閑話1 火の小鳥の憂鬱
三人称視点スタート。
少し短めです。
コドクの毛並みを幸せそうな顔で堪能していたカナンが、ふと、コドクの翼を見ながら呟いた。
「……コドク、ちょっと、翼を広げて。」
「うん?何故だ?」
カナンの問いに、眠そうにのんびりと返すコドク。
すると、カナンは、コドクの翼をじぃーっと見つめながら、ボソッと呟いた。
「挟まれたら、どんなにもふもふするのかな、って。」
翼と体毛の毛並みに埋もれたい、というカナンの言葉に、ユーナが「カナン……あなた、本当にもう……」と呆れたように溜息を吐いた。
コドクは、そんなカナンとユーナの様子に苦笑すると、右の翼を広げた。
そこには、コドクにへばりつくようにして、幸せそうな顔で鼻血を出す星花がいた。
辺りに、痛いほどの沈黙が降りる。
コドクは、何事もなかったかのように右の翼を畳み、左の翼を広げた。
そんなコドクに、我に帰ったユーナが、大声をあげた。
「って、ちょっと待ちなさい!!
誰!?今の誰よ!!コドクも、なにさりげなく何事もなかったかのように隠しているのよ!?
カナンも黙っていないで、何か言いなさい!」
ユーナがカナンに話を振ると、カナンは眉根を寄せた。
「羨ましい……」
「ええっ!?そこなの!?いや、今、おかしいとしか思えない何かがいたでしょう!?」
「むう……先を越された……」
「……いったん、コドクの毛並みから頭を離しなさいよ……」
悔しそうに唸るカナンに、ユーナが頭を抱えながら、深い溜息を吐いた。
その時、右の翼がもぞもぞと動き、翼から星花が出てきた。
星花は鼻血をハンカチで拭い、身だしなみを素早く整えると、カナンとユーナに、綺麗なお辞儀をした。
「ご主人様のご家族方、先程は、お見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ございませんでした。
私は、ご主人様の眷属である、星花と申します。」
先程の醜態と打って変わり、綺麗に振る舞って見せる星花に、ユーナは驚いて、ポカーンと口を開けた。
すると、星花は、家族と言われて嬉しそうな表情をしているカナンの傍に素早く近寄り、カナンの耳元で囁いた。
「ちなみに……ご主人様の翼と毛並みに挟まれるのは、天に昇るかのような、最高の心地でございましたよ。」
「っ!コドク!」
そう言いながら、うっとりとした表情を見せる星花も見ずに、カナンは、その目に強い光を浮かべ、コドクに声をあげた。
我関せずとばかりに、半ば眠っていたコドクは、カナンのその声に、寝ぼけた様子で首を傾げた。
「ん……なんだ?」
「私もやる!!」
カナンは、コドクが翼を広げるのも待たずに、そのままコドクに飛び付き、コドクの翼の間に自分から潜り込んでいった。
コドクは、しばらくそのまま自分の翼を見ていたが、やがて、目を閉じ、眠り始めた。
それを見たユーナが、呆れたように、ぼそりと呟いた。
「……もう、いいわ……何から何までつっこんでいたら、こっちの身が持たないわよ……」
がっくりとうなだれ、溜息を吐くユーナに、星花が笑みを浮かべた。
「ユーナ様、あなたもどうですか?」
「やらないわよ、この変態!!」
ユーナの悲鳴のような叫びが、虚しく辺りに響いた。




