは止めさせるところだと思う。たとえ子猫に特殊能力があっても、ウィルムと子猫の体格差は絶望的だ。
しかし、マナがあれだけの自信を持っているということは、その特殊能力は本当に強力な能力なのかもしれない。例えば、体が小さくても催眠系の強力な特殊能力を持つ魔法生物もいる。そういう種類のものなら、うまく決まれば大金星もありえる。
とはいえ、それでも2頭の体格差は大きい。それにオロンには強力な特殊能力もある。注意していないと一瞬で取り返しのつかないことになってもおかしくはない。
当のヘータはといえば、今はマナの側を離れてミレイの使い魔のメタルスライムに猫パンチをして遊んでいた。その様子を見るだけでは、どう見ても体高2メートルのゼオウィルムとまともにやり合えるとは思えない。
「分かった。審判をやるよ。ただし、危ないと思ったらすぐに試合を止めるからね」
「ありがとう」
結局、ミレイは審判を受けることにした。
長い付き合いで、ここでマナを止めようとしても止まらないと思ったし、それなら当日危険だと思ったところですぐに試合を止める方がいいのではないかと思ったのだ。
「マナさまっ」
「……」
ミレイとの話が終わったところで、タイミングを待っていたカルネに声をかけられた。だが、マナは無視してやり過ごそうとした。
「マナさまっ。ヘータさんとオロンさんが試合をするということなんですがっ」
「……」
「ヘータさんに勝ち目はあるんでしょうか?」
「……」
「噂では、バドルスさんと合意の上でやる見世物だという話もありますが……」
マナはそのまま無言で立ち去ろうとしたが、最後のカルネの言葉に振り返った。
「噂だということにすれば、いくらでも勝手に話を捏造できると思うのは止めてもらえるかしら」
ぞくりと背筋が冷たくなるような迫力でカルネをにらみつけるマナだが、カルネは一歩も引く様子もなく続けた。
「でしたら、この試合にどういう意味があるのか説明してください。誰がどう見てもまともとは思えません」
「試合にどういう意味があるのかなんて、試合を見ればすぐに分かることだわ。……でも、一つだけヒントを教えておいてあげる。ヘータは最強の使い魔よ」
翌日発売の校内新聞にはカルネの署名入りでヘータ対オロンの試合のことが数ページに渡って特集された。
その中にはマナの「ヘータは最強の使い魔」という言葉がでかでかと表示され、極めて詳細な戦力比較が乗せられていた。
ヘータについては試合実績がないため、カルネが総力を挙げて集めたデータを元にさまざまな仮説検証する形で戦力の分析が行われていた。若干、的外れなこともなくはないが、よく分析してあるレポートだった。
結論としては、ヘータは子猫にしては際立って身体能力が高いが、それだけのことでウィルムに勝てるとは考えにくいと結ばれていた。そして、何か隠し能力があるのではないかという予想も。




