101 親父との対話
皇国学習院に合格したオレは、久々に親父の住む領地に帰った。
「カストル様、おめでとうございます!」
「わたし達は信じておりました、しかもトップで合格だそうで……旦那様も大層お喜びでしょう」
「今晩は盛大にパーティーを開かせていただきます」
「そういえばバロさんも執事枠で合格されたのですね」
「それは二重にめでたいですわ」
オレが皇国学習院にトップで合格できたことを城の従者達はみんな喜んでいた。
「あ。お義母様」
「フン……下賤な血が入っているとはいえ、あの人の息子には違いないわね。ヘミニス家の名を汚さないようにせいぜい頑張るのね」
継母は生まれついての貴族らしい。
どうやらオレの母親が貴族で無かったことを、オレを叩く材料に使っているようだ。
「お母様! お兄様に失礼ですわ! お兄様はトップで合格しましたのよ。もっと褒めてもいいのではないのですか」
「そんなもの、ヘミニス家の者ならそれくらいの成績で合格して当たり前です!」
アルヘナがオレを邪険にした母親に抗議していた。
「アルヘナ、オレは気にしてないからよォ」
「フンッ」
継母はそのまま自分の部屋に戻っていった。
「カストリア様、旦那様がお呼びです」
「親父が? わかった、すぐに行くぜェ」
オレは親父の部屋に呼び出された。
まあこの成績なら怒られることはないだろう。
◇
「来たか、カストリア」
「何だよォ。親父ィ」
「はて、私は娘のカストリアを呼んだはずだったが……ここにいるのは誰だ? すまぬ、カストリアを呼んできてくれ」
親父の態度がワケわからない。
だがどうやらオレに女の姿で出直せと言っているようだ。
オレはメイドに用意してもらい、女物の衣服に着替え直して再び親父の所に戻った。
「お父様、失礼致します」
「来たか、カストリア。……美しい、まるで亡きお前の母さん、私の妻の若い頃にそっくりだ」
「それで、なぜこのような姿で出直せとォ?」
「私はお前に人生を押し付けすぎていたのかも知れない。カストリアよ、私の昔の話を聞いてくれるか」
親父のこんな態度を見るのは初めてだった。
「私は昔、貴族の立場を捨てようとしたことがある……だが私は臆病だった。いざ家を飛び出したものの、何もできなかった。そして私は……誰かのおかげで自分が生きてられると思い知り、そのことを諦めた」
「それは、一体なぜ?」
「私は馬で遠出した時、立ち寄った村で村一番の美しい娘に一目惚れした。そして私は何が何でも彼女を自分のものにしたいと思った。貴族の立場を捨てようと思ったのもその娘と一緒になりたかったからだ」
「それって……まさかァ」
「そう、その女性がお前の母親だ。だが私は結局貴族の立場を捨てる事が出来なかった。それでも私は彼女のことを諦めることが出来なかった。そして私は最低の手段を取った……」
親父は母さんのことを懐かしみつつ、後悔を懺悔しているような話し方だった。
「愚かにも、私は貴族の立場を利用し……彼女を侍女に呼び寄せたのだ。彼女の村は貧しい村だったが、彼女がいたので村人は明るく過ごせていた。それを私は貴族であるのをいいことに、村の心の支えである彼女を強引に奪い取ったのだ」
「お父様ァ」
オレは思わず地が出そうな話し方になった。
「彼女のいなくなった後の村は、みるみる活気を失い、どんどん寂れていった。だが、私はそんなことよりも彼女を手に入れたことに有頂天になっていた」
「そうなのですね……」
「だが私は侍女にした彼女にどうしても振り向いてもらいたいと思い、私はいろいろと試した。その思いが通じたのか彼女は私に心を開いてくれるようになった。」
「それで、ア…タシが生まれたと」
「そうだ、だが話はそれだけでは終わらない……」
親父の懺悔ともいえる話はまだ続いた。




