第32話:おともだち、いっぱい! の、ひ!
まあ、街に着いて早々いろいろあったけど、そのかいあって、ソラちゃんはここの人達と仲良くなれた。
アヤネちゃんと手を繋ぎ、街の中を散策中。
ソラちゃんはきょろきょろと、珍しそうに見回してるぞ。
ていうか、同じ形の家が並んでるな。何か意味があるのかな?
「どちて、おなじ、おうちなの?」
「そうなんですよね。どうしてか、私も分からないですけどね」
う~ん。アヤネちゃんは敬語を使ってるな。魔王の娘っていう関係上、部下って感じなのかな?
――けいご?
うん。ジェノさんと同じしゃべりかたって言えば分かるかな?
――あう?
……幼児には難しかったようだ。どう説明したらいいものか。
えっとね。ジェノさんのしゃべりかたに比べて、ホーネさんのしゃべりかたのほうが、話しやすいでしょ?
――あい。
アヤネちゃんとの今の関係は、部下以上友達未満って感じなんだよね。他の子も、一歩距離を置いてる感じだし。
せっかくここまで来たんだから、ソラちゃんには友達いっぱいつくって、楽しく遊んでほしいんだけどね。
――ともだちになったら、あしょんでくれるの?
そうだね。
でも、簡単に友達になれるかが問題だよな。
「ちっぽ、ぎゅ!」
「はうん!」
なにしてるのぉぉぉ!
久々に叫んじゃったよ! アヤネちゃんも色っぽい声出して、びくんってなったし!
「い、いきなりどうしたんですか?」
「ぎゅってちたから、ともだち!」
は? なにその発想。天才か?
「ですが……」
「なってくれないと、またぎゅってちちゃうから!」
すすすっと近づいて、両手をにぎにぎ。
後ずさりするアヤネちゃん。
「ふふふ……」
「わ、わかりました! わかったわ! 私とソラちゃんはお友達!」
「えへへ」
こらこら。そこは笑うだけじゃなくて、ちゃんと、よろしくねって言わないと。
「よちくね!」
「こちらこそ、よろしくね」
うんうん。アヤネちゃんもやっと笑顔になってくれたね。
本来は、なってくれって頼んで友達をつくるんじゃないけど、ま、いいか。
「で、なにして遊ぶの?」
「えっとね、いっぱいぎゅってちて、おともだち、ふやしゅ!」
「よ~し! いこ! ソラちゃん!」
お、アヤネちゃん、さっそく敬語も取れて、本来の明るさが出たな。よかったよかった。
……よくなぁぁぁい! こら! みんなに迷惑をかけちゃダメでしょ!
――ぷぅぅぅ! おともだち、いっぱいにしゅるの!
いやいや! ぎゅっイコールもうお友達だね! て、どういう理屈なの!
わたしも最初は天才かって思っちゃったけど!
尻尾をぎゅってしたいだけでしょ? ここにはいろんな尻尾がいっぱいあるもんね?!
「ぎゅ!」
「キュイン!」
「おともだち、なった!」
「え? あ、はい」
すみません! ごめんなさい! 尻尾、敏感ですよね!
「ソラちゃん! あっちに集団発見!」
「やった!」
やった! じゃありません! ちょ、まちなさい!
「突撃~」
「おお~」
あ~! もう! 楽しいな! こんちくしょう!
結局、みんな笑顔で接してくれて、街中を巻き込んで大追いかけっこが始まったよ。
ソラちゃんの走る速度に合わせてくれて、笑顔で追いかけて。わざと追いつけるようにしてくれて。
尻尾をぎゅ!
楽しいね、ソラちゃん。お友達いっぱいできたよ。
ちなみに、パパも参加したときは、みんな真剣に逃げたよ。
パパの……魔王の笑顔で、あの巨体に追いかけられたら、本気で怖いよね。
ジェノ「え!? 尻尾をぎゅってされると、お友達になれるんですか?!」
パパ「そうらしいな」
ジェノ「グランゾ様! 私に尻尾をください!」
パパ「え? 無理」