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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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17/21

天才教授は、バイトの助手を手離したくない

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 アレグサー教授、ポンコツ具合が止まりません。



 丸1日、アレグサー教授は眠り続けた。4日も徹夜した後で、そのまま魔力をドカッと使い過ぎたので、流石の教授も、身体がついていかなかったらしい。

 教授が眠っている間に私は大量の薬草スープを作り、どんどん『濃縮乾燥』させて、スープストックを作っていった。


「こっちの瓶に入っているキューブが風邪の時用、こっちが腹痛用、これが睡眠薬入り、これは普通の……」


 私の説明を聞きながら、レガスさんは紙に説明を書きながら、瓶に貼っていった。


 魔法薬を作るのには魔法薬剤師としての資格がいるけれど、こういう薬草入りスープや薬草茶は作るのに許可は要らない。家庭薬として認可されているのだ。


 私の大叔母様であるミーシャも魔法薬剤師の資格がないので、作ったモノは薬としては販売できないし、『薬の魔女』と呼ばれている。

 『薬の魔女』は、魔法薬剤師と言う職業がなかった昔から存在する民間療法で人々の病を治す魔法使いの事。俗に言う『魔女』を昨今ではクリーンなイメージに言い替えただけの事なのよね。


「ミネルバ、本当に学園を卒業せずに、辺境へ旅立つ気か?もうすぐ魔法薬剤師の資格が取れるのに、勿体ない」


「グズグズしてたら、借金取りに捕まって、やりたくもない怪しい研究をさせられますから。ここに居たって卒業できるかどうか判りませんよ。それなら、最初から自由に好きな研究が出来る辺境の大叔母の元へ行きます。

 それよりも、レガスさん。教授のお世話係は、見つかりそうですか?」


「ああ。丁度、従姉妹が莫迦な男に婚約破棄されてね。おっとりとして優しくて、兄弟が多いから面倒見の良い娘だ。打診してみたら、明日から来てくれる事になった。

 アレグサーには慣れて貰うさ」


 全ての瓶に説明書きを貼り終わったレガスさんは、棚に瓶をしまい込みながら、話を続けた。


「学園長に掛け合って、ミネルバが卒業式までに帰って来なかった場合は、この研究室でミネルバが寮に置いている荷物を預かることになった。後でこっそり送ってやるよ。アレグサーが開発しようとしている魔術なら、追跡されないだろう。

 荷物を送ってやるから、その折りにはスープストックや薬草茶を送り返してくれ」


 流石、レガスさん。ちゃっかりしてる。

 OK、OK。その代わりにこちらも、初回特典で無料提供しますけれど、次回からは、しっかり代金を戴きますね。

 私達は、商談に入った。大叔母様には辺境砦と言う販売先があるけれど、私には無いので、ここでしっかりお客さんを捕まえておかなくちゃね。


 起きてきた教授は、不機嫌だった。


「どうして僕が、反転魔術を完成させなきゃならないんだ?それが出来なければ、ミネルバは、ずっとここにいるんだろう?じゃあ、僕が作らなければ良いんだよね」


 これは困った。教授は、ちょっとヘソを曲げていた。


 あぁん?この期に及んで、何を言うのやら。


「アレグサー、何を言ってるんだ。お前が、勝手に連れて来たんだから、ちゃんと戻してやれよ」


「でも、そのお陰でミネルバは助かったんだから、良いじゃないか」


 教授は、天才だが、自分の専門分野以外はからっきしで、良くも悪くも子供みたいな人だものね~。ここは、一発。こうだ。


「本当に、教授の新しい魔術のお陰で助かりました。さっき、レガスさんとお話ししてたんですけれど、今後は、教授の新しい魔術を使って私のスープやお茶をこちらの研究塔に販売する事になりました。

 勿論、教授は、その為に私に会いに来てくれるんですよね?」


 私は、教授の大好物の熱々のパンケーキを差し出した。


「でも、このパンケーキだって、食べられなくなるじゃあないか」


 ナイフとフォークを持ち、早速パンケーキを食べ始めた教授は、モグモグと食べながらも、まだ少し不機嫌だった。


「勿論、会いに来てパンケーキも食べに来て下さるんですよね?

 砦では、養蜂家が居て、美味しい蜂蜜が、使い放題らしいですよ」


 モグモグとひたすらパンケーキを食べ続け、教授は何も言わなかった。でも、少し機嫌は治ったらしく、私をチラチラと見る。


 もう一声ね?そうすれば、私は送料をかけずに研究塔と商売が出来るわよね。


「教授の新しい魔術、見たいなぁ」


 そう言いながら、私はレガスさんの為に焼いていたパンケーキを、サッと教授のお皿に追加した。

 フフン。これで、どう?


「しょうがないなあ。そんなに僕の新しい魔術が見たいのか。そうか、そうか」


 すっかり機嫌が治ったアレグサー教授は、上機嫌で残りのパンケーキを平らげると、おやつには生姜入りクッキーを私にねだって、研究室に籠り、無事に反転魔術を完成させた。


「ミネルバ、やっぱり僕って天才だろう?早速、カウマンを呼んで、奴との格の差を見せつけてやろう」


 残念ながら、完成したのは夜半。宿屋の部屋に他の客が居る所に突然私達が現れるのは怪しすぎるので、翌日の昼過ぎに時空間魔術による移動が行われる事になった。


 流石にオルツァーさんは、砦に帰っちゃったと思うけれど。宿屋の女将さん達が、オルツァーさんが無事かどうかは教えてくれるわよね。


 私は、オルツァーさんが怪我をしていませんようにと祈りながら、眠りについた。


 また、会えるかな。


 会いたいな。オルツァーさんに。





「ミネルバ、私のパンケーキは?」


「教授が平らげちゃいました」


「私だって、楽しみにしてたんだぞ。アレグサーめ。くそー。あいつは、小さい時から好きなモノはガッツリ持っていくからな。腹立たしい」


「でも、教授は、レガスさんが居ないと生きていけませんから。人類の進歩の為に頑張って下さいね」


「判ってるけど、たまに、堪らなく腹立たしいんだよ。私のパンケーキを、返せ~((ヾ(≧皿≦メ)ノ))」





 レガスは、子供の頃からアレグサーに仕える侍従の様なモノです。

 アレグサーが自由過ぎて、時々、「いい加減に、しろ!」と心の中でプンスカ怒ってます。



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