57話 《詠唱破棄》
書籍化&コミカライズ決定しました
1巻が明日、11月2日に発売します
書籍限定の書き下ろし短編があるので、気になる方は是非チェックしてみてください
「スレイ、いやスレイ様! あのモンスター共なんとかしてくれませんかね!」
「スレイさん! 助けてください! お願いします!」
俺とソニアはスレイの後ろにササッと移動する。
「アハハ、いいよ。せっかくだから詠唱破棄も見せてあげるよ」
スレイは高らかに笑いながら大きな杖をかざした。
「ロア──これが一流の魔法使いだよ」
詠唱もないのにスレイの足元には魔法陣が展開された。
杖の先に埋め込まれている赤色の宝石が眩い輝きを放ちだした。
……スレイからとてつもない魔力を感じる。
「──燃え尽きろ」
そう言い放つと同時に、階段の先が炎で埋め尽くされた。
「「「「グガアアアアアアァァァァッ!」」」」
モンスター達は黒焦げになり、階段には魔石だけがカピカと光って見えていた。
「火属性の魔法ダメージが半減されるが、それでも一撃で仕留めたか。やばいな」
「Cランクぐらいなら魔法の相性なんて関係ないよ。僕ぐらいになるとゴリ押しでいけるのさ」
「それに詠唱もしていなかったな。あれが詠唱破棄か?」
「その通り。詠唱を破棄さえすれば瞬時に魔法が使えて便利だろう?」
「そうだな」
「まあ取得には才能がいるよ。ロアにも才能があるといいね。ハハハ」
才能……か。
実は俺、《詠唱破棄》を取得しようと思えばできるんだよな。
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《詠唱破棄》
消費MP:使用する魔法の消費MPが2倍になる。
効果:念じることで使用する魔法の詠唱を破棄することができる。
属性:無
詠唱時間:0秒
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《詠唱破棄》はレベルを1000消費すれば取得することができる。
しかし、これって魔法だったんだな。
「スレイさん、助けていただきありがとうございます」
「ありがとな」
俺もソニアに続いて礼を述べる。
「礼には及ばないよ。僕は自分の仕事をまっとうしただけさ。よし、この調子で6階層のモンスター全部倒しちゃうね」
そう言って、スレイは階段を降りていく。
「凄いな……こんな魔法あるんだな」
「……ええ。圧倒的ですね」
ソニアもスレイの魔法に驚きを隠せていない様子だった。
スレイはどうやって6階層のモンスターを倒すんだろうか。
俺はスレイの実力を間近で見たくなり、後を追った。
階段を降りるスレイに追い付く。
「スレイ、戦ってるところを見ていてもいいか?」
「良いけど、ロア達の分のモンスターを残しておくとかは出来ないから、そこは勘弁してね」
「もちろんだ。それで構わない」
「あはは、ありがとう」
スレイは6階層に到着すると、上空に浮かんだ。
「飛ぶことも出来るのか?」
「そうだよ。上から攻撃した方が漏れなく倒せるから」
「風魔法を応用しているんですかね? 私はそこまで詳しくないのでなんとも言えないのですが……」
「飛び方にも色々あるね。飛ぶことを目的とした魔法を使うとか。ソニアの言っているように風魔法を応用したりとか。僕の場合は重力魔法を応用しているんだけどね」
「なるほど……」
「魔法って思っていた以上に色々な使い方が出来るんだな」
「ああ。固定観念に捉われないことが大切だね」
そう言っている間にもスレイはどんどん浮かび上がっていく。
アルムントのダンジョンは天井が高い。
地面から天井まで30mほどの距離がある。
スレイは25m付近まで浮かび上がって、静止した。
そして、杖を頭上に掲げる。
「グオオオッ!」
「ガアアッ!」
魔物達が上空に浮かぶスレイに気付いて、威嚇している。
「魔物の数はだいぶ減ったみたいだね。それならこれで十分か──《流星雨》」
スレイが詠唱をすると、上空から炎に包まれた巨大な岩石が雨のように降り注いだ。
地面に直撃し、爆発が起きる。
その衝撃が肌に伝わってくる。
ダメージはどれだけ与えられてるのだろうか。
《流星雨》は見るからに火属性の魔法。
ここにいる900レベルの魔物相手にはダメージが半減されるのだが、それでも一撃。
基本ダメージは10万を優に超えているだろう。
「すげえ……こんな魔法があるのか……!」
これだけ広範囲に大きな影響を与える魔法の存在を知ると、自分でも使ってみたくなる。
「ロアさんならきっと使えるようになりますよ」
隣でソニアが微笑んだ。
「すぐに使えるようになってやるさ」
俺は強くなる覚悟をより固めた。
スーッとスレイは降下してきて、ゆっくりと着地した。
「いやぁ待ったかな?」
「待ってない」「待ってないです」
俺とソニアの発言がハモった。
「あはは、だよね! 魔法を1~2回使っただけだもんね」
「機嫌が良さそうだな」
「仕事が終わったからね。やっと解放されるって感じだよ」
「なるほど、それは嬉しくもなるな」
「でしょ?」
ニコニコとした笑みをスレイは浮かべている。
「さて、掃除も済んだし僕は帰らせてもらうことにするよ」
「あれ。倒した魔物の素材を取ったりはしないんですか?」
「あれだけの数を剥ぎ取るのはめんどうだからね。欲しかったら君達が剥ぎ取ってもいいよ」
「いや、遠慮しておく」
俺がそう断言すると、スレイは少し驚いた表情を見せた。
俺は言葉を続ける。
「俺達も素材を剥ぎ取ってる暇があったらここのボスを倒しに行く」
「……ふふ、良い表情だ。きっとロアは強くなるよ。そしたらまた僕と会えるかもね」
「ああ。最速で強くなってやるさ」
「スレイさん、ロアさんが失礼な物言いですみません……!」
ソニアが頭を下げて、謝っていた。
「あはは、気にしてないから安心して。君達が強くなることを楽しみにしているよ。それじゃあまた会おう」
スレイはそう言って、転移石を使用した。




