第10話:パパとおしゃんぽのひ!
外に出て、目にしたのは空を覆う厚い雲。今はその空も霧散して、青空が広がり太陽の優しい光が降り注いでる。
パパの優しい心みたいに……。
パパは言葉遣いは年寄り臭いけど、顔は30手前くらいのハンサムなんだよな。
巨体で魔王だけど優しい……。俺も、感情に洗脳されたな。
認めるしかない。俺は……わたしは、3歳の女の子として、パパの娘として今は生きてるんだって。
だからね? わたしは感情のあなたと1つだと認めたから、ちょっとはわたしの話を聞いて?
「パパ! これ、にゃに?」
赤い大きな花で、赤い花びらの中心に大きな口と牙があって、蔦がうねうねと動いてるんですが?
「あ~。それは防犯に植えた人食い花の魔物じゃよ。近づくと危ないから、近づいちゃ駄目じゃよ」
「あ……あい」
めっちゃ気をつけます! 言い聞かせます! 教え込みます!
「よし。ここからは自分で歩こうかの?」
「え~」
いや、え~じゃなくて、散歩と言うものは歩くものだぞ?
「ほほ。俺も可愛いソラリスを離したくないのじゃが……」
甘やかさないで! わたしが我侭っ子に育っちゃう!
――ソラしゃんうるちゃい。
いや、わたしもあなたもソラリスだからね?
――ぷ~!
「せっかく新しい可愛い靴を作ったんじゃ。それを履いて一緒に歩かないかの? パパは手を繋いで一緒に歩きたいけどな~」
「ありゅく!」
そうですか。わたしの言うことよりもパパが優先ですか。
というか、靴よりも先に、この身体に布を巻いただけの状態をどうにかしてほしいんですけど。
ええ。分かってますよ。こんな男ばかりのお城に女の子の服なんてないことくらいは。
靴を作ってくれたくらいだから、時間がかかりそうだけど、服も作ってくれてるのかな?
降ろしてもらって、ジェノさんが持っていた靴を履かせてもらった。
赤い色で、両サイドにワンポイントで青い花が付いている可愛い靴だ。
こんな女の子趣味に慣れるのは、まだまだかかりそうだな。
「さあ、手をつなごうかの?」
「あい……ありぇ?」
限界まで下げてくれたパパの手に、わたしの手が届きません!
どんだけ巨体なんですか? て、泣かないで! 泣いちゃダメ! パパも悲しくなっちゃうよ!
そうだ! 脚にしがみついちゃえ!
「おお? これならより密着して散歩できるな。中庭に行くか」
パパが脚を上げるとわたしも浮き上がって、脚をおろすとわたしの靴を履いた足も地にペタンと着く。
いやこれ、自分の足で歩いているといわない。絶対。
で、中庭まで着くと、その一角を占める干された白いシーツと布がいっぱい。
今までの、おもらしとおねしょの戦利品!
うん。壮観だな~。
――どうちて?
え? いや、それが分かったらわたしも苦労してないよ?
パパに聞いてみたら?
「パパ。おねちょなおる?」
「え~? 人間の幼子のことは分からんが、ここに力を入れたら我慢できるんじゃないかの?」
と、下腹部を指差しながら……。
「ここ?」
キュっと力を入れてくる。
あ、待って? 今そこに力入れちゃうと……。
じょぼぼ。
ほら、おねしょじゃなくておもらしになっちゃう。
「うわぁぁぁん!」
泣きたいのはわたしだ!