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「最後に歌っとくか!」


 祈りの歌は希望の音となって、別々の道を行く二人に火を灯した。


「ここからは別々ね。」

「うん、あたしたちの旅はここからだ!」


 そこは国境沿いに横たわる荒れた街道。怒りを知るイシュの民。


 1人は「あたしは泣いてる子がいたら、笑わせるんだ。悲しいままなんて、いやじゃん?」そう言ってニカッと笑う。


 もう1人は、外壁の街を目指す。


「じゃあな、例外。」

「ええまたね、例外。」


 ◆


 ーーいた!

 街に着いて、あの子を探す。においをたどる。面影を探す。そうしてようやく、見つけた。


「ねえ、覚えてる?私のこと!」

 そこは、外壁の内側、水源の間の真下に位置する入口から、水道橋沿いの白い道を風車を横目に中央広場に向けて少し進んだところ。

 水源の間を模した、縮小版の石造りのアーチ。


「あ?何だよ、お前なんか知るか!」

「ん?......おい、なぁ、この子......」

 ーーむんむん

 あの子に再会の言葉を言えた。だけどそれは、怒りを伴って。


「ずっと小さなころなんだけどさ、私、噴水のところであなたに飴玉貰って!」

「おい、お前、無視すんなよ!」

「ちょ待てって。なあ君も俺らと楽しまへん?ええとこあんねん!」

 ーーむんむん

 目の前に焦がれたあの子がいて、自分に興味を向けて貰えるよう、一方的に思い出を語り続ける。


「その時私、泣いてて。嬉しかったのにひったくって逃げちゃった。」

「さっきから大人しく聞いてりゃテメェ、いい加減にしろ!」

「いや、お前のどこに大人しい要素があってん!びっくりするわ!」

「「どうも、ありがとうございました!」」

「ぷっ、なにそれ。」

 ようやく、あの子が笑った。


「いい!今の顔サイコー!」

「なぁ、それどっちに?俺らやんなぁ?」

「はぁ、調子に乗らないで。それでそっちのあなた、名前は?」

「いや、お前がナンパするんかーい!」

「えと、リオナ......」

「えぇ名前やねぇ。ほなみんなで再会を祝しに茶でもしばこうや!」

 アーチの効果であの子のピンチを知り、それが今や、声の届いた人たちの笑いまで誘っていた。


 ガキン。

 私は邪魔な二人に対する怒りにまかせ、昔ハピィから貰った輪っか同士をぶつけた。それも、力一杯。

 無言のまま拳をどけ、床の上でひしゃげた硬貨を見せ、再び打ち付ける。

「いやいや、そうマジになんなって!暴力反対!」

「怒りや!マジもんの怒りの感情やん!」

「お前、よくこの状況でふざけられるな。」

「せやんな、ヘタしたら死ぬヤツやんな、コレ。でも笑いが、観客がワイを求めるんや!」

「そう言うことなのでお集まりの皆様、笑ってやってください!ここで笑っとかないともう笑うトコないです!いや、マジで!」

 アーチの下に笑いがこだまする。それが喝采となって私のもとに届く。

「あなた、凄いわね。おひねり、これでいいかしら。」

 あの子はそう言って、穴の空いた金貨をくれた。

「それを奪い取る!思い出の再現!」

「ほんでそれも打ち付けるんかーい!」

「あはははははは!ちょっともう!何やってるのよ!完全にくっついちゃったじゃない!」

 悲しい顔をしていたあの子は、今や大きな声で笑っていた。その様子が、ガン・イシュの子供たちと重なった。


「次は俺らってことですね、わかります。」

「すんません!完全に出来心やったんです!」

「反省はした。だが後悔はしていない!」

「いや、今度はお前がボケ始めるんか。もうエエわ。」

「「どうも、ありがとうございました!!」」

 その瞬間、大きな拍手が沸き起こる。穴の空いた銅貨が数多く投げ込まれ、褒め称える声まで混じる。


「ねえ、リオナ。それ、記念に貰うことってできるかしら?」

 それからいろいろあって、私はお嬢様専属の侍女として屋敷に迎えられた。

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