勝者
輝幸と綾子は、暫定王者席から、その他の決勝出場者が待つ、控室へと移動してきた。
輝幸に気づくと、レイがやってきて声を掛けた。
「お前らが獲ると思たんやけどな。」
輝幸が苦笑いをしてそれに応える。
「あいつら、凄すぎましたね。」
「あいつらがヤバかったのは確かやな。」
レイも苦笑いしたあと、真剣な表情になる。
「でもな、お前らのネタもヤバかったのは、事実やで。」
「‥‥」
輝幸は、レイが気を使っているのかと思った。
「お前らのネタを見た時、俺たちが用意していたネタでは、どうあがいても勝てないと思った。だから、俺たちは、リスキーだが、ハマれば爆発力のあるネタに土壇場で変えたんや。」
輝幸は驚く。確かに、レイほどのベテランが、あのネタの危うさに気づいていないわけはない。
「そこまで、俺らを追い込んだのは、お前らや。もっと胸張れや。」
「ありがとうございます。」
「あと、二組あるが、結果を見るまでもなく、あいつらやろ。」
「そうですね。」
「お前らも、これから、あんなやつらが同期にいたら、大変やな。」
そういってレイは豪快に笑った。
輝幸は、またもや苦笑いを浮かべる。
「だがな、俺たちもまだ一年キングオブマンザイに出場できる。来年は、易々とは勝たせへんからな。」
そういうと、レイは背中を向けて、南高のもとに帰っていった。
隣で見ていた綾子が、
「気に入られてるね。」
といって笑った。
「そうなのかな?」
と輝幸も笑った。
そうこうしているうちに、二組の漫才と採点が終わり、常田が高らかに宣言する。
「今年のキングオブマンザイ王者は、”ハルシネーション”です。」
エンドロールが鳴り響く。
紙吹雪やリボンが舞い散る中、優勝トロフィーを掲げる圭介と遊星。
輝幸はそれを見て心が熱くなるのを感じた。
「そうか、俺、あいつらをライバルだと、負けたくないと思っているんだな。」
逃げ続けてきた輝幸が、誰かに対し、劣等感ではなく、真っ向から闘争心を感じるのは、人生で初めてのことだった。
一章も終了に近づいています。
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