「第1話 恐怖の館への侵入」
はじめに本作をご覧いただき、ありがとうございます!私たちは海外の作家コンビです。日本のライトノベルが大好きなのですが、日本語がまだ完璧ではないため、AIや翻訳ツールを使いながらこの物語を執筆しています。不自然な表現や、おかしな日本語(誤字脱字など)があるかもしれません。もし気になる点があれば、コメントなどで優しく教えていただけると非常に助かります!拙い(つたない)日本語ではありますが、皆さんに楽しんでもらえるよう、一生懸命ストーリーを作りました。応援よろしくお願いいたします!
クーデター1
雲ひとつない空、かすかな風、そして満月。その月は持てる限りの強さで光を放ち、街の薄暗い路地でさえ静かで、どこか神秘的に見える光に包み込んでいた。
それは珍しいことだったが、トワイライトシティには静かな夜が訪れていた。サイレンは遠くでしか聞こえず、深夜に街を歩く人影もほとんどない。完全に一人でいるという事実を、ジェームズは安心感と不気味さの両方として感じていた。
街灯の下で安全に立ちながら、彼は高い建物の壁を走る影を見つめていた。この街の西地区には主に長屋が立ち並び、通りはまばらに配置された街灯によってわずかに照らされているだけだった。常に明るく光り、ネオンが点滅する高層ビルだらけの中心街とは正反対だった。
ジェームズは落ち着かずに待ちながら、影が奇妙な形へと変わる様子を眺めていた。
これは自分の転機になるかもしれない。
この夜が終われば、皆が自分の名前を知ることになるかもしれない。少なくとも、まだ決めていないその悪党名を。だが順番に進めよう。
緊張は彼をむしばんでいた。今夜のために考え抜いた台詞を、頭の中で何百回も繰り返した。会話がどう進むかを考えていたが、心のどこかではそんな理想通りには進まないと分かっていた。
だが突然、永遠にも思える待機の後で、何かが近づいてくる音が聞こえた。
彼は慌てて汗をかき始めた。心臓の鼓動は夜の音をかき消した。口は乾き、視界は回り始め、集中するのが困難になった。
「さて、お前がうちに入りたいってやつか?」
ジェームズは話しかけられたことを理解するのに少し時間がかかった。しかし気付くとすぐに声の主の方を向いた。
そこで見た二人の姿に、彼は衝撃のあまり恐怖を忘れそうになった。
チルキルがコスチュームを着て活動する組織だということは知っていた。だが、雪だるまと巨大ペンギンが目の前に立っているとは想像もしていなかった。
ペンギンはジェームズの視線に気付いた。
「ボスはまだギャングのテーマを完全には決めてないんだ。だから何がクールで実用的か試してるってわけ。」
すると雪だるまが口を挟んだ。
「だが、お前の仕事は俺たちの服を見ることじゃねぇ。特にその格好じゃな。」
ジェームズはその声が最初に話しかけた人物のものだと気付いた。そして確かにその通りだと思った。
彼にはまともな「悪党用の服」がなかったので、濃い青のラテックス、執事の黒いマント、そして子供の頃から好きだった濃灰色の魔法使いの帽子で即席の衣装を作ったのだ。
皮肉にも、彼はマスクはあまりにもありきたりだと思い、代わりにオレンジ色に染めた眼鏡を選んだ。
今考えると、自分はひどく間抜けに見えていたに違いない。ジェームズは恥ずかしさで少し顔が熱くなった。
雪だるまはジェームズが木のように突っ立っているだけだと気付き、話を続けた。
「ボスがお前とはもう話をつけてる。俺たちは忘れ物がないか確認するだけだ。お前の機械で屋敷の警報を妨害する。侵入して、窓からあの花瓶を取る。そして脱出。それで終わりだ。分かったな?」
ジェームズは黙ってうなずき、レンゾ邸へ向かった。
西地区から見ると、その屋敷は街の外れの丘陵地帯、場所によってはアルプスのような地形の中にあった。
豪華な別荘が建つ巨大な丘へ近づくにつれ、ジェームズの中にはますます不安が湧き上がった。一歩一歩が重く、前より遅く感じられた。
心臓は激しく脈打ち、その音しか聞こえないほどだった。汗は全身の毛穴から噴き出し、ラテックススーツはその不快感をさらに増していた。
鉄門へたどり着いたとき、彼は恐怖に飲み込まれ、すべてを放り出して家へ逃げ帰りたくなった。
だが彼は自分を落ち着かせ、執事から教わった呼吸法を思い出した。
少し落ち着きを取り戻した後、再び巨大な屋敷を見上げた。
庭園は何キロも続いているように見えた。別荘そのものも古代の要塞のようだった。
丘の頂上から、その建物は暗く不吉に彼を見下ろしているように見えた。
その持ち主についての話は街中で知られていた。所有者の名はレンコ・ロマノフ・ルドルフ・レンゾ。その性格は善良な人間とはまったく似ても似つかないと言われていた。
震える手でジェームズは拳ほどの大きさの装置を取り出した。
装置を開くと二つの画面が現れた。彼は様々なボタンやダイヤルで設定を調整した。
彼は事前によく調べており、この屋敷が市場で最も先進的な警備システムを使っていることを知っていた。また、いくつかの「改造」が施されていることも知っていたが、その詳細は分からなかった。
以前侵入を試みた人物が「人間ジャイロス」のような姿になったという噂も聞いていた。ジェームズはその運命をぜひとも避けたかった。
短い調整の後、装置は門に流れる電流を表示した。
仕組みは単純だった。門を開いて電流が乱れると警報が鳴る。
ジェームズは装置のアンテナを受信用の門扉に接続し、回路を一時的に迂回させて連続した電流を偽装した。
小さな電子音が成功を知らせた。
彼は素早く門をくぐった。
しかしその直後、不注意にも動体検知装置を踏んでしまった。
数メートル先の地面が開き、二機のドローンが飛び出した。
装置によれば赤外線で周囲を探査している。
そして肉眼でも、その銀灰色の機械がこちらへ向かって飛んでくるのが見えた。
人間ジャイロスの話を思い出しながら、ジェームズは必死に逃げ道を探した。
すると左手に巨大な生け垣迷路があることに気付いた。
彼はためらうことなく、鍛えていない身体の力を総動員して迷路へ飛び込んだ。
しかし盲目的に逃げたせいで細いワイヤーを見落とし、それにつまずいて湿った芝生へ顔面から転倒した。
そして恐ろしいことに、入ってきた入口は巨大な生け垣で塞がれていた。
別の出口を探すしかない。
この屋敷の主人は完全なサディストか、あるいは偏執狂か、その両方に違いないと彼は思った。
ジェームズは装置を使って罠を探した。
周囲を一センチ単位で慎重に調べた結果、見つかったのは追加のトリップワイヤーといくつかの圧力板だけだった。
単純な罠だと安心する一方で、もっと巧妙に隠された危険への恐怖もあった。
彼は慎重に出口探しを始めた。
装置の一方の画面は周囲をスキャンし、もう一方は彼の歩いた経路から地図を作成していた。
一歩進むたびに、彼はまた人間ジャイロスの話を思い出した。
恐怖と絶望を抑えるのは簡単ではなかった。
彼を正気に留めていた唯一のものは、自分がなぜここにいるのか、何を成し遂げたいのかを何度も繰り返す内なる独白だった。
彼は名を上げたかった。
影の中から抜け出したかった。
人々が畏敬の念を込めて自分の名を口にするのを聞きたかった。
少なくとも、まだ決め切れていない悪党名を。
だがまずはこの悪夢を生き延びなければならない。
やがて、遠くに出口らしきものが見えた。
喜びと同じくらいの警戒心を抱きながら近づいていく。
罠が相変わらず同じままで、何も彼を妨げないことが逆に不安だった。
だが気付けば彼は迷宮から脱出していた。
目の前には巨大な水槽があり、その水は屋敷を囲む堀へ流れ込んでいるようだった。
濡れるのも嫌だったし、ロボット・ピラニアのようなものがいるかもしれないと考え、彼は別の道を選んだ。
その道は巨大なチェス盤へ続いていた。
チェス盤へ足を踏み入れた瞬間、昔見た映画を思い出した。
だが考え終わる前に、ナイトの駒が突然彼へ飛びかかってきた。
彼は反射的に転がってかわした。
今度は別のマスに立ったが、周囲の駒も一斉に動き始めた。
ジェームズはチェスができなかった。
そしてこんな方法で学ぶ気もなかった。
必死に冷静さを保ちながら、装置で駒を分析した。
短い調査の結果、駒は無線制御されており、送信機はチェス盤そのものだと分かった。
つまり盤面が人の位置を把握し、進路を予測して駒を動かしているのだ。
チェスを学ぶ気のないジェームズは、装置で無線妨害を試みた。
だがその判断をすぐ後悔した。
駒は停止するどころか暴走し始めたのだ。
盤上を猛スピードで走り回り、互いを破壊し始めたのである。
ジェームズは自分でも知らなかった俊敏さでナイトをかわし、ポーンを避け、クイーンに轢かれないよう立ち止まりながら、ついにその不吉なチェス盤から脱出した。
(3ページ終了)
ジェームズはチェスの駒たちの破壊衝動を観察しながら息を切らしていた。そして、この騒音でとっくに自分の存在が露見しているのではないかと恐れていた。しかし今さら引き返すことはできなかった。
屋敷まではあと数メートルしかない。彼には果たすべき任務があった。
そこで彼は、変わらぬ警戒心を持ちながら前へ進んだ。
それ以上のトラブルもなく、ついに屋敷へ到着した。
小型スキャナーで調べると、窓も門と同様の防護が施されていることが分かった。そこで彼は、この悪夢のような冒険を始めた時とほぼ同じ手順を少し変えて繰り返し、警備システムを迂回して誰にも気付かれずに屋敷へ侵入した。
今回の任務に杖を持ってこなかったことを、ジェームズは少し後悔した。
杖があれば窓を簡単に叩き割れたのだ。
その代わり彼は、どうにかして窓を押し開けようと苦労した。
数分後、そして指が痛くなった後、ようやく身体が通れるだけの隙間を開けることに成功した。
廊下の唯一の光源は月明かりだった。
その光は屋敷の中に不気味な影を踊らせていた。
すべてが静まり返り、人の気配はなかった。
使用人たちが夜間にはいないことは最初から知っていたが、この静寂と孤独は彼の心に寒気を残した。
ジェームズは再び、自分には任務があることを思い出し、渡されていた地図を頼りに屋敷の宝物展示室へ向かった。
彼は北棟の幽霊屋敷のような廊下を偏執的な慎重さで進んだ。
この孤独、この静けさは新しい種類の拷問のようだった。
想像力を刺激し、曲がり角の一つ一つに不注意な旅人へ襲いかかろうと待ち構える残虐なものを思い描かせた。
外の恐怖に比べれば、屋敷の内部はまるで別世界のようだった。
庭園の致命的な罠も、今では目覚めた後に消えていく夢のような遠い残響に思えた。
地図によれば一階へ続く階段が左手にあった。
彼は暗い木製の階段をゆっくりと上り始めた。
できる限り慎重に一段ずつ進んだが、それでも階段は一歩ごとにきしんだ。
金の模様で装飾された赤い絨毯が音を和らげていたが、それでも彼は自分が立てる音の一つ一つを恐れた。
自らの庭園を死の舞台へ変えてしまうような社会病質者と遭遇することを考えるだけで気分が悪かった。
一階に着くと右へ進み、巨大な木製の扉へたどり着いた。
その両開きの扉は階段と同じ木材で彫られているように見えた。
取っ手はガーゴイルの顔を模していた。
地図によれば、この扉の向こうには南棟へ直接つながる通路がある。
彼は慎重に扉を少しだけ開き、身体を滑り込ませた。
その先の通路はほとんど完全な闇に包まれていた。
わずかに扉の隙間から漏れる光だけが、様々な征服者の胸像で飾られた豪華な廊下を照らしていた。
その芸術品の数々は、彼が正しい方向へ進んでいる証拠だと聞かされていた。
チルキルがどうやってそんな情報を得たのか、彼は不思議でならなかった。
もっとも、幸せに長生きしたければ余計な質問はするなとも言われていた。
神経とは対照的に、その廊下は果てしなく続くように思えた。
だが数分後、彼はついに南棟への扉へ到達した。
前と同じように最小限だけ開き、通路へ出ると、豪華な装飾が施されたトロフィールームの扉がすぐ目に入った。
緊張の中でも、こちらの棟の壁紙が別の色であることに彼は気付いた。
先ほどの棟が力強い赤で統一されていたのに対し、こちらは上品な緑で飾られていた。
ついに目的地へ到着したことで、ジェームズの姿勢は少し緩んだ。
少なくとも部分的には、自分が状況を支配しているように感じた。
そして、そこにあった。
待ち望んでいた花瓶だ。
その花瓶は水滴の形をしており、柱のような台座の上に立っていた。
純白の表面は自ら発光しているかのようで、金色の装飾は見る者を空想へ誘った。
ジェームズはほとんど催眠術にかかったように見入っていたが、すぐに我に返り、素早く目的の品を掴んで逃げようとした。
しかしその時。
彼の最大の恐怖が現実になった。
人型の影が部屋へ入ってきたのである。
衝撃と恐怖のあまり、彼の意識は自動操縦へ切り替わった。
周囲のすべてがぼやけた。
自分が何かを必死にどもっていることは分かったが、自分自身の言葉すら聞こえなかった。
花瓶をさらに強く抱き締め、自分の身体が走り出すのを感じた。
他のすべては流れ去り、目覚めた後の夢のように消えていった。
棟の廊下は突然終わった。
だが逃走本能に支配されたジェームズにはそんなことはどうでもよかった。
まるで映画のワンシーンのように、彼は自分自身がロココ様式の窓を勢いよく突き破って飛び出すのを見ていた。
ほんの一瞬、彼は空を飛んでいるように感じた。
体重はすべてエーテルへ溶けてしまったかのようだった。
しかしすぐに地面へ向かって急降下した。
先ほどと同様、身体は勝手に反応した。
着地と同時に見事なタイミングで受け身を取った。
全身に軽い痛みが走ったが、アドレナリンがそれをすぐ背景へ押しやった。
彼は何も考えず、自動化された身体に導かれるまま不気味なほど静かな庭園を駆け抜けた。
チルキルのメンバーたちはすでに暗い路地で彼を待っていた。
その中にはリーダーのブリッツアイスまでいた。
ジェームズはまず衣装で彼だと分かった。
再会できたことが嬉しく、それを吉兆だと感じた。
一見するとブリッツアイスは普通のスキーヤーに見えた。
しかしよく見るとスキーストックには銃口と引き金が付いていた。
さらに背負っている装置も、彼がただのスポーツ愛好家ではないことを示していた。
ジェームズは挨拶しようと近付いた。
だがブリッツアイスは彼へ歩み寄るなり、貪欲に花瓶を奪い取った。
「ついに手に入れた。伝説の花瓶がこの俺の手の中に!」
彼はジェームズへ向き直った。
顔は隠れていたが、そのいやらしい笑みをジェームズは感じ取ることができた。
「正直に言おう。お前がこの殺戮屋敷を生きて出られるとは思っていなかった。だが見ろ、お前はここに立っていて、俺に欲しかった獲物を持ってきた!」
最初ジェームズは褒められたことを喜んだ。
しかしすぐに不安へ変わった。
ブリッツアイスの話し方、その言葉の強調の仕方は賞賛ではなかった。
むしろ非難のように聞こえた。
そして続く言葉は、その感覚をさらに強めた。
「ハハ、まだ信じられない。伝説の花瓶だぞ。
古代の教団から奪われ、悪名高い戦士レンゾの手に渡り、イーグルとの戦いで失われ、その後スケルトン軍団に発見され、またしても厄介な英雄イーグルに奪われ、博物館に展示され、闇市場へ流れ、そしてレンコ・ロマノフ……何とかって奴に競り落とされた。
俺の目の前で奪われたそれが、ついに俺の物になった。
しかも取るに足らない運び屋の手によってだ。
そうだな、お前はゾルン・ドルンとか名乗っていたか?
まあどうでもいい!」
「俺は機嫌がいいから特別に報酬をやろう。
お前が何のために命を懸けたのか教えてやる。
そしてお前を生かしてやる!
……今のところはな。」
状況はジェームズの望まない方向へ進んでいた。
だが、どうすれば抜け出せるのか分からなかった。
「この花瓶には水を操る力があると言われている。
その力があれば、俺の権威に逆らう街の区域を洪水で沈め、氷の荒野へ変えることができる。
さあ消えろ。
恐怖に満ちた最後の日々を生きるんだ。」
ジェームズは完全に混乱していた。
約束はどうしたのか。
誓いはどうしたのか。
彼は仲間になるために、ブリッツアイスと肩を並べて戦うために、あれほどの苦難を耐え抜いたのだ。
それなのに今では、すべてが無意味に思えた。
ブリッツアイスは彼の絶望した表情を見ると笑い出した。
それは意地の悪い笑いだった。
嘲笑と暗い感情に満ちていた。
「おいおい、本気で俺とお前が仲間になると思ったのか?
まさかそこまで世間知らずじゃないよな?
ああ、最高だ。
お前と俺が肩を並べるだって?
本気でそう思ってたのか?
悪いな、兄弟。そんな時代は終わったんだ。
さあ失せろ。
俺が許している間だけ、そのみじめな人生を楽しむんだな。」
彼は手振りで部下たちにも笑うよう合図した。
チルキルのメンバーたちは大声で嘲笑しながら去っていった。
ジェームズは打ちのめされ、心を空っぽにされたまま取り残された。
何が起こったのか理解できなかった。
無数の感情が彼を通り過ぎていった。
そして同時に何も感じられなかった。
すべてが内面の混沌となっていた。
(6ページ終了)
ジェームズが家へ入ると、家族に仕える忠実な執事――彼の唯一の真の友人――がすぐに出迎えた。
執事はジェームズをつかまえ、母親がいつものように会社で残業していることを伝えながら、若き主人を部屋へ案内した。
「ひどかったんだ。ドローン、殺人植物みたいな生け垣、殺人チェス盤、それで何のためだったと思う? 冷たく突き放されるためだよ。」
ジェームズは床を見つめながら話した。
チルキルの裏切りについて話すことで、執事を失望させてしまう気がしていた。
しかし執事から感じられたのは失望ではなく、理解と気遣いだけだった。
「申し訳ありません、若旦那様。私が失敗いたしました。あの現実離れした者たちには嫌な予感がしていたのですが、お止めすることもなく、そのような仕打ちへと送り出してしまいました。」
ジェームズは驚いて顔を上げた。
それは執事のせいではない、と急いで伝えた。
むしろ自分には一度こうして失敗する経験が必要だったのだろう。失敗こそ最良の教師なのだから。
自分自身を完全に納得させることはできなかったが、執事は若き主人の口からそんな大人びた言葉を聞けたことを喜び、さらに慰めようとした。
「あなた様は真の戦士です。お父上と同じように。
そしてお父上もきっと誇りに思われるでしょう。
そんなに落ち込まないでください。
お父上も最初は小さな存在でした。
数々の敗北と命懸けの試練を乗り越えて、やがて日本でも有数の強大な悪党になられたのです。
どうかくじけないでください。
あなた様もお父上のようにあらゆる困難を乗り越え、いつの日か完全にその足跡を辿ることになるでしょう。」
部屋へ入ると執事は寝間着を用意した。
一方ジェームズは、汗で張り付いたラテックス製の衣装をどうにか脱ごうとしていた。
寝間着の準備が終わると、執事はその「芳しい香りのする」衣装から主人を救い出すのを手伝った。
そしてそれを、どうせ洗濯する予定だった衣類の山へ放り込んだ。
さらに執事は、あらかじめ用意しておいた水差しと布を無言で指し示した。
そして背を向けることで、体を洗うよう促した。
ジェームズは夜着に着替えた後、それらを部屋の外へ置き、自分のベッドへ潜り込んだ。
執事はベッド脇へ腰掛け、ガラスケースを指差した。
その中には装飾された杖が収められていた。
その杖には木のような筋や凹凸があったが、色は上質な大理石そのものだった。
先端は四つの顔を持つ頭蓋骨で飾られていた。
頭蓋骨も同じ大理石のような質感で、各顔の眼窩には宝石が埋め込まれていた。
それぞれ青、赤、緑、オパール色である。
「この杖はお父上に忠実に仕えてまいりました。
あなた様が決して挫けることなく、目標に向かって努力し続ければ、いつの日かこの杖もまたあなた様の意志に従うことでしょう。
それまでは、あなた様の向上心の象徴としてそこにあり続けます。
ですが今は休むべきです。
それと、もし望まれるなら私の睡眠薬をお使いください。
今夜の出来事で頭がいっぱいでしょうから、眠りが入り込む余地が少ないでしょう。」
ジェームズは喜んでそれを受け取った。
執事の錬金術と神秘術は一度も彼を失望させたことがなかった。
そして彼は、この夜から一刻も早く逃れられるものなら何でも欲しかった。
リアムは駐車場で辛抱強く待っていた。
息子はまだ授業中だったが、今日は少し早く会社を出ることができた。
会社がほとんど自動的に回るほど優秀な社員たちを持てたことを彼は嬉しく思っていた。
それは、街と市民に対して果たさなければならない「義務」がある彼にとって非常に助かることだった。
駐車場は正門のすぐ前にあった。
そのため敷地へ入るとすぐに、優雅な白色をまとった壮麗な校舎が目に入る。
リアム自身もかつてこの私立学校へ通っていた。
だからこそ息子を安心して任せられた。
彼は息子が可能な限り良い環境で育つように全力を尽くしていた。
少なくとも時々は普通の生活に近いものを送れるように。
それは自分の血を分けた子供に対する義務だと感じていた。
今日はあえて目立たないSUVを選んでいた。
息子がまた恥ずかしい思いをしないようにするためだ。
学校のベルが激しく鳴り、生徒たちの波が巨大な正門から流れ出てきた。
しかしリアムは、その若者たちの流れの中にオーウェンを見つけることができなかった。
ベルが鳴ってから数分が経過し、生徒の数が減ってきた頃になって、ようやく息子の姿が見えた。
オーウェンは校舎から出てくるところで、どうやら美しい若い女性との会話を終えたところだった。
それに気付いたリアムは、息子のプライバシーを尊重するため別の方向へ目を向けた。
オーウェンが車へ乗り込むと、待たせてしまったことを父に謝った。
大事な話をしていたのだという。
さらに昨夜は体調が良くなく、父との共同任務を手伝えなかったことも謝罪した。
車が動き出す前に、リアムは微笑みながら息子を見た。
「気にするな、息子よ。
私は一人でも十分やれる。
それに昨夜は比較的静かな夜だった。
西地区では悪党たちの集まりがいくつかあったが、それ以外は本当に平穏だった。
今私が心配しているのは、レンゾがあまりにも静かだということだ。
何か大きなことを企んでいる気がしてならない。
だが今までの犯罪はあまりに無秩序で、まだパターンが掴めないんだ。」
オーウェンは気遣うように父の肩へ手を置いた。
「父さん、そんなに心配しないで。
いつか僕たちの最大の敵も失敗する日が来る。
その時になったら、ドーン!って感じで捕まえればいいんだ!」
その時、ラジオから臨時ニュースが流れた。
リアムとオーウェンは耳を傾けた。
人気司会者ソーニャ・モーニングスターが、AUTO-Süd Enterprise社の社長死亡について報じていた。
彼は自分のオフィスで射殺された状態で発見された。
さらに、Avaro GmbH & Co KG AGとの新しい契約により、AUTO-Südの大部分がAvaroへ移ることになるという。
リアムは不機嫌そうにニュースを聞きながら考えを口にした。
「アヴァロだと?
あれはレンコ・ロマノフの会社の一つじゃないか。
あの男も何だか信用ならない。
どうして私の最大の問題はみんなRで始まるんだ?」
「話題を変えよう、息子。
今夜のガラパーティーに興味はあるか?
そこで私のビジネスパートナー、Dorn Health Care(DHC)のマリア・ドルンを紹介できる。
彼女は息子のジェームズ・ドルンも連れて来るそうだ。
そうすればお前にも話し相手ができるし、一人で退屈することもない。
それとも今夜は別の予定でもあるのか?
例えば女の子とか?」
オーウェンは真っ赤になった。
冷静さを保つため全力を尽くした。
「ち、違うよ父さん!
実はまだ何の予定もないんだ。
だからぜひガラに行きたい。
それにレンコもこういう催しには必ず来るだろ?
父さんが楽しんでいる間に、僕はこっそりあいつを調べてみるよ。」
オーウェンは平静を保てたことに満足して笑みを浮かべた。
父と息子はその後ほとんど無言のまま、東端にある屋敷へ向かって車を走らせた。
(9ページ終了)
ジェームズはその顔をどこかで見たことがある気がした。
記憶が正しければ、リアムとかいう人物だったはずだ。
大富豪であり、噂では金の量と同じくらい恋愛遍歴も多いらしい。
マリアはためらうことなく彼の方へ歩いていった。
身分の差はあったものの、二人は親しげに言葉を交わした。
「まあ、リアムさん。ここでお会いできるなんて嬉しいですわ。」
「おお、親愛なるあなた。私もまたお会いできて嬉しいですよ。では、あちらの部屋で続きを話しませんか。」
ジェームズは顔を背けた。
上流階級の人間たちの人間関係など興味がなかった。
それに彼には果たすべき任務があった。
しかし何かを計画する前に、大広間の空気が突然変わった。
誰かが到着したのだ。
白いコート、そして同じく白く輝くマント。
そのマントはまるで亡霊のように持ち主の周囲を漂っていた。
そして全身の白とは対照的に、手入れの行き届いた金髪の上には漆黒のシルクハットが載っていた。
人々は息をすることすらためらい、自動的に道を開けた。
その人物が近づくにつれ、ジェームズはさらに細かな特徴を見て取った。
左目のモノクル。
白い革手袋。
そしてダイヤモンドで装飾された、王笏のような杖。
疑う余地なく、それはレンコだった。
この街で最も裕福な人物である。
彼と関わる者は、成功するか、あるいは破滅するかのどちらかだった。
そして今、その男はまっすぐ……ジェームズの方へ向かっていた。
ジェームズは恐慌状態になった。
もし昨夜の自分だと気付かれたらどうしよう。
あの衣装では正体を隠しきれていなかったのではないか。
神様。
そういえばパニックの中で何かを彼に言った気がする。
だが何を言ったのか思い出せなかった。
記憶が協力してくれなかった。
マリアもまた、自分の息子が超富豪の目標になっていることに気付き、慌てて駆け寄った。
息子がきちんと礼儀正しく振る舞うよう確認するためだった。
脅威的な人物はついにジェームズの目の前まで来た。
しかし何も言わず、そのまま通り過ぎていった。
戸惑いながらもマリアはその人物にお辞儀をした。
だがレンコはそれすら目に入っていないようだった。
彼は一直線にリアムの方へ向かっていた。
マリアはジェームズの肩を軽く叩いた。
それは彼女なりの「誇りに思っている」という意思表示だった。
ジェームズはなんとか血圧を正常に戻そうとした。
本当に白髪が数本増えた気がした。
レンコとリアムが向かい合うと、その緊張感は目に見えるようだった。
二人の間には明らかなライバル意識が漂っていた。
「ここでお会いできて嬉しいですよ、レンコ殿。
今夜も貧しい人々を助けるために寄付をなさるのでしょう?
それこそ富める者の義務ですからね。」
レンコは皮肉な笑みを浮かべた。
「親愛なるリアム殿。
反論したくはありませんが、どうやら私たちは完全には同じ意見ではないようです。
人は見られるために寄付をする。
そして本当に力を持つ者は決してそれを手放さない。
世界そのものが自分のものになるまで、さらに力を集め続けるのです。
ですが冗談はさておき、私はあなたの考え方を尊敬しています。
それはまさに私の思想の正反対です。
だからこそ、より裕福になれるのは私たちのうち一人だけなのでしょうな。
はは。」
そう言うとレンコは立ち去った。
その後ろ姿を見ながらジェームズは気付いた。
リアムの近くにいた少年――おそらく彼の息子――が父親から離れて単独行動を始めたのだ。
それは良い考えだと思い、ジェームズも同じように行動した。
彼は近くのトイレへ急いだ。
母親はまだ衝撃から立ち直れておらず、ジェームズが離れていくことにすら気付かなかった。
ジェームズはトイレの個室へ入り、誰にも邪魔されずに衣装へ着替え始めた。
今回も杖を持って来られなかったことを少し残念に思った。
だが、長さ一・八メートルもあり派手な装飾が付いた杖を目立たず持ち込むのは難しかっただろう。
しかし今、彼には二つの問題があった。
一つ目は個室の広さを見誤ったこと。
二つ目はラテックスの抵抗力を甘く見ていたことだった。
衣装を無理やり着ようとするたび、彼は大声でうめき、唸り声を上げた。
その声があまりに大きかったため、他の男性客たちは自主的に別の階のトイレへ移動してしまった。
それでも長く苦しい戦いの末、ようやく衣装を着ることに成功した。
そして細心の注意を払ってトイレを出た。
オレンジ色の眼鏡と魔法使いの帽子に隠れた髪のおかげで、誰にも正体は分からないはずだと信じていた。
しかし突然、彼は恐怖で立ち止まった。
もしレンコにまた気付かれたらどうしよう。
だが考え直した。
自分は悪党であり、レンコはただの金持ちだ。
こういう連中は驚けばパニックで倒れることしかできない。
そう自分に言い聞かせながら、贈り物が並ぶテーブルへ向かった。
派手な格好だったにもかかわらず、会場内を移動するのはそれほど難しくなかった。
むしろ、ここにいる金持ちたちの方がもっと奇妙な服を着ているように見えた。
だから誰も彼に興味を示さなかったのである。
やがてテーブルへ到着した。
彼は何を盗むべきか慎重に考えた。
計画では、一番高価な品を奪い、テーブルの上へ飛び乗り、自分の悪党名を叫ぶ。
(まだ「ゾルン・ドルン」で良いのか確信は持てていなかったが。)
その後、自分こそ次代の大悪党だと宣言し、非常階段から逃走し、執事が待機させているリムジンへ乗り込むはずだった。
しかし、その計画は始まる前に終わった。
突然、ガラ会場の正面扉が爆破されたのである。
囚人のような格好をした集団がなだれ込んできた。
会場は混乱に包まれた。
金持ちたちは首を失った鶏のように走り回った。
その混乱の中で、リアムは人混みへ消えたようだった。
一方レンコは、ギャングのボスが姿を現すと皮肉な笑みを浮かべていた。
突然、会場のガラス天井が砕け散った。
二つの人影が滑空しながら降下してきた。
イーグルと、その相棒ホークだった。
この街の英雄であり、悪党たちにとっては忌々しい天敵である。
「おやおや、僕たち抜きでパーティーを始めちゃったの?
なんて意地悪なんだ!」
ホークが皮肉たっぷりに叫んだ。
完全に混乱したジェームズは、贈り物のテーブルの下へ隠れた。
イーグルとホークは着地するとすぐに行動を開始した。
イーグルは羽根のような投擲物を悪党たちへ投げた。
それらは正確に手へ命中した。
苦痛に顔を歪めた悪党たちは銃を落とした。
そしてその隙にホークが飛び込み、鋭い蹴りと拳で彼らを夢の世界へ送り込んだ。
第二陣の悪党たちは柱の陰へ隠れた。
身を乗り出して英雄たちへ発砲する。
姿を見せる時間はわずか数秒だった。
だがそれで十分だった。
ホークは羽根を投げながら曲芸師のように会場を駆け回った。
悪党たちは彼に気を取られた。
その間にイーグルが忍び寄る。
彼らが反応する前に、胸部へ、そして顔面へ素早い打撃を浴びせた。
悪党たちは次々と意識を失って倒れていった。
ギャングのボスらしき男は派手に逃げ出そうとした。
しかしイーグルはそれに気付き、一直線に飛びかかった。
残りの雑魚はホークへ任せた。
彼は右脚から重り付きのロープを取り出し、正確に投げつけた。
ロープは命中し、硬化して男の脚へ絡みついた。
悪党は転倒した。
そしてホークの茶色いブーツが最後の一撃を与えた。
イーグルは会場中央に金色の檻があることに気付いた。
近付いてみると、そこにはプレートが取り付けられていた。
「偉大なる英雄イーグルへ。
その功績への感謝を込めた象徴的な贈り物。」
イーグルは笑った。
「じゃあ、このプレゼントをさっそく使わせてもらおうかな。」
そう言うと彼は捕らえた悪党たちを次々と檻へ放り込み、警察への贈り物としてまとめ上げた。
その頃には警察も到着していた。
オーグストゥス警部は英雄たちのもとへ駆け寄り、迅速な助力へ感謝した。
そしてここから先は警察が完全に対処できると伝えた。
金持ちたちは英雄へ感謝しようと押し寄せた。
しかし二人は自分たちの仕事は終わったと判断した。
煙幕弾を投げると、立ち込める煙の中へ消えていった。
ジェームズはかなり長い間、テーブルの下で待ち続けた。
ようやく這い出た時、彼は自分が将来対峙することになるライバルたちをこの目で見たのだと実感した。
そして同時に、自分がまた一つ敗北を重ねたことにも気付いた。
落胆し、意気消沈しながら彼は考えた。
本当に自分は悪党になれるのだろうか。
疑念に苛まれながら、彼は再びトイレへ向かった。
元の服へ着替えるために。
そして気付かなかった。
モノクルの奥に隠れた一つの目が、最初から最後まで彼を注意深く観察していたことを。




