みっちゃん
みっちゃんは、綺麗に日に焼けた女の子だ。
私より頭一つ以上背が高くて、手足がスラリと長くてかっこいい。
鍛えられた体幹が、自然と背筋をまっすぐに保たせ、ひと際高く見える。
どこか落ち着いた雰囲気を持っていて、突っ走る私の後ろで周りを見ていてくれる。
そのくせ笑うときに首をすこし傾ける癖は、私にはたまらなく可愛く映った。
「それは反則だと思う」
「ええっ、何がよ」
そんなやり取りの中でさらに破壊力を増すのは、私たちにとってのお決まりだった。
放課後の教室。
夕陽が差し込む机の上で、私たちはよくお菓子を分け合った。
チョコの包み紙やクッキーのかけらがみっちゃんの手によってさりげなく片付いていく。
「ねえ、たまには勉強しようよ~」
「えー、勉強なら明日の私がやるって」
「そいつがいつも裏切ってんじゃん」
「昨日の私は明日勉強するなんて言ってなかったし~」
あのときの会話を思い出すだけで、胸の奥がきゅっと痛む。
それは他愛ないやりとりで、どこにでもある友達同士の時間だった。
けれど、最後の言葉は、鮮明に覚えている。
「……じゃあ、勝手にすれば?」
それだけ。
たったそれだけで、私たちは気まずくなった。
それが終わりだなんて、思ってもいなかった。
何度もスマホを手に取っては、メッセージアプリを開いて、結局何も送れなかった。
“ごめん”の3文字が、どうしても打てなかった。
次の日、優しいみっちゃんは、いつも通りに接してくれた。
ただ、あのお決まりはなかった。
布団に潜ってスマホとにらめっこしながら、寄り道好きなみっちゃんの好きそうな計画を考えた。
ちゃんと、図書館にも寄って勉強もするルートで。
あとは誘うだけ。
「図書館行ってさ、その後近くのパン屋さん行くの!」
「なんだいなんだい?私が大のパンスキ~だと知ってのご機嫌取りかい?」
「……そう……ごめんって言いたくて」
「……へへへ、実は私も誘おうと思ってたんだ」
みっちゃんは、きっと謝りやすい雰囲気を作ってくれる。
そう、優しさに甘えきった優しい世界を夢見て眠りについたはずだった。
叶わないだなんて、思ってもいなかった。
「……ごめん。ごめんね、みっちゃん。」
声に出しても、もう届かない。
けれど、この空のどこかで、
もしかしたら――水の音と一緒に、少しだけ届くかもしれない。
ごまかしだけど、ほんの少しだけ、胸が軽くなった。
水面に、ほんの一瞬、彼女の笑顔が揺らいだ気がした。




