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52話 マーシャの才能

 今日も今日とてアルムントのCランクダンジョンに向かう。

 俺とソニアの後ろにはマーシャも一緒だ。

 ニコニコとした笑顔で付いてきている。

 俺たちが倒した素材を勝手に拾うとのこと。

 ……あんまり邪魔にならなければいいんだけどなぁ。

 少しぐらいは面倒を見てやるが、あんまり図々しいなら付いてくることをしっかり断らなければならないだろう。


 早速、1階層で『ヒートボア』が出現した。


「ロアさんっ! 今ですっ!」


「ああ──《水刃放射》」


 ヒートボアの攻撃をソニアが難なく受け止めて、隙が出来たところにいつも通り俺が魔法を放つ。

 ヒートボアはもちろん一撃で倒した。


「いやあ、ほんとロアさん達はすごいっす! こんな芸当ができる冒険者は他に見たことがないっす!」


 戦闘を終えると、マーシャが目を輝かせてこちらを見ていた。

 心なしか目がお金マークになっているように感じる。


「褒めてくれるのは嬉しいが、早く欲しい素材を剥ぎとれよ?」

「は、はいっす!」

「そう言って待ってあげるのはロアさんなりの優しさですね」


 ふふっ、と微笑んでソニアは言った。


「ロアさん……ありがとうっす!」

「そんなこと言ってる暇があったら手を動かせ! それからマーシャ、お前の喋り方は商人らしくない! なんか田舎者っぽくてあんまり商品を買おうって気にならない!」

「が、がーん! ひどいっす!」

「ちがう! そこはひどいです、だ!」

「ひ、ひどいです!」

「よし、それでいい」


 俺は腕を組んで、ウンウンと頷いた。


「マーシャさん、あれは多分ロアさんの照れ隠しですよ……それに喋り方に関しては私もロアさんの言っていることは間違ってないような気がします……」

「そんなぁ〜! 私のチャームポイントが消えちゃうっす──じゃ、じゃなくて……! 消えちゃうじゃないですかぁ〜!」


 マーシャの叫び声がダンジョン内に響き渡った。

 その後、複数のモンスターに気付かれたのは言うまでもない。



 ◇



 マーシャがついてくるようになってから三日経った。


「ロアさん、ソニアさん、本当にありがとうございました! お二人のおかげでまた商人としてやっていけるだけの資金が集まりました!」


 ペコリ、と頭を下げてマーシャはお礼を言った。


「マーシャが商人として成功したらなにか俺たちに恩返ししろよな」

「ロアさん、意地汚いこと言わずにここはマーシャさんを快く見送ってあげましょうよ」

「マーシャは商人だぜ? 借りた恩はしっかり返すさ。俺はそれを見越して、あらかじめ言っているんだ」

「それ言う意味あります……?」


 ……痛いところをつっこまれてしまった。

 意地汚いと言われて咄嗟についた嘘は見事に撃沈した。


「ふっふっふ、いつか成功して100倍にして返しますとも!」


 マーシャの口調はこの3日でかなり矯正された。

 他人事で悪いのだが、人って3日もあれば変われるんだなと思った。


 ちなみにマーシャが剥ぎ取った素材は全てマーシャのものだ。

 勝手についてきてるのだから当たり前だろう。

 それを売って、ある程度の額を稼げたのか、マーシャは再び商人として活動していくようだ。


 この3日間、マーシャがいても邪魔になることはなく、以前とあまり変わらずに魔物を倒していた。

 マーシャが倒した魔物の素材を剥ぎ取る速度はなかなかのものだった。

 マーシャは今まで見たこともない表情で集中して素材を剥ぎ取っていたおかげであまり待たないで済んだ。

 さすがに少しは待ったが、ほぼ休憩みたいなものだ。


 マーシャの剥ぎ取りが速いのには理由があった。

 マーシャは素材全てを剥ぎ取ることはしなかった。

 魔物の損傷具合を観察して、価値の高いものだけを選んでいたのだ。

 俺はその光景を見て感心した。


 まず、時間対効果が高いということ。

 ダンジョンに挑む時間は限られている。

 商人ならば、その時間の中で効率よくお金を稼ぎたいと思うだろう。

 だから剥ぎ取る部位を選ぶことが大切なのだ。

 一番高く売れる部位を瞬時に見極め、そこだけを取得する。

 そうすることによって、魔物を倒す時間が増え、結果的に倒した魔物の数も増える。

 俺が魔石だけを取っていたのも同じようなメリットがあるだろう。

 俺の場合は経験値を稼ぐことしか考えていなかったけども。

 まあ、この方針は魔物を倒す時間によって魔物の素材全てを剥ぎ取った方が稼げることもあるだろうし、ケースバイケースなのは間違いない。


 そして、もう一つ驚くことが瞬時に品質の高い部位を見極めるマーシャの審美眼だ。

 物の価値を見極める目を持っているのは、商人として大きな武器だと素人ながらに思う。

 マーシャは商人を初めてまだ間もないらしいため、経験を十分に積めていなかったのだろう。

 今回、商人として活動出来なくなるような失敗をして学ぶものは多かったかもしれない。

 今後の商人としての活躍に俺はひそかに期待している。


「ふぅ、よいしょっと」


 マーシャは馬車に荷物を詰め込んだ。

 そして、手綱を握り、馬車を出発させた。


「お二人ともお元気で〜! またどこかで会いましょう〜!」

「マーシャさんもお元気で! さようなら〜!」

「じゃあな、今度は普通に再会できることを期待してるぜ」

「あははっ! そうですね!」


 マーシャと出会った2回とも魔物に襲われていたからな……。

 なんと奇妙な縁だろうか。


「さて、俺たちも頑張ってダンジョン攻略といこうか」

「そうですね、もう少しで目的の魔法も取得できますもんね」

「あれさえあれば、ここのボスも楽勝だろうからな」


 まあエクストラボスの出現条件だけは満たさないようにしておきたい。

 また、あんな化物とは戦いたくないからな。


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 ロア・フォイル 19歳 男 

 称号:[キャプテン]

 レベル:490

 HP:2987/2987 MP:3930/3930

 攻撃力:1180

 防御力:760

 ユニークスキル:【アイテム作成】【魔法創造】

 魔法:《生活魔法》《火槍》《アイテムボックス(極小)》《豪火球》《投雷》《稲妻雷轟》《紫電一閃》《身体強化》《水刃放射》《泡沫水鞠》


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