試験官がなんか知ってる人だった件について。
日曜日だからなんとか書けた…
お楽しみいただけると幸いです。
さて、あれから二日経った訳だが。
全員でギルドに向かったはいいが、そこにタウリの姿はなく、職員に闘技場の方へと向かうように言われてしまった。
どの国にでも闘技場はあるんだな、と思いながらも嫌な予感を拭いきれなかった俺たちを待っていたのは、闘技場の前で立つタウリと凄い量の観客だった。
「おいおい、これはどういうことだよ」
「そりゃあ、Sランクが誕生するかもしれないってことだからよ。
人が集まるのも無理ねえだろ。
ま、Sランクの試験なんてのはいつもこんなもんだ、気にすんな」
「いや、気にするんだが」
忘れてる人もいるかもしれないが、一応俺コミュ障なんだよ?
厨二病が再来してなんとかなってるけど、こういう、人に見られのは苦手なんだよな……。
というか、闘技場で、かつこんなに人が集まるってことは……。
「よし、じゃあヨエナには今から試験官と戦ってもらう。
それ相応の実力を見せないと合格にはならないから、精々頑張れよ」
「デスヨネー」
嫌な予感は的中したわけだ。
まあ、Sランクになるためには実力が必要なわけだし、それを知るには戦うのが手っ取り早いのは確かなんだが。
「俺は魔物使いだけど、何体まで出していいとかいう制限はあるのか?」
「ん?魔物使いだったのか。
そうだな……まあ、魔物使いはランクごとに眷属にできる魔物の数が決まっているらしいし、ヨエナが従えている数だけ出していいことにするか」
俺の場合、眷属にできる数に限りがないんだけど、言う必要は無いよな。
それに、そもそもそこまで多く従えてないし。
というか、一体どの魔物を出せばいいんだよ。
試験官の強さもよくわからないし、下手したら一瞬でケリがつくような気がするぞ。
「ルールは分かった。
それで、いつ始めるんだ?」
「ヨエナが来るのを待っていた訳だから、いつでも準備はOKだ。
中の控え室でしばらく待てば、試合に呼ばれるだろうから、それまで待っていてくれ」
「わかった」
「あの、私達はどうすればいいんですか?」
そう声をかけたのは舞だった。
それに対し、タウリは観客席への入口とは逆方向を指さす。
「あっちに、普段貴族達がよく使う、特等席のようなものがある。
今日は貴族が来ていないし、特別にそっちを使ったらいい」
「わかりました」
舞が頷く。
少しだけ上機嫌だ。
やはり、特等席という言葉は嬉しいなものなんだな。
ティフィアとハルノも「と、特等席!私、初めて座ります…」「普通の人はみんなそうだと思うけどね。かくいう私も初めてで楽しみ!」みたいな会話をしている。
「じゃあ、舞。試合が終わったらここで合流しよう」
「うん、優斗君、頑張ってね!応援してる!」
「お、お師匠様、頑張ってください!」
「多分、ユウトなら余裕だと思うけど、頑張って!」
「おう!」
みんなの暖かい応援を受けながら、俺は控え室へと入っていった。
△
▽
△
闘技場の中は、カラマ王国とはそう変わりなく、俺は特に迷うことなく控え室に辿り着いた。
前回と違うところは、俺以外の人が誰もいないところだ。
それはそれで少し寂しく感じる。
「思えば、城を出てから、舞、ハルノ、ティフィア、ライム、カリン、アマルーナ、ゴルドラ、ロプス。
みんなと出会って、一人になる時が無かったからな…。
そう考えると、本当に、みんながいてくれてよかった」
最初は一人で旅をするつもりだったが、こうしてみると、それはどれだけ寂しい旅になったことか。
そう、独り言のように呟き感慨にふけっていると、すぐに、俺を呼び出す放送がかかった。
俺はこの先の戦いへの少しの高揚を感じながら、闘技場の入口を通って中に入った。
舞台に俺が出てきたことで、観客が盛り上がる。
悪くない気分ではあるが、やはり落ち着かない。
ふと右側を見ると、ガラスに覆われた場所に舞たちの姿が見えた。
あそこが特等席みたいだ。
笑顔で手を振っている舞の横には、俺をテストするためだろう、タウリの姿もある。
俺はそれに手を振り返しつつ、前方を見据えると、対戦相手である試験官が歩いてくるのが見えた。
段々と近づいてくるその姿を見て、俺は言葉を失う。
なぜなら、その姿は見たことのあるものだったから。
「やあ、また会ったね。
本当なら僕は試験官なんてする柄じゃないんだけど、対戦相手が君だと聞かされて、すぐにやる気になったよ」
それは、ハルノに告白した、門番で寝ていた男。
彼はいつもと変わらない調子で俺に言った。
「よくよく考えたら、一目惚れなんて、普通は報われないものだったよ。
だったら、順調に仲を深めていけばいい。
だから、ヨエナ君。この勝負に僕が勝ったら、僕を旅に連れて行ってもらえないかい?」
「……それは」
『それではまもなく、ヨエナさんのSランク試験を開始したいと思います!
五人目のSランクとなるか、期待が高まるところですが、何より注目なのは、同じSランクであるカインドさんとどのような戦いを繰り広げるか、というところですね』
『そうですね。
中でも、カインドさんはSランク屈指の実力者。
一瞬で勝負がついてしまうなんてこともありえそうです。
それでは、実況はミミ、解説はリーシスがお送りします!』
それを聞いて、俺は更に固まってしまった。
目の前のこの男が……Sランク?
「ああ、そういえば言ってなかったね。
僕の名前はカインド、世界中を旅してる。
ヨエナ君、いい勝負になることを願っているよ」
「……ああ、こちらこそ」
つまり、俺がカインドが旅についてくることを反対して言った『危ない旅だから死ぬかもしれない』って言葉は、この男には不要だったってわけだ。
負けることはないと思うが、これはもしかしたら、出し惜しみせずアマルーナを出さないといけなくなるかもしれないな…。
なんとかカリンとライムだけで勝ちたいものだ。
『二人の会話も終わったみたいですので、これより、Sランク試験を開始します!
それでは向かい合ってください』
俺達は少し距離を取り、向かい合う。
観客の声が少なくなり、俺は意識をカインドに集中させる。
そして、試験は始まった。
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