幸せは連鎖する
「それ!」
「それ?」
「ふにゃふにゃよ!」
まさに青天の霹靂だった。
固く防御することばかり考えていたミザリーにとって、思いつかないことだった。
「うーん何だろう。
私、魔法術は詳しくないんだけど、
ガツっと受け止めるんじゃなく、
へにゃっと受け流すというか、
ふにゃっと包み込むみたいな防御魔法術はないのかしら?」
ふんわりと笑いながら、両手をゆらゆら揺らしてアリアがイメージを伝える。
そんな姿を、皆が微笑ましそうに見ている。
それをみて嬉しそうにミザリーが言った。
「そうね! そうだわ! 私、頭がカチカチになってたのよ!」
ランチも食べず飛び出しそうな勢いのミザリーを、カイルは笑いながら引き止めた。
それに彼女も笑って答える。
「ミザリー落ち着いて。まずはランチを食べよう」
「そうね。そうだわ。この直線的な性格だから思いつかなかったのね、きっと」
そんな二人のやり取りを、優しい瞳で見つめるアリアの背後に、いつのまにかマリクがやって来てそっと彼女を抱きしめた。
「私の愛しのアリアは今日も幸せそうだね」
「マリク様!」
嬉しそうなアリアと幸せそうなマリク。そんな夫婦を羨ましそうにミザリーが眺めていた。
そのタイミングでカイルが小声でミザリーに問いかける。
「ミザリー、俺と明日も一緒にランチしないか?」
ミザリーはちょっぴり頬を染め、答える。
「明日だけでいいの?」
「明日も明後日もずっとミザリーと居たいよ。マリク殿のようにはできないけどね」
その答えに満足したようにミザリーは答えた。
「もちろん喜んで。私、ここへ来てよかった。全部の悩みが解決しそうだわ」
翌日からいつも一緒に行動するカイルとミザリーの姿が見られた。
二人の接点を不思議に思うものもいたが、彼らはいつも、おまじないが効いたと答えている。
ーーーー
後日、ミザリーは受け流す防護魔法術を開発した。柔らかい布は受け入れられ、王妃のみならず、王族ひいては騎士団全体の制服に取り入れられるようになったのだった。
ーーー
今、ミザリーの隣にはカイルがいつも居る。
今、ミザリーは幸せを感じている。
これから先、ミザリーはずっとカイルの横にいることを夢見ている。
近い未来に二人はずっと一緒に居るかもしれない。
あの日からずっと、二人のおまじないは、互いの幸せを望むことだから。