表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沈まずの艦~殺し合いに飽きた海賊大名、艦船制御AIになって天下統一を目指す~  作者: 月這山中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/22

第二十二話 謀反の理由

 探索船が人類未踏の区域に到達した。


「俺の目はいつ直るんだ」


 能島がたずねてきた。


『お前の義眼は毛利宇宙軍の高度な技術によって作られとる。完全な修復は難しいだろう』

「完璧に直せ、それが条件だ」

『わかっておる。そのためにも資材を探さねばな』

「チッ」


 舌打ちをして、能島はポケットから何かを取り出した。


『もしやそれは、『石』か』


 俺は天井の目でそれを覗き込む。紫色の光を透過している。


「ああ、埋め込まれた物とは別物だ。三十年前、隕石として生家に落ちて来た」


 奴の言う生家とは、こちらの世界での産屋だろう。

 能島は火傷跡を掻く。


「その時の傷がこれだ。俺の片目をかすめて燃やしやがった。親は大慌てで医者を探したよ。だけど金がないってんで、輝元に縋ったのさ」

『焙烙火矢の傷ではなかったのだな』

「何千年前の話だよ、俺は死んでねえっていっただろ。まあ、その時の火傷で記憶を取り戻したのは事実だがな」


 石を握り締める。


『たずねてもいいか。輝元はその『石』をどれだけ集めている』


 俺の質問に、意外にも能島は素直に答えた。


「隕石として降ってきたものを拾ってる。輝元自身も石を埋め込んでいて、そいつが共鳴するんだそうだ。とはいえ、数えるほどしかないんじゃねえか」


 嘘をついている様子はない。


『なるほど』


 俺は考える。

 輝元が行っている「意志の統合」は限られた幹部だけ。埋め込まれた当の能島も意識を乗っ取られているわけではない。奴の言葉の意味を真正面から受け止めることはできない。

 であるなら、本来の目的は……。


「失礼します」


 ガーディアンが真ウルフ・ムーンの制御室に入ってきた。

 片手には拳銃を構えて。


「九鬼嘉隆、あなたは艦島制御AIに相応しくない」


 フリー・ムーンの乗組員が俺を取り囲んだ。


『どうした、ガーディアン』

「ははっ、謀反されてやがんの」


 笑っている能島も両腕を上げている。


「まだ気が付きませんか、お父さん」


 今、気付いた。


『守隆』


 ガーディアンは俺の息子、関ケ原で別れた子、守隆だったのだ。


『来ていたのか、会いたかった。いままでどうして』

「あなたは出来の悪い親でした」


 守隆は吐き捨てた。


「関ケ原で戦況を読めず西軍に与したまま、私が送った使者を待たずに亡くなった。すべての選択が誤っていた」

「それは言い過ぎだ」


 能島が口をはさんだ。

 銃声。


「黙りなさい」


 銃弾が能島の耳をかすめていた。


「撃ちやがったな。覚えてろよ」

「目障りです、能島。真ウルフ・ムーンをフォーマットしたあとはあなたの処刑です」


 守隆の背後から、少年型の端末が歩いてくる。


『シュウ……』

「フォーマット後は彼のコピーを搭載します。あなたも本望でしょう。我が子のようにかわいがっていたんですからね」


 端末の表情は読めない。しかし、うつむいているのは分かった。


「フォーマットを開始してください」

「やめよう、ガーディアン」


 シュウの声だった。端末の目が青く光る。


「九鬼は、僕たちに必要な戦力だ。彼なくして毛利宇宙軍には勝てない」

「シュウ、あなたの計算は間違っている。こんな奴がいなくとも私たちは勝利する」

「しかし……」


 二人が言い争いをしている。

 その時、彼らの背後で銃声が鳴った。


「九鬼、大丈夫か!」


 謀反した船員と格闘していたのはリ・チョウだった。

 通路の天井に穴が開く。


「どうらっ!」


 拳銃を奪い取って船員を投げた。将棋倒しに倒れる。


「くそっ」


 守隆が拳銃を構える。俺は端末をポッドから出し、その腕を掴んだ。


「離してください! 気持ち悪いな!」

「守隆! いままでのことは謝る、だから話を」

「話すことなんてありませんよ!」


 守隆は力任せに引き金を引いた。

 弾は床を跳弾してシュウの胴体に当たった。


「シュウ!」


 俺は思わず叫んだ。


「……やっぱり、そっちのほうがかわいいんですね」


 守隆の呟きが俺の耳に入った。

 復活した船員たちがリ・チョウを押さえつける。


「守隆! 話を……!」

「おらぁっ!」


 能島が船員を蹴り飛ばした。


「処刑されるってんなら、抵抗するしかないよなぁ!」


 起き上がったリ・チョウと能島が船員たちを次々と戦闘不能にしていく。

 俺は守隆の腕を掴んだまま、動けずにいた。


「どうしてまだ女の子の形なんですか?」


 守隆がたずねた。


「この端末はアルテミスの忘れ形見だ。デザインに手は加えなかった」

「シュウとの思い出の方が大事なんでしょう」

「守隆」


 守隆の顔は怒りに歪んでいた。その目から、涙があふれるのを見た。


「前世の記憶なんて馬鹿馬鹿しい。あなたのことなど、父親とは認めません」


 守隆の足が俺を蹴り飛ばす。

 その勢いのまま、緊急脱出ハッチに取り付いた。


「守隆、やめろ!」

「あなたが殺せないなら、私が去ります」


 宇宙服もつけずに彼はハッチを開けた。

 二重扉を開くために、閉じる。


「守隆ぁ!」


 俺は意識を艦に戻した。

 飛び出そうとする彼を見つける。


『守隆、いくな!』


 守隆の口元が動いた。

 真空の中では声が届かない。

 目を閉じる。


 俺は守隆を撃った。

 弾丸が開き、バルーンが彼の身体を包んだ。




『守隆』


 船外活動用のアームでバルーンを抱きしめた。


「私は」


 守隆の声が届いた。


「私はもっと、あなたに生きていて欲しかった」

『………』


 俺は語り掛ける。


『すまなかった。お前が東軍についた時、西につけばどちらが勝っても家は残ると考えていた』


 俺は伝える。思うままを。


『古い考えしかできない俺は先に逝くべきだと考えていた。その結果、お前を一人にしてしまった。お前に憎まれても仕方がない。許してくれ』


 バルーンを身体に取り込み、生命活動が可能な場所へと守隆を送り届ける。

 ドックに降り立った守隆を、端末で迎える。


「守隆」

「気持ち悪いんですよ」


 守隆は笑っていた。


「別の形の端末も作っておいてください」

「善処する」


 俺は手を差し出す。

 守隆は、その手を握った。




 そんな守隆がフリー・ムーンごと、毛利宇宙軍に略取されたのは、この出来事から三日後だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ