異種(偽)
【王国正史におけるイシュの民の記述】
かつて、この地には魔なる者と呼ばれる恐ろしい生物が存在した。
彼らは神の理に背き、己が魔力をもって人の子を襲い、秩序を乱した。
だが神は人々に智慧と勇気を授け、冒険者たちを選び出した。
人々はギルドを組織し、神の名のもとに魔を討ち払った。
それが今日に至る王国繁栄の礎である。
やがて、すべての魔は地より追われ、世界に安寧が訪れた。
しかし一部の者たちは、魔の血に魅せられ、それを家族などと呼んで交わった。
彼らは人の道を外れ、神の恩寵を失った。
その結果、生まれたのが異種の民である。
彼らはヒトの姿を模しながらも、血の奥に魔を宿している。
その身体は強靭で、感覚は鋭く、だが心は不安定で暴力的だと伝えられている。
神はこれを哀れみ、「願いの魔法」を与えた。
それは、彼らが再びヒトに還るための道しるべである。
だが多くの異種はその願いを誤って使い、ついには森へと退き、
神の光を恐れた者たちとして忘れ去られた。
彼らは後に、自らを「イシュ(人)」と呼んだ。
だがその言葉は神の言葉ではない。
己こそ人であると名乗ることは、神に選ばれた我らヒトへの冒涜にほかならない。
王国の聖典はこう記す。
「異なる血は、試練であり、浄められるべきである。」
よって、イシュの民は神が与えた秩序の外にある存在であり、
彼らが人の世に戻るためには、ヒトに仕え、己の血を清めなければならない。
今日まで、彼らの子孫が辺境や森に暮らしているというが、
それは神が慈悲をもって残した贖罪の地に過ぎぬ。




