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瘴気の沙汰も浄化次第  作者: 石動なつめ
第五章 落ちこぼれ

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瘴気結晶とでも名付けましょうか


 それから少しして救助隊がやって来てくれました。

 彼らにリーフさんとパメラさんをお願いした後、私は――実はまだ穴の中にいました。


「ミモザ様も上に……」


 救助に来てくれた方はそう言ってくれたのですが、


「いえいえ、私はまだやる事があります」


 そうお断りして歩き出します。

 向かう先は瘴気が噴出している場所――つまり発生地点ですね。


 パメラさんの魔術具で起きた爆発により瘴気はこの状態となっておりますが、以前に読んだ他国の瘴気関連の資料で、これと似たような事故の記載があった事を思い出したんですよ。


 その国では事故が起きた際に、噴出した瘴気がどうなるか――もしかしたら瘴気を出し切ったら(・・・・・・)止まるのではないかと期待して、観察を続けたそうです。

 しかし瘴気は止まる事はなく、噴き出す勢いが強いため通常よりも早く瘴気が広がり被害も拡大してしまった、と記載がありました。


 ――というわけでですね!


 それと同じ事がヴェルデ領で起きたら困るのです。

 特にこの発生地点は街に近いですから、瘴気が広がって街まで辿り着いてしまっては非常にまずい。


 それに、だんだん強くなっている雨で穴がある程度塞がれてしまうと、複雑化したこの瘴気を浄化するのに時間がかかってしまう。

 色んな意味で時間を置くと危険なのです。


 なので、今やってしまうのがベストと判断しました。

 雨風はまぁまぁ強くなってきましたが、せめて噴出だけは止められるようにギリギリまで粘りましょう。


 そんな事を考えながら瘴気が濃くなっている方へ真っ直ぐに進みます。

 ヴェルデ領で見た瘴気の中で、ここが一番、濃度が高いですね。


 中心部に近付くにつれて視界が悪く、さらには薄暗くなっていく。

 浄化をしても直ぐに元に戻ってしまうくらいには、瘴気の勢いが強いです。


「……?」


 すると、ふと、その薄暗い中にキラリと何かの光が見えました。

 まるで――そう、太陽や照明に照らされた宝石のようなキラキラした光です。

 これまでに何度も瘴気の浄化はしてきましたが、そんな光を見た事なんて一度もありませんでした。


 その光は私の進行方向――恐らく瘴気の発生地点にあるように思えます。

 あまりにも場違いなくらいの綺麗な光。

 私はまるで走光性の虫のように、その光に吸い寄せられて行きます。


 ……でも、何となくこれ、見た事がある気がしますね?

 あれはどこでだったでしょうか。

 歩きながら、私は自分の記憶の引き出しを開けて探します。


 そうしていると、その()の正体を視認出来る場所まで辿り着きました。

 同時に、それ(・・)を見た時に私は既視感の正体に気付きます。


「精霊結晶……」


 思わずぽつりと呟きました。

 そう――そこに浮かんでいたのは、星の源泉にあった精霊結晶と、とても良く似た水晶でした。瘴気はそこから噴き出しています。


「どうして精霊結晶から瘴気が……」


 指に纏わせた浄化の力を、そっと近付けてみます。

 すると、それ(・・)が放つ光のキラキラが減りました。

 浄化の力に反応しているようですね。

 そうであるならば、瘴気が噴き出している事も含めて、この精霊結晶のようなものは瘴気の塊と考えて良いのかもしれません。


 瘴気がこんな塊を持つなんて、今まで読んだ資料にはありませんでした。

 もしかして瘴気は高濃度になると結晶化するのでしょうか?

 そんな事を考え始めた時、私の頭上で、ピシャン、と落雷の音が響きます。

 おかげで、はっと我に返る事が出来ました。


 そうですとも、そんな事を考えている時間はないのでした!


 この精霊結晶のようなもの――長いですね、瘴気結晶とでも呼びましょう。

 瘴気結晶をもう少し調べてみたい気持ちもありますが、今は浄化が最優先です。

 今の様子を見る限り、瘴気結晶自体を浄化すれば噴出は治まると思います。


 そう考えた私は瘴気結晶へ浄化の力を向けます。

 どこかに力を注ぐ()はないでしょうかね。


 目を凝らして観察すると……ありました。ちょうど、瘴気が噴出している箇所です。結晶全体からではなく一部から噴き出しているようです。

 そこから浄化の力を注げば、何とかなるかもしれません。


 外へ出ようとする瘴気の勢いが強く、なかなか上手くは注げませんが、それでも少しずつ。

 針の穴に糸を通すように、丁寧に慎重に瘴気結晶に浄化の力を注いで行きます。


「――――っ」


 その分、自分の身体に纏わりつく瘴気の浄化が疎かになってしまい、幾分吸ってしまいました。風邪を引いた時のように喉がヒリヒリします。

 けほ、と軽い咳が出ました。あまり長居は出来なさそうです。


 とは言え焦ったところで浄化は上手くは行きません。

 慎重に、丁寧に、私は瘴気の穴――というよりもう噴出口ですね。そこへ浄化の力を注いできます。


 大丈夫。大丈夫ですよ、私。

 浄化の力の弱い私が磨いたのはこういう技術。

 焦らなければ、内側にさえ浄化の力を注げば、落ちこぼれなんて言われた私だって、家族と同じようにどんな瘴気でも浄化する事が出来る。


 そうやって、時間をかけて慎重に浄化を進め――やがて瘴気結晶中に浄化の力が満ちます。

 すると、パァン、瘴気結晶が弾けました。

 同時にキラキラと輝く星のような光の粒子が外へ飛び出します。

 浄化の力です。その光は噴出している瘴気を辿り、消滅させていきます。


「おお……」


 今まで見た事のない光景に私が驚いていると、その光の一部が私の耳を掠めました。

 すると。


『アリガトウ』


 微かに、そんな声が聞こえました。

 ――お礼の言葉?


「えっ?」


 思わず声の方へ顔を向けます。

 一瞬だけ、瘴気が人の形に集まっていたように見えました。


「…………」


 そう言えば瘴気って、精霊との戦いに負けて姿形を失ったって話がありましたね。

 ……いえ、でも、まさかなぁ。

 そんな事を思っていたら、ガクン、と膝の力が抜けました。


「あら?」


 ああ、これは……オーバーワークですね。浄化の力を使い過ぎた反動です。

 瘴気を吸ったのもそれに拍車をかけているのかも。目までぼやけてきました。

 

 ま、でも……瘴気の発生地点は何とか浄化が出来ましたし。

 残った瘴気は後で対処可能ですので、一応はオッケーという事で。


 そんな事を考えながら私は、そのまま意識を失ってしまったのでした。


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