街の外の情景
石畳の坂道は外壁まで続いており、城門のような立派な街の玄関口を抜けると、景色が一変した。
大通り沿いは宿場町となっており、客引きが空室状況を叫んでいる。昨日の窓からは見られなかった光景だ。
門が小さくなるころには石畳はなくなるが、どこか遠くにある隣の街へと真っ直ぐ続いてそうな道は、外壁内にあった白い道のようにしっかり整備されていて、馬車も活発に行き交っていた。
茅葺の屋根がまばらに連なり、広い牧草地には家畜が放牧されていて、土と干草の匂いが混じっていた。ようやく外壁から見た牧歌的な風景の登場だ。
「きれいじゃない……かなぁ……」
そんな私の呟きが聞こえたのか聞こえなかったのか、振り返るとリオナは少し肩をすくめるだけだった。
白い大通りを外れて村の道を歩くと、あちこちに小さな柵があり、家畜の鳴き声や子供たちの声が聞こえる。
けれど、ふと視線をやると、そこに置き去りにされた動物の死骸があり、手入れされず朽ちていた。
「……リオナ、これって?」
「……あ、あのね、鳥とか獣にやられちゃったのを……そのままにしてることもあるんです。」
リオナの声は小さく、説明を強制されるのを嫌うように、言葉を選んでいる。
「見てリオナ!あそこの人!」
遠くに見えたのは長尺の太い丸太を肩に担ぐ男。
特徴的だったのはその行動ばかりではなく、頭の上から飛び出た大きな耳。そしてモフモフした尻尾があることだった。
もしその瞬間のリオナの顔を見ていたら、苦々しい表情を見たことだろう。
「わぁ、やっぱりいるんだねぇ。もっふもふいいなぁ!ねぇリオナ、女の子だっているよね!友達になりたいよねぇ!」
目をキラッキラさせて振り向いたと思う。
「え、それは私が……いえ、どういう意味でおっしゃられているのでしょう……」
リオナは一瞬口をつぐみ、目をぱちぱちと瞬かせる。
言葉を出しかけては飲み込み、わずかに声が裏返る。
――言い直した敬語の響きから、何か言いにくいことがあるのだろうと感じた。
肩の力が抜け切れず、私との距離を測っているようにも見える。
動物好きを蔑むというなら受けて立つ!そんな思いで勢いに任せて反論する。
「はぁ!?ケモミミでモフモフだよ?はぁ……リオナったらあの良さがわからないとか……この世界にいながら絶対損してるって!!」
ケモミミやモフモフがいるなんて、猫カフェ常連の私にとって天国でしかない予感しかない。
「いえ、そのような意味ではなく……何とも思われないのでしょうか?」
リオナ、残念な子!私はこの世界の素晴らしさを自覚していないリオナに、いかに損しているかを懇々と説いてやろうと思った。
「何とも思うよ!逆に聞くけどリオナはこの素晴らしい世界について、どう思ってるのよ!……ちょっと待って、これは、どういうこと!?」
リオナの向こう側、打ち捨てられた子猫の腹には真新しい刃物傷。流れ出た血は地面を黒く染め、同時に私の心も黒い怒りの感情で染め上げるのだった。




