第40話:ちかくと、とおく! の、ひ!
「パパ!」
草原に元気な声が響く。
今日は、みんなで遠出をしてピクニックに来た。
「ははは。ソラリス、そんなに急ぐと危ないぞ」
駆け出して行っては、ときどき立ち止まり、振り返って笑顔を向けるソラちゃん。
「トレンテしゃんも、ジェノしゃんも、おしょいとおいてっちゃうよ!」
「ふふ。ソラ様、はしゃぎすぎると、こけちゃいますよ」
「だいじょぶだから、はやく!」
開放的な草原なんて始めて来たから、楽しい気持ちでいっぱいだね。
「ははは! そ~れ、追いついたよ」
「きゃぁぁ」
追いついてきたパパに、ひょいっと抱き上げられる。
まあ、両手を上げて、だっこちてポーズで待ってたんだけど。
抱きかかえられたまま、目的地に着いた。
小川の畔で、川も水深が浅く、背の低いわたしでも安全に水遊びが出来そう。
川の対岸には、小花が咲き乱れ、さらに地平の向こう側には、一本の大樹が聳え立っている。
「ソラリス、あの木が見えるかの? あの木は世界樹というんじゃよ」
「しゅごいの?」
「ああ。この世界を支えている大きな木じゃからな」
「え~? パパと~ジェノしゃんと~トレンテしゃんのほうが、おおきいよ?」
ソラちゃん、それは遠近法って言ってね……。て、なんて説明したらいんだ?
「ソラリスや、どっちが大きく見える?」
と、正面に両手の人差し指を立てて、距離をずらして言ってきた。
「あたちにちかいほう!」
「残念。どっちも同じ大きさじゃよ」
と、今度は揃えて見せてくれる。
「ほとんとだ! どちて?」
「近いほうが大きく見えて、遠いと小さく見えるんじゃよ。だから、あの世界樹も、近くまで行くとパパよりも凄く大きいんじゃよ」
「しゅご~い!」
ほんとすげ~! 分かりやすい!
「だから、しぇのたかいトレンテしゃんより、しぇのひくいジェノしゃんの、おむねのほうが、おおきくみえるの?」
「「「……」」」
ふぁ!? ちょ! なに言ってるの! 今近くに居るのはトレンティーさんでしょ!? ……あ、あれ?
「ちかくにいるのは、トレンテしゃん?」
声に出しちゃだめぇぇぇ!
「ジェノ……エルフって、森の精霊の眷属よね?」
「は……はい。祖先は、そうでした」
「……精霊女王の権限で、魂を削って胸を小さくしてもい~い?」
「いやぁぁぁ! だめですぅぅぅ!」
ジェノさんは全力逃亡した! トレンティーさんは追いかけた!
ほんと! 無遠慮のソラちゃんでごめんね!
「ソラリスや。トレンティーを怒らせちゃダメじゃよ」
「あ、あい!」
本当に怒らせちゃダメだよ、ソラちゃん! 気をつけようね! 特に胸のことは絶対に、しぃぃぃ! だよ!




