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沈まずの艦~殺し合いに飽きた海賊大名、艦船制御AIになって天下統一を目指す~  作者: 月這山中


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第二十一話 狼月の再来

 毛利宇宙軍による新国家シリアス・ムーンへの攻撃が始まった。

 百を超える高速機動艦がこちらへ向かってくる。


「本格的にこちらを狙っていますね」

「ひ、避難したほうがよいか」


 緊張した面持ちでセブンスが呟き、リ・チョウが頭を抱えて言う。

 二人はフリー・ムーンの制御室に居た。

 艦長ガーディアンが操縦桿を握る。


「逃げたければ避難ポッドを使ってください。向こうが見逃してくれるかは賭けですがね」


 ガーディアンは通信を開く。


『シリアス・ムーンの民は殺せ。捕虜は要らない。シリアス・ムーンを海の藻屑とせよ』


 傍受した通信から絶望的な言葉が流れ込んでくる。


「バルーンを防御型に展開、他の艦島にも通達」

『了解、バルーンを展開』


 シュウをコピーした制御システムが答える。

 ガーディアンは艦体を指揮しながらバルーンで防御している。


『スフェニサイド大破、戦線を離脱します』

「わかった、出来るだけ遠くへ逃げてくれ」

『アイ・ムーン、複数の敵艦に追われてる! 増援をくれ!』

「ゼブラとキュヴィエ、向かってくれ。こちらは大丈夫だ」


 高速機動艦の数は前回の比ではない。

 徐々に劣勢へ傾いていく。


「ここまでか……」

「………」


 ガーディアンは操縦桿を叩く。

 その時だった。




『よく耐えたな、お前たち』




 通信で入ったのは、俺の声だ。


「九鬼さん……!?」


 セブンスが画面を見上げる。

 地球から打ち上がったのは一隻の艦島。

 白銀に輝く外装は量子化しながら亜光速で進む。

 改装された真ウルフ・ムーン、俺の身体は戦線に切り込んだ。


『撃つぞ』


 改良型バルーンを射出する。圧縮した弾丸が敵艦に取り付き、着弾と同時に展開する。

 ちなみに、この特許もベルディングに売っている。打ち上げ費用が少し足りなかったのだ。


『アイ・ムーンはそのまま艦隊を突っ切れ!』

『りょっ、了解!?』


 ウミノの動揺する声。


『フリー・ムーンとタイガー・ムーンは左翼を落とせ! 右は俺がやる!』

『了解……』

『了解!』


 指示通りにシリアス・ムーンの艦隊は行動する。

 俺は高速機動艦を上回る速度で飛び、敵艦を地球へ落としていく。

 敵の只中を突っ切ったアイ・ムーンが攪乱し、乱れた隊列を一網打尽にする。


『目障りですね』


 傍受した通信。いや、こちらへ聴かせるために通信を開いているのだろう。

 低い冷気を纏った因島の声だった。


『形勢は逆転したぞ。大人しく負けを認めろ』

『このことは高く付きますよ』


 ふと、向こうのマイクに音が入った。柱時計のような音。


『……業務時間を過ぎたので、一時休戦としましょう』


 因島たちはあっさりと撤退していった。




 リ・チョウは床にへたり込んだ。


「た、助かった……」


 セブンスは駆け出した。接続した連絡通路で真ウルフ・ムーンへと移る。


「九鬼さん!」


 出迎えたのは片目に眼帯を巻いた能島だった。


「なっ、なぜあなたがここに」


 俺は端末の姿で能島の横から顔を出す。


「おう、セブンス。達者だったか」

「九鬼さん、能島が!」

「ああ、地球で拾った」

「拾った!? ……」


 セブンスは能島を見上げる。

 能島は視線を合わせようとしない。


「……チッ」


 舌打ちをした。


「改修するのに手が足りなくてな、こいつが命を狙ってきたから、手伝わせた」


 俺は説明する。


「言葉が不足していますが、わかりました。今は仲間なんですね?」

「んなわけねえだろ、ぶち殺すぞ」


 能島が凄んだのでセブンスはのけぞる。


「……俺の目を直すって約束をした。それが済むまでは大人しくしておいてやる」


 頭を乱暴に掻いて、能島は住居スペースへと戻った。


「そういうことだ。リ・チョウも呼べ、またこの艦で行くぞ」

「……はい!」


 その後、移ってきたリ・チョウが能島を見てぶっ倒れた。




 フリー・ムーンの制御室。


「………」


 ガーディアンは物思いにふけっていた。

 右手が、固く握られる。


「……嘉隆、お前だけは許さない」


 その呟きは、制御システムだけが記録していた。




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