第34話:ちりもち、ぺったん! の、ひ!
今、地面にペタンと座らされて、ジェノさんから説教を受けてます。
「訓練用の的を5個消滅。……負傷者がいなくて幸いでした」
まったくだ!
「感情を高ぶらせて魔法は使っちゃいけませんて、言いましたよね?」
「ぷぅぅぅ!」
いいところを見せようとして、逆に叱られちゃったから、ソラちゃんは拗ねちゃった。
「お城では制御できてたのに、どうして今日はできなくなったんでしょうね?」
理性が感情に負けたからです! 不甲斐ないわたしでごめんなさい!
――ふ~がな~い!
ちょと、話し合おうか?
予想通り、ここでも魔法禁止になった。
ま、こんなことでは懲りないソラちゃん。
今度は剣の訓練に参加してみたいようだ。
「あれやりたい!」
と、1体1で模擬戦やっている人達を指さす。
でも、ジェノさんが困った顔してるぞ。
体がまだ成長してないから危険だって言ってたし。
「ソラちゃん、軽めでいいなら、私が相手してあげようか?」
お、アヤネちゃんが相手に立候補してくれたぞ。
8歳なのに剣を持って堂々とした姿は立派な剣士だ。
可愛いキツネ耳とふさふさ尻尾のギャップが凄いけど。かっこかわいいか。
「仕方ありませんね。軽くですよ?」
「やった!」
ジェノさんの許可が出て、お互い木剣を持って正面に対峙する。
アヤネちゃんの身長は130センチほど。わたしとソラちゃんは98センチ……。
うん……なにこの身長差。もしかして、もうすぐ5歳にしては低すぎる?
「いくよ!」
「あい!」
パン!
合図の返事をした瞬間、乾いた音がして、持った剣が上に弾かれる。下から上への斬り上げ……当然、体じゃなくて、剣を狙ってくれたみたいだけど、力のないわたし達はそれだけで……。
「わ、わわ!」
ぽてん、と、尻餅ついちゃう。
「むぅぅ!」
おや? ソラちゃん、泣くどころか、お怒り?
――こうたい!
てことで、わたしに体の主導権がきた。
――まけちゃ、め!
負けたら怒るぞ! てか。やっと分かった。ソラちゃんの性格って、負けず嫌いだ。
「スー……ハー……」
起き上がって、呼吸を整える。
冷静になって集中力を全開に。
理性であるわたしなら、このくらいは簡単だね。
アヤネちゃんが摺り足で間合いを詰めてくる。そして、攻撃範囲に入った瞬間、右肩がピクっと動いたのが見えた。
来る!
頭上で剣を水平に構えて、受けの体勢。
アヤネちゃんの上段からの切り下ろしを剣と剣が触れた瞬間、切っ先を斜め下に向けて、アヤネちゃんの剣を滑らせる。
受け流し成功! ていっても、最初から剣を狙ってくれてたから成功したんだけどね。
アヤネちゃんが受け流されて体勢を崩した。
いや、だから何? ってことだよね。
だって、その隙をついて攻撃しようと剣を振り上げたら、振り上げた遠心力に負けて、尻餅ついちゃったんだもん。
受け流しまでは上手くいってた。うん。
――ソラしゃん、ちからないね!
いや、同じ体なんだから、君もだよ。