魔法鍛錬
第38話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回から、いよいよアルの本格的な魔法鍛錬が始まります。
フェンリルから教えられた「魔法とは願う力」という言葉。
そして、エルシアとの鍛錬を通して、アルがどのように魔法と向き合っていくのか。
これまでとは少し違う形で、アルの魔法が変わり始めます。
ぜひ、アルの新たな成長を見守っていただければ嬉しいです。
翌朝――。
東の空が白み始めた頃。
アルは自然と目を覚ました。
窓の外からは小鳥のさえずりが聞こえてくる。
冷たい朝の空気を胸いっぱいに吸い込み、軽く身体を伸ばした。
「よし」
短く気合を入れる。
今日から始まる、新たな鍛錬。
胸の高鳴りを抑えられなかった。
手早く身支度を整え、腰にはドルガンから託された刀を差す。
扉を開けると、ちょうど廊下へ出てきたガレスと目が合った。
「おはよう。ガレス」
「おう。もう起きていたか」
「うん」
アルは笑顔で頷く。
「なんだか眠れなくて」
ガレスは小さく笑った。
「子どもの祭りの前夜みたいだな」
「はは……」
図星を突かれたアルは少し照れ臭そうに頭を掻く。
その様子を見てガレスは穏やかに笑みを浮かべた。
「それくらい楽しみにしている方がいい」
「何事も学ぶ時は、その気持ちが一番伸びる」
アルは素直に頷いた。
「うん」
そこへイザベラとフィオナ、ドノヴァン、レオンも姿を現す。
「おはよう。アル」
「おはよう。みんな」
六人は揃って食堂へ向かい、簡単な朝食を済ませた。
焼きたてのパン。
香草の入った温かなスープ。
新鮮な果実。
どれも素朴だったが、朝の身体には心地よかった。
食事を終えると、ガレスが立ち上がる。
「さて」
「俺たちは昨日話した通り、里の様子を見て回る」
「斥候から情報が入るまでは自由行動だ」
ガレスは改めてアルへ向き直った。
「アル」
「うん」
「フェンリル様やエルシア殿から学べることは、一つ残らず吸収してこい」
「遠慮はするな」
「お前を認めてくださったからこそ、この機会をくださったんだ」
アルは力強く頷く。
「わかった」
「頑張ってくる!」
その返事を聞き、ガレスは満足そうに笑った。
「よし」
「行ってこい」
アルは宿舎を出る。
朝日を浴びた獣人族の里は、昨日とはまた違う活気に満ちていた。
店を開く者。
鍛冶場から聞こえる槌の音。
朝の訓練へ向かう若い獣人たち。
その中を歩きながら、アルは自然と歩幅が速くなる。
向かう先は、昨日フェンリルとエルシアに案内された訓練場。
今日から、いよいよ本格的な魔法鍛錬が始まる。
フェンリルが語った「願う力」。
エルシアが見せてくれる魔法。
そして、自分がまだ知らない魔法の世界。
そのすべてが待っている。
アルは期待を胸に、朝日に照らされた訓練場への道を真っ直ぐ歩いていった。
訓練場へ近づくにつれ、アルの歩みはさらに速くなっていった。
やがて、木々の向こうに昨日見た広い訓練場が見えてくる。
その中央には、すでに二つの人影があった。
白銀の髪。
紺碧の瞳。
そして、同じ白銀の狼耳。
「おはよう。アル」
「よく来たな」
フェンリルがこちらへ気づき、柔らかく笑った。
「おはようございます」
アルも笑顔で返す。
その隣にはエルシアが静かに立っていた。
「おはようございます」
アルは一瞬言葉に詰まる。
「おはよう、エルシア」
言い直すと、エルシアは満足そうに頷いた。
「おはよう。アル」
エルシアがくすりと笑う。
「昨日より少し自然になったね」
「そうかな」
「うん」
「では始めようか。二人とも」
フェンリルは優しい眼差しを向けて言った。
「はい」
「よろしくお願いします」
アルは一礼をして訓練場へ足を踏み入れる。
朝の冷たい空気が肌を撫でる。
いよいよここからアルの魔法鍛錬が始まる。
アルの胸は高揚感に満ちていた。
第38話、最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回から、アルとエルシアの魔法鍛錬が始まります。
これまでアルは、魔法を「現象」として理解し、知識によって再現してきました。
ここからは、それだけではない魔法の在り方を学んでいくことになります。
果たしてアルは、自分だけの魔法を見つけることができるのか。
次回からの鍛錬も楽しんでいただけましたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願いいたします。




