もし、それが真実ならボクは……
「ボク」は、あの夜、ミュージックバー『ビジュー』で「彼女」と出会った。
出会ったばかりだというのに、彼女はボクの左手を強く引きステージに上がる。着崩した白いシャツと細い黒ネクタイで揃いのジャズメンたちがたむろするその場所で、彼女は観る者の魂を揺さぶる踊りを披露し客の大歓声を浴びる。だが、その歓声にはにかんで応えるだけの彼女は、ステージの袖で見ていたボクに駆け寄り、首に手を回して抱きつくのだった。
意外な展開に驚くボク。結局彼女と連れ立って店を出たボクたちふたりはその日から一緒に暮らし始める。
翌朝、彼女は苗字一文字をもじってボクを『ペキちゃん』と呼び始める。だが、ボクは彼女の名前さえ知らない。なのに、彼女の天真爛漫な振る舞いはボクの心を捕え、徐々に彼女に魅了されてしまう。
他方、彼女と一緒にいるとボクは過去の記憶にもなぜか囚われるようになる。長いひとり暮らしの後にやってきた彼女がボクに人恋しさを教えたのか、それとも、彼女自身に過去の記憶に連なる何か特別な印象があるのかはわからないが、ボクはしばしば過去に連れ去られる。幼かった頃の自分と家族との思い出が断片的に蘇るのだ。
ある日、彼女がボクを連れ出したのは「蓼科」。そこは幼い頃、家族旅行した思い出の場所で、高速道をドライブした日のことや、妹の身の上に起こった危険な出来事などが繰り返し蘇る。すっかり忘れていたそれらのことを思い出すこと自体がボクには不思議だった。
そして辿り着いた古いログハウス。そこは彼女の祖母の持ち物だったが、玄関に足を踏み入れた瞬間、古臭くも懐かしい香りがボクを捕える……
魅惑的だが名前も知らないブラウンの瞳の彼女が、ボクの失われた記憶を呼び覚ます物語。
出会ったばかりだというのに、彼女はボクの左手を強く引きステージに上がる。着崩した白いシャツと細い黒ネクタイで揃いのジャズメンたちがたむろするその場所で、彼女は観る者の魂を揺さぶる踊りを披露し客の大歓声を浴びる。だが、その歓声にはにかんで応えるだけの彼女は、ステージの袖で見ていたボクに駆け寄り、首に手を回して抱きつくのだった。
意外な展開に驚くボク。結局彼女と連れ立って店を出たボクたちふたりはその日から一緒に暮らし始める。
翌朝、彼女は苗字一文字をもじってボクを『ペキちゃん』と呼び始める。だが、ボクは彼女の名前さえ知らない。なのに、彼女の天真爛漫な振る舞いはボクの心を捕え、徐々に彼女に魅了されてしまう。
他方、彼女と一緒にいるとボクは過去の記憶にもなぜか囚われるようになる。長いひとり暮らしの後にやってきた彼女がボクに人恋しさを教えたのか、それとも、彼女自身に過去の記憶に連なる何か特別な印象があるのかはわからないが、ボクはしばしば過去に連れ去られる。幼かった頃の自分と家族との思い出が断片的に蘇るのだ。
ある日、彼女がボクを連れ出したのは「蓼科」。そこは幼い頃、家族旅行した思い出の場所で、高速道をドライブした日のことや、妹の身の上に起こった危険な出来事などが繰り返し蘇る。すっかり忘れていたそれらのことを思い出すこと自体がボクには不思議だった。
そして辿り着いた古いログハウス。そこは彼女の祖母の持ち物だったが、玄関に足を踏み入れた瞬間、古臭くも懐かしい香りがボクを捕える……
魅惑的だが名前も知らないブラウンの瞳の彼女が、ボクの失われた記憶を呼び覚ます物語。
彼女はボクの左手を強く引いてステージに向かった
2018/08/01 18:00
彼女はボクを『ペキちゃん』と呼んだ
2018/08/02 18:00
彼女は流れる夜景を眺めながらポツリと呟いた
2018/08/03 18:00
彼女は赤い鉢巻と襷をキリリと締めた
2018/08/04 18:00
彼女はいきなりラディッシュをボクの口に放り込んだ
2018/08/05 18:00
彼女の名前をボクは知らない。だから、なに?
2018/08/06 18:00
彼女がまた突拍子もないことを言い出した
2018/08/07 18:00
彼女はいつの間にか後ろにいて膝カックンした
2018/08/08 18:00
彼女が助手席で眠ってしまったのでボクは……
2018/08/09 18:00
彼女はその問いかけには無言だった
2018/08/10 18:00
彼女はボクの前では眠らないと言った
2018/08/11 18:00
彼女はボクの記憶をただすために来たと言った
2018/08/12 18:00
彼女はコーヒーを淹れてよと三度催促した
2018/08/13 18:00
彼女は庭に面した掃き出し窓を全開にしてデッサンを始めた
2018/08/14 18:00
彼女の横顔は端正でとても美しい。無駄も緩みもない。
2018/08/15 18:00
彼女は…… なっ、なんて我儘なんだっ!
2018/08/16 18:00
(改)
彼女なら、筒井リーダーの話をどう感じるのかな?
2018/08/17 18:00
彼女は、ペキちゃんらしくて、私は好きだよと言った
2018/08/18 18:00
彼女は二段ベッドなら下に寝る派のようだ
2018/08/19 18:00
(改)
彼女は小学三年の男子をやや引き攣った笑顔で迎えた
2018/08/20 18:00
彼女は意外に意地悪だ
2018/08/21 18:00
彼女はボクの甥っ子をギュッとハグしたりしている
2018/08/22 18:00
彼女は雷が怖いらしい
2018/08/23 18:00
彼女は幼い頃、おばあちゃんにそっちは絶対に行っちゃだめだ、って叱られたことがあるらしい
2018/08/24 18:00
彼女によると、女の子は遊んでくれるお兄ちゃんが好きらしい
2018/08/25 18:00
彼女はちょっと心配そうにボクを見た
2018/08/26 18:00
彼女はガバっと起き上がり、そして大声で叫んだ!
2018/08/27 18:00
彼女はボクの甥っ子の肩を抱いて訊ねた
2018/08/28 18:00
彼女なのか?…… あれは
2018/08/29 18:00
彼女はボクの目をじっと見つめ、その話を聞いていた
2018/08/30 18:00
終章
2018/08/31 18:00