第33話:はりきっちゃった! の、ひ!
そいえば、この街についての疑問を聞いてなかったなと思い出し、夕食のときに聞いてみることにした。
ソラちゃん。パパに、どうして同じ建物ばっかりなのか、聞いてみて。
――……や。
え~。どうして~。
――ね……みゅい。
あ……。
目の前にスープと小さく切り分けられたパンがあるんだけど、ソラちゃん、スプーンを持ったまま、視界をぼやけさせて、カックンカックン揺らしてる。
わたしも凄い眠気に襲われてるんだよね。
2人で1人っていう特性なのか、ソラちゃんが寝ちゃうと、わたしも強制的に寝ちゃうんだよね。
だからいつも、寝るときは、おやすみって声をかけ合せるようにしてる。
でも、今は食事中なわけで……。お昼はいっぱい走り回ったもんね。疲れちゃったんだよね。
――こうたい……。
え?
目の前に、湯気立っている、あつ~いスープが!
首をちょっと動かして、なんとかそれを回避!
ゴン!
反射的に上体を起こして、じぃぃぃん、と、痛さが染み出してくるオデコを両手で押さえる。
まあ、幼児の体で、その痛さに耐えれるはずもなく。
「うわぁぁぁん!」
「ソラリスゥゥゥ!」
「大丈夫ですか!? ソラ様!」
「ジェノが起こさずに可愛いなんて言いながら見詰めているから!」
「グランゾ様だって、カクンカクンなってたのを微笑んで見てただけじゃないですか!」
会話もなく、えらく静かだと思ってたよ!
「びぇぇぇぇん!」
涙が枯れるまで泣いてやる!
――ソラしゃん……もう、ねよ。
あ、はい。
翌朝。
アヤネちゃん達は、早朝から街の外にある広場で訓練をしているらしい。
獣人族は全員が戦士だって、パパが教えてくれた。
子供でも5歳から訓練を始めるらしい。
で、今ジェノさんに手を引かれて、そこに向かっているところ。
「ジェノしゃん、はやく!」
「はいはい」
いや、はやく! って、手を引かれてるのはわたしたちだよ、ソラちゃん。
訓練を見たいんじゃなくて、アヤネちゃんに早く会いたいんだよね。
「ふさふさちっぽ!」
……。
模擬戦、素振り、連携。
大人達はみんな、男も女も関係なく訓練していた。
獣人族というのは、戦闘民族らしい。
「ジェノしゃん。あたちも、あれやりたい!」
「え? 剣で素振りですか? ソラ様はまだ体が小さいから、無理ですよ」
「ぷぅぅぅ!」
過保護に育てられて、体力も筋力がまったくないしね。昨日もちょっと走ったら、すぐにバテてたし。
「魔法の訓練に混ぜてもらいましょう。アヤネさんも、今日は魔法の訓練をしているようですよ」
少し離れたところで、アヤネちゃんと子供たちが魔法を使っていた。
それを見たソラちゃんはそっちへ駆け出していく。
アヤネちゃんを発見して嬉しいんだね。
「ちっぽ~!」
名前を呼びなさい!
「ソラちゃん! おはよ!」
「おは……よ」
もじもじ後ろ手で組み、腰をくねくね……。どうして挨拶で恥ずかしがる?
「「ぶふ!」」
男子数名、鼻血を出して昏倒。
美幼女の可愛さ、恐るべし。
「あたちも、まほう!」
男子は眼中になし!
「攻撃魔法も使えるの?」
「あい!」
「じゃ~、あの的に向かって撃って」
――ソラしゃん、あたち、じぇんぶしゅる!
え? ああ、詠唱も覚えてるの見てもらいたいんだね。わかった、全部任せるよ。
――はりきっちゃう!
う……ん? なんか忘れてるような……。
「ひのけ、し! んよ! がん、ぜ! んのてきをもや、し! つく、せ! ふぁいやしょっと!」
どっごぉぉぉぉん!
うん。張り切ったソラちゃんに全部任せちゃダメだった。
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