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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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立派に育った可愛い子

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 イケメン騎士団長になってしまったオルツァーさんですが、やはり中身は残念仕様。



         オルツァー side



 薬の魔女が亡くなり、今日からはミネが新たな薬の魔女として砦にやって来る。

 相変わらずデザリスタ絡みの色んな犯罪は後を絶たないが、ミネを狙っていた仮面の男爵は、もういない。ミネが砦にやってきても大丈夫だろう。


 そう、やっとミネに会える。


 あれから5年、ミネも大人になったろう。


 そろそろミネが砦に来る頃かと思い、私は門番小屋で書類を書きながら待つ事にした。


「団長。何だって、こんな所で書類仕事をしてるんですか」


「いや、ランザ。ちょっとな」


「これ、クマのぬいぐるみですよね」


 今日の門番はランザとブルースだ。ランザは、以前、仮面の男爵の一味に捕らえられていた子供の1人で、今では立派な新人騎士となった。

 本当に月日が経つのは早い。ミネもランザと同じ位の背丈になっただろうか。いや、ランザと違いミネは薬師だ。身体は大して鍛えてないだろうから、もっと細身に違いない。

 綺麗な子だったからな。こんなむくつけき男共だらけの騎士達のいる砦なんかに来たら、奴らにどんな目にあわされるかわかったもんじゃない。

 私が出迎えに来ておいて、正解だったかも知れん。


「何で、クマのぬいぐるみを持って出歩いてるんですか、団長」


 5年の間に私も様変わりしたからな。ミネに私だとわかるように、ミネが私に作ってくれたクマのぬいぐるみを抱いているだけだ。

 ランザは色々と私に聞いてきたが、とにかく薬の魔女が来たら、私に報せてもらう様に言い付けた。

 ブルースの方は犯罪者として砦にきたが、貴族だった頃の癖がまだ抜けきっていない。しばらくは見張っていないといけないので、私がここにいる事は利に叶っている筈だ。うん。


 暫くして、門に通じるドアの小窓が開き、ランザが顔を出した。


「新しい薬の魔女だと言う人が、やって来たんですが。えーと、団長、新しい薬の魔女は男だと言ってましたよね」


「ミネが来たのか!?」


 おっと!ヤバい。

 慌てた拍子にカップをひっくり返し、紅茶が飛び散った。咄嗟にクマ吉は救いあげたが、書きかけの報告書は救えなかった。

 あー、書き直しだな、これは。


「慌てなくても、薬の魔女は逃げないと思いますよ……って。ちょっと。ブルースさん、何やってるんですか!」


 私はランザの後を追い、慌てて外に出た。


「ブルース!一体、何をやっている。女性に馴れ馴れしく触るんじゃない」


 ブルースが、女性の髪を触りながら、肩を抱いていた。

 ちっ!厄介な。もう一回と言わず、また暫くタンディン様の特訓コースに突っ込んでやろうか。体力がないから、訓練以外は門番に回される事になったが、この様な態度でいるなら……。


『捕縛転倒』


 懐かしい声が聞こえた。ミネ?


 女性なんかじゃない。あれは、ミネだ。


 ミネのローブの中から縄が飛び出てブルースの身体に巻き付き、彼は地面に転がされた。相変わらず、鮮やかな魔術だ。


「ミネ……ミネだよな」


 そこに立っていたのは、確かにミネだった。子供だった時に少し丸みを帯びていた頬は、スッキリとして、可愛いよりも綺麗と言う方がしっくり来る顔立ちになった。

 まるで女に見間違えそうに美しい青年になったミネは、相変わらず敵を容赦なく叩きのめした。

 

 ミネだ。ミネだ。私の可愛いミネだ。


 私は目から知らず知らずの内に、涙を流していた。


「お、大きくなったな。髪も随分と伸びて、綺麗になった」


 私は、思わずミネに駆け寄り抱き締めようとしたが、ミネに押し止められた。


「あ、ああ。綺麗になったなんて、男の子に言うべき言葉じゃなかったな。すまない」


「そうじゃなくて、ちょ、ちょっと待ってください!」


 そう言うと、ミネは自分が着ていたローブを脱ぎ捨てた。


「ミネ……ミネだよな」


「そうですよ。オルツァーさん、お久し振りです」


「いや、だって、その。あ!

 『薬の魔女』を襲名したからか。だから、ミネは薬の魔女の名の如く、女になってしまったのか!?くそ、魔女め。私の可愛いミネに何て事をしたんだ」


 5年前に少年だった可愛いミネは、今や、どう見ても女性に見えた。しかも、すこぶる付きの極上の女だ。


「はぁ?何を言ってるんですか。最初から、私は女なんです」


 私は、目眩がして、慌ててクマのぬいぐるみを抱き締めた。

 理解が追い付かない。何だって?


「いやいやいやいや。ミネ?え!?本当に?」


「はい。本当です。正真正銘、生まれた時から女でした」


 ミネは、胸を張って、ドヤっと片手を腰に当て、もう片方の手を胸元に持っていった。

 そんな仕草も愛らしい。


「でも、5年前は……うん、確かに立派に育ったな」


 私はミネの顔をじっと見て、そのまま視線を下に下ろした。

 うん。確かに叔父上の言う通り、立派な胸だ。腰も、中々。

 抱いて寝たら、さぞかし抱き心地が良いだろう。いや、一緒にベッドに入ったりしたら、抱いて寝るどころじゃないな。朝まで寝かせない自信は、ある。


 って、いや。私は何を考えてるんだ?


 そう思いつつも、私はミネから目が離せなくなっていた。

 そんな私を、ミネは以前と同じ様に怪訝な顔で見ていた。


 いや、誤解だ。オルツァーさんは、決してやましい事は考えていないからな。




「オルツァーさん、こっそり、その人を蹴るのは行儀悪いですよ」


「いや、だってな、こいつ、ミネに馴れ馴れしく触りやがって。羨ましいと言うか、腹立たしい」


「団長になったんですから、もうちょっと団員の騎士に威厳を示した方が良いかと」


「いや、オルツァーさんは、ちゃんと普段は威厳だらけなんだぞ。ミネ」





 一生懸命ミネに弁明するオルツァー。

 因みにブルースは、『元魔王な令嬢は、てるてる坊主を作る』にちょっとだけ出てきた、アメリアを仮面の男爵に売っ払ったアメリアの叔父さんです。

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