第23話 初勝利からの八千人再び
さて。
午後になって、エインヘリヤル八千人との模擬戦をすることになった訳だが。
「ええ……」
「おいおい、マジかこれ……」
俺たちが演習場に着いた時、やつらは既に陣形を整えていた。
彼らは三つに分かれ、それぞれが円錐形を作り、その頂点をこっちに向けている。
「……さすがだね。ボクらを追い込むためだけに、八千人の戦力を無駄にせず、全部を絶え間なく注ぎ込む」
「……やってくれるじゃねえか」
――歳さん。
「風見アカネ、並びに結城ハガネ! これより我々ヴァルハラ日本支部エインヘリヤル同盟は、貴君ら二名に対し、宣戦布告するものとする! これは演習であって演習ではない! 繰り返す、これはただの演習ではない!」
「ハガネ、なんか返さないの?」
え、俺? うーん……じゃあ。
「長え!!」
「……は?」
「いかにもカミそうなその名前、長すぎて眠くなるぞ!! あんたがいるなら、他の呼び名があるだろう、歳さん!!」
「くく……いいだろう。これより、ヴァルハラ日本支部エインヘリヤル同盟を一時的に《新選組》と呼称する!! 諸君ら、名に恥じぬ働きを見せてみろ!!」
『うおおおおおおおおおーーー!!!!』
うっは、すげぇ気合いだ。歳さんうめえな……。
「すごいねえ」
「な、やっぱ歳さんだわ」
「……ねえ、気づいてる?」
「当たり前だろ。さっきから一番前で仁王立ちしてガンくれてるじゃねえか」
そんなに見つめられると照れますよ。
――弁慶さん。
「ヴァルキリーアーマー装着。蜻蛉切」
「……イージス」
藍と橙の光の奔流。それらが複雑に絡み合い、やがて俺たちに収束する。
と、にわかに向こうがざわめいた。
「おい、あの結城の鎧、なんだ!?」
「知らねえ、見たことねえぞ」
「アカネさんの鎧にちょっと似てるな」
「うろたえるな!!」
弁慶さんの激が飛ぶ。一瞬でざわめきが収まり、目に見えて集中が高まってきてる。
あの二人はやっぱりすげぇ。
でも。
「だからこそ、だよね、ハガネ」
「……おう」
そう。
だからこそだ。
「クリアしたら最強のコンビだぜ、アカネ」
「……うんっ!!」
うし。
気合い入った。
「っしゃあ!! 片っ端からぶっ飛ばす!!」
――――
「両翼! 急速展開、直ちに突撃ぃ!! 一番槍は褒めてやる!!」
「うおおおおーーーっ!!」
始まった。
歳さんの言う通り、これはただの模擬戦じゃない。
二人対八千のガチバトル。言ってみりゃ喧嘩だ。
「っしゃ、最初っからトバすぞ、アカネっ!」
「! ……了解っ!!」
俺はまず、左の軍勢に向かって全力で走った。その後ろからアカネがピッタリと付いてくる。
ここまでは巨人の時と一緒だが、ここからは違う。
弁慶さん、あんたも知らない合体技だ。
「……全員、喰い尽くす」
「ハガネっ」
「おう、いくぜぇ!!」
トップスピードのまま、左手の盾を抱え込む様に右手で掴む。いつものシールドバッシュの構えだ。
だが。
「アカネ!」
「はいっ!」
アカネがおれの右肩に飛び乗る。そしてそのまま、俺の肩を蹴って。
――前に、跳んだ。
「っし、どんぴしゃあ!」
「いくよっ!!」
アカネが跳ぶと同時に、俺がシールドバッシュを放つ。
その盾を踏みつけ、アカネは更に加速しながら前に飛んだ。
「なっ!!」
「飛んだ!?」
アカネは空中で身体を小さく畳んだ。しゃがむような姿勢で槍を両手で持ち、思い切り右に上体を捻っている。
その姿勢で弾丸のように飛んだまま、アカネは槍を横薙ぎに振り、そのまま逆時計回りに回転した。
――――
「シールドバッシュに乗っかる?」
「うん。今のボクらなら出来るんじゃないかなって」
言い出しっぺはアカネだった。
ヘイムダルとの模擬戦の後、部屋に戻り、あぐらをかいた俺にアカネがすっぽりと収まった体勢のまま、次の大規模戦闘に向けて作戦会議を行っていた。
「飛びやすいように手加減しちゃだめだよ? ハガネの本気のシールドバッシュじゃないと勢いが死んじゃうから」
「……」
「ね? それが成功したらさ、敵陣の真ん中まで一気に突っ込めるし」
「……お前、自分が半分生身だって忘れてねえか?」
「大丈夫。……だって」
アカネが俺を見上げる。少し頬を赤く染め、俺を見つめたまま、にっこりと微笑んでみせた。
「ボクたちだもん。でしょ?」
「おま……」
俺は多分、だいぶ間抜けな顔をしたに違いない。
だって、それじゃあまるで……
「理由が雑すぎんだよっ。お前は俺か!」
「きゃーっ。そんなの決まってんじゃんっ。ハガネに毒されちゃったんだよぅ!」
俺は、アカネの頭を乱暴に撫でたのだった。
――――
「バッシュブースト・トルネードぉっ!!」
それは、超高速の小型台風が突然発生したようなものだった。
台風の目はもちろんアカネだ。
「があああっ!!」
「重心を落として踏ん張れ!!」
「お、おうっ!!」
……甘えよ。
「うあっ!!」
「なんだこれ! ……か、カマイタチ!?」
なんとか暴風に耐えると、次はアカネの槍から発生した真空波が飛んでくる。
踏ん張っても逃げてもだめ。キツいだろ。
――さらに。
「結城ハガネが突っ込んできます!!」
「なにぃっ!! 止めろぉ!!」
「……無理だよ」
「と、止まら……うああああっ!!」
最短距離でアカネの元へ向かう。鎧のおかげで防御をする必要はない。ぶつかるものは吹き飛ばす。斬りかかるものは盾で受け、引き抜いた剣で薙ぐ。
左翼の最前線ラインは、この時点で壊滅状態になっていた。
程なくして、もはや爆心地と言ってもいい、アカネの姿が見えてきた。
「ハガネっ!!」
「! アカネっ、こっちへ!!」
「!」
アカネの向こう側、円錐形の更に奥に見えたものは。
「大砲……?」
「あれ! 戦車じゃねえか!!」
いつだったか、ニュースで見たやつだ。
「砲塔! ずっとこっちむいてる!」
「俺の後ろへ!!」
上等だ。
「受けて立ってやらぁ!!」
これからクライマックスに向けて熱い展開が続きます!
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