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私の正義

 「じゃあさっき見た死骸も……」


 口をついて出た言葉に、怒りが滲んでいた。

 手入れもされず、無造作に放置された動物の死骸。あれも、人の手で……?怒りで熱くなった頭に戻る光景。突き刺すような視線で、横たわる猫の瞳を見つめ、こぶしを握り締めた。


 リオナはぴくりと後ずさり、目をぱちぱちと瞬かせる。肩が小さく震えている。

 私の怒気がリオナを困惑色に染める。と同時に芽吹く全く別の感情が、その頬に浮かんでいた。


そんなささいな機微に構う余裕などなく、私は勢いに任せてまくし立てる。

「私はお嬢様よね?!何ができる!?」


 リオナは声を震わせ、答える。

「ええ、それはもちろん……領主様の娘ですので……」


 その答えをしっかりと聞き終わる前に、私は屋敷へ向かって駆け出す。


 屋敷が視界に入ったころ、リオナがぽつりと言った。

「実はさっきの丸太の人さ、奴隷なんだよね。首輪に枷まで付いてたでしょ。」

 その一言が火に油を注いだ。怒りが一気に燃え上がる。

 さっき見た丸太を担ぐ獣人の姿がフラッシュバックする。ときめきの記憶は、痛々しい現実に塗り替えられていた。


 私は血走った目で、屋敷の奥、領主のいる執務室へと駆け出す。

 怒りが私を前へと突き動かしていた。



 扉を勢いよく押し開けると、お嬢様のお父様が書類に目を落としていた。

「リル……どうしたんですか、その顔は」


 怒りに血走った目で睨みつける。言葉を選ぶ余裕はない。私にとっては他人で、問題を放置している敵寄りの人間にさえ見えていた。構うもんか。

「ねえ!屋敷の外で見たの!動物たちが人の手で殺されて、そのまま放置されてるたのよ!どうしてそんなことが許されるの!?!」


 領主は眉を寄せ、手元の書類を押さえる。

「リル……落ち着きなさい。事情を聞きますから。」


 そんな悠長な言葉は耳に入らない。私は机に駆け寄り、声を震わせながら机を叩く。

「落ち着いてなんかいられない!誰かがちゃんと守らないと、あの子たちはどうなるの!?村の中で!ぜんぶ……人の手で!!無残に!死んでた!殺されてたのよ!!」


 領主の眉がさらに寄る。


「だから……だから、作るべきなの!鳥や獣が、人の手でむやみやたらに殺されないように、放置されないように!その……ケモミミガチ守り隊、みたいな!」


 声が震え、体中の熱が燃え上がる。激しい感情が止めどなく溢れ出す。

「お嬢様!」

 後ろから、リオナの叫ぶ声が聞こえる。私は領主の顔を強く睨む。そうだ、私はこの人の娘。

「かわいそうな動物たち、みんな守られるべきなの!やるのよ、お父様!」


 領主は深く息をつき、書類に視線を戻す。

「……リル、その……具体的には、どのように守るつもりなのですか?」


 私は息を整えずまくし立てた。

「動物を!殺す馬鹿は捕まえて、厳しい罰を!外壁の外を、そうだ風車からとか、もっと見張って!」


 領主は顔を上げ、しばらく黙ったまま私を見つめる。その沈黙は、私の胸をさらに熱くさせた。

 異世界で目にした当たり前。あんなの間違ってる。怒りは正義感となって、常識をぶち壊さんと燃えていた。

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