第12話:ツッコミ疲れちゃった……日
ある日のこと、1人で暇だったわたしは、ベッドの横に積まれていた絵本を1冊引き抜いて、適当にページを捲っていた。
絵本と言っても、黒色と白色だけの、影絵みたいなものだけど、それを見るだけでも退屈しのぎにはなる。
まあ、文字が読めないから、本当に絵を見ながらぱらぱらと捲ってただけなんだけど。
「あ!」
うん? どうしたソラちゃん?
急に感情のソラちゃんに行動を奪われて、なにかあったのかなって思った。
「しゃっきのとこ……」
どこだろう? わたしは特に気になるところは無かったけど。
ページが戻されていって、あるところでピタっと止まった。
その絵は、大きな竜が火を噴いてるだけなんだけど。
大きな竜の顔が描かれてて、少しリュードさんに似てた。
何か感情に触れるものでもあったのかな?
「きいてみりゅ」
誰に何をですか?
絵本を持ったまま、円卓の部屋の前に来た。当然ながらドアは閉まっている。
今日はまだジェノさんも来てないから、ドアを開ける手段が……。
「うぅぅ!」
唸っても開きませんよ?
と、そこに廊下を歩いてわたしの後ろを通り過ぎた犬人族の人が。
狼人族の人達より小柄だけど、共通してるのは頭から生えてる犬耳と腰から出てる尻尾。
その尻尾をソラちゃんがいきなり掴んじゃった。
「キャイン!」
尻尾、敏感ですよね~。ごめんなさいね~。
「な……なんでしょうか、ソラリス様?」
「ここ、あけて」
普通に声かけてお願いしましょうね! 尻尾掴んじゃダメ!
とにかく、中に入れてもらったら、パパはそこに居なかった。
残念。違うところでお仕事してるのかな?
「わはは! どうしたお嬢。パパは居ないぞ?」
「いた……」
目的の人はリュードさんだったらしい。
とことこと近づいていって、ばんざいして抱っこしてのポーズ。
「お? 今日は俺に甘えてくれるのか? よしよし」
膝の上に抱っこされる。
パパ以外の男の人に自分から抱っこされにいくなんて、珍しいな。
なんて思っていると、テーブルの上に絵本を開いて、あの竜のページの絵を指差して。
「とかげしゃん……いっしょ?」
「は?」
は?
いやいやいや! ドラゴンだから! トカゲじゃないから! 失礼でしょ!
「わはは……俺はトカゲじゃないよ?」
「かお、いっしょ?」
「似てるけど……え?」
ごめんなさい! ごめんなさい! 混乱してますよね! この子、ドラゴンとトカゲの区別がついてないんです!
「おくちかりゃ、ひ、でる?」
「ああ。火は噴けるけど」
噴けるんか~い!
「あたちも、ひ、でる?」
「は?」
は?
て、可愛い顔で火を噴いちゃダメでしょ! 理性は許しませんよ!
「ま……魔法なら火が出るんじゃないか?」
「まほお~!」
納得しましたか? そうですか。
……魔法を使えるようになっても、口から火を出さないでね?