表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/78

イシュ(偽)

 かつて、世界には魔物と呼ばれる強大な魔力を持つ生物が跋扈(ばっこ)していた。

 人々は、ギルドという制度を作り、そこに所属する冒険者と呼ばれるハンターたちが魔物を根絶(ねだ)やしにしていった。

 食物連鎖の上位から絶滅(ぜつめつ)していった結果、下位の生物は大繁殖(はんしょく)していた。

 最も繁殖したのはヒトという(しゅ)であり、さらに他の種を絶滅の危機に追いやった。


 かつて、魔物を「家族」と呼ぶ冒険者たちがいた。

 彼らは戦うためでなく、共に生きるために新たなギルドを結成(けっせい)した。


 そのうちのひとりが、愛した。

 異形(いぎょう)の者に、真の意味で心を通わせた。


 それは神々の(ことわり)に反するはずの愛――

 だがその祈りは(きよ)らかすぎて、神でさえ否定しきれなかった。


 こうして「願いの魔法」が生まれた。


 魔法は人と魔の間に橋を架け、

 その末裔(まつえい)たちは獣人として生を受けた。

 彼らは知性と理性を持ち、血に混じる魔力で

「異種の民」と呼ばれるようになった。


 異種の民は、力においてヒトに勝りながらも、心は限りなく穏やかだった。

 愛から生まれた種は争いを好まず、森の声や風の流れと語らいながら生きていた。


 だが、その優しさこそが彼らを弱者にした。

 かつてのハンター制度の余波(よは)により、魔物と見なされた異種の民は住む場所を追われていった。

 棲み処を追われ、森を焼かれ、それでも彼らは戦わなかった。

 血に(けが)れぬ道を選んだ。


「異種」と呼ばれるたびに、選民思想を(きざ)み付けられる。

 だがある日、(おさ)が言った。

()なることを恥じるな。イシュ──それは我らの言葉で『人』という意味だ。なれば私たちは、『人であることを知る民』だ。」


 こうして、異種の民は「イシュの民」と名乗り、(ほこ)りを(いだ)いた。


 野生への高い適応力を持つイシュの民は、ヒトが立ち入ることさえ困難な、霧深き山脈と断崖(だんがい)を越え、やがて誰の手も届かぬ大地にたどり着く。


 そこは――森と水と風が(めぐ)る、広大な地。

 彼らはその土地を「ガン・イシュ」と呼んだ。

「イシュの楽園」を意味するその名とともに、祈りと歌を残した。


「イシュ」それは原初の魔物

 愛を育み願いを唱える

「イシュの民」よ「人であれ」

 彼の地に向けて夜明けを祈ろう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ