水の学校
「あの水がどこから来るのかなって。」
おじさんはそんな私の目的を聞いて、コンコースのようになっているという外壁の中、水路までの最短ルートを教えてくれて、一足先に奥へと進んでいった。
ぐるりと観察する。通路は奥に行くにつれどんどん高くなり、吹き抜けの高さに思わず息をのむ。緩やかな傾斜から、淡い光が差し込んでいた。もしかして、天井はガラス張りになっているのだろうか。至るところが苔むし、完全に透明な部分は見当たらない。
だが、そのおかげで差し込む光が木漏れ日のように散り、天井から届く光と下層で反射する淡い明かりとが溶け合って、広大な空間に柔らかな奥行きを生んでいた。
床の石は踏み心地が良く、かすかにきしめく。遠くから響くような水の轟きが石壁に反響し、静かなハーモニーを奏でている。
光と音、空間の広がり――それらがこの場所の神秘的な構造を際立たせていた。
「あはは、ここにもいる。」
左右の壁を見上げると、青・赤・白・黄色の長い布が垂れ下がっており、中腹にはあのシンボルが、上下に頂点とする正方形のかたちで描かれていた。
それぞれの布にひとつずつ愛らしいシンボルマークが添えられている。
一つは、まるでパスタの食品サンプルのようなデザインで、のぞき込むような笑顔が描かれている。
次に、さっきのウマカリちゃんのデフォルメ版――輪郭に口があるのに、笑顔にも口が――。
最後は、柄の長いフライ返しに笑顔の描かれたまんじゅうが乗っているようなデザイン。
幸せそうで何よりである。
外の明るさを背に受けながら突き当たりの扉をくぐると、道は左右に分かれていた。
緩やかな弧を描く石壁が向こう側の世界とを隔絶する。
足元の通路と、天井との境目付近にある明かり取りの隙間からは、斜めの光が静かに差し込み、仄かな光が並ぶ閉ざされた扉を照らしていた。
その先に階段の登り口を見つけ、なんとなくそわそわし、足早に上へ向かう。
二階に出ると、空気がふっと軽くなった。
壁際には細い窓が並び、そこからは外の景色が覗ける。
麦わら葺きの屋根が陽を弾き、家畜の群れがのんびりと草を食んでいる。
平和で、やわらかな午後の風景。
空気が、どこかへ向かって流れている。
耳を澄ますと、水の音が少し近くなっているような気がした。
下で聞いた反響のようなものではなく、流れのリズムがもう少しはっきりしている。
「上かな……」
思わずつぶやき、視線を戻して再び階段へと向かう。
3階からの少し高くなった目線から見下ろす景色に心を軽くしながら、続く階段をまた、登る。
階段を登りきると、冷たい風が頬を撫でた。
目の前には、信じがたい光景が広がっていた。




