25 羽根のお守り
3話目。
コドク視点スタート。
恥じらうユーナがかわいい。
あと、今更ながら新発見。ユーナは恥ずかしくなると、体の炎が一瞬だけ、ボンッと燃える。怒ると勢いよく燃えるけどな。
何故かは分からないけど、ユーナの炎って、触っても熱くないんだよな。むしろ、温かい。
そんなユーナだが、どうやら俺達が「かわいい」を連呼しすぎたらしく、そっぽを向いてしまって、口をきいてくれなくなってしまった。……俺だけに。
カナンとは話すのに、俺だけ無視するのだ。その癖、ずっと俺の頭の上にいるが。
むぅ、どうやって愛でればいいか分からなかったから、口で言ってみたのだが。ユーナには、逆効果だったらしい。
ユーナは、そういうのはさりげなく言ってもらった方が、嬉しいのかもしれない。
さて、あの後だが、メノゥが美味しい食事を出すお店を知っているとかで、今、カナンとユーナはその店で食事をとっている。
そりゃあ、そうだよね。生き物だもの、食べなきゃ生きていけないよね。
俺?一生分は食ったから、もうしばらくは物を口にしたくない。だから、おとなしく影の中に入ろうとしたら、何故かユーナに睨まれたから、外でレジャンと、のんびりと待機している。
にしても、メノゥも強いとは思ったが、レジャンも中々のようだ。気配を消すのが、とてもうまい。
気配って、ただ消せばいいかっていうと、そうでもないのだ。無さ過ぎても不自然になってしまうから、周りに溶け込むように気配を消すのが、一番見つかり難い。
あれだ、要の話、路肩に落ちている小石と同じ存在になる、みたいな。
まぁ、とにかく俺達が気配を消しているので、客が普通に入っていく。さすがに商売の邪魔はしない。
そんな俺の元へ、何故か幼子が寄ってきた。目をキラキラとさせて、たどたどしい歩き方で、真っ直ぐ俺の元へと向かってくる。
……ええ、と。俺、気配を消している筈なんだけど。なんで、カナンといい、この幼子といい、俺の存在をこうも容易く捉えられる奴がいるのかな…?
あ、そういえば。前世の頃で、こんな話を聞いた事がある。
小さい子供なんかは、大人と違って、他人との境界が確立されていない為、幽霊などの、普通見えないものが見える、という話だ。
でも、確かにそうだよね。大人だったら、路肩に小石が落ちていても、視界に入った所で意識する事はないけど、小さい子供はそれにも興味を持つ。だから、普通の人では見えない……いや、無視してしまうようなものでも、小さい子供は気付く事ができるのかもしれない。
そういえば、俺の妹も、路肩に落ちている小石を拾っては、なんだかんだ言っていた気がする。そうか、あいつの脳みそは、幼児以下だったんだな。その割には、物凄い成績良かったけど。
「まっくろ!」
そんな事を考えていたら、その幼子が、俺の翼を掴みながら、そう言っていた。
「そうだな、真っ黒だな。
……おいおい、親はどこにいるんだよ。」
「ふわふわ!」
「うんうん、そんなに気に入ったか、それは重畳。
……こんな幼い子供から目を離すなよ。どうでもいいけど、怪我したらどうするんだ?」
幼子が言う言葉にいちいち反応しながら、そう呟く俺。周りを見渡してみるが、親らしき人間は見えない。
はぁ、面倒くさい。だけど、子供に罪はないのだ。仕方がない。
俺は、俺の翼を掴みながら、きゃっきゃと喜ぶ幼子に、翼から、ぷつっと羽根を一枚抜き、幼子のその手に握らせた。
「ふわぁ~~!」
真っ黒な羽根を両手で持ちながら、目をキラキラさせる幼子。お気に召したようで、何よりである。
「それは、お守りだ。『悪いもの』から、持ち主を遠ざけてくれる。
だから、もう帰りなさい。お前には、お前を待ってくれる、家族がいるだろう?」
俺の言葉に、キョトンとした顔をする幼子。
―――別に、分からなくてもいい。
「帰る場所があるっていうのは、幸せな事だ。
おかえり、そう言ってもらえる事は、とても幸せな事なんだぞ?」
―――覚えてもらわなくても、構わない。
「だから、ほら。俺みたいな嫌われ者に構わないで、お前はお前の生きたいように行きなさい。」
―――それでも、もし。この事を思い出す事があるならば。
「世界は残酷だ。だけど、俺みたいには、なるなよ。純粋で、無垢な、真っ白な子よ。」
―――いかに自分が恵まれているか。それを、実感してほしい。そして、そんな環境に感謝すればいい。
多分、この幼子は、俺の言っている言葉の意味など、一つも分かっていないだろう。それでも、幼子は無邪気な笑顔で、「うん!」と頷くと、そのままどこかへ走り去っていった。
あの羽根は、俺の分身みたいなものだ。ずっと、迫りくる『悪いもの』から避け続けてきた、俺の分身。
そんな俺の羽根に、軽く魔術をかけておいたのだ。かけたのは、闇の魔術。『悪いもの』を感知して、それを遠ざける魔術。
闇、というと、何かしら悪影響を及ぼすイメージがあるけど、こういう事にも応用できるのだ。
きっと、あの子なら、一人でも帰れるに違いない。あの羽根が、導いてくれる筈だ。
……まぁ、そう言っても、本当に軽くしかかけていないから、お守り程度だろうけど。無いよりはましだろう。
俺にとって、カナンとユーナが幸せであってくれるのならば、他の事などどうでもいい。
でも、偶にはこんな事もありだろう。おまけって奴だ。
ふと、空を仰ぎ見ると、雲一つ無い快晴の青空があった。
幼子の相手という面倒事があった筈なのに、何故か、俺の心も、この青空のように、すっきりとしていた。
その事が、どこか不思議で。
だけども、悪くはないその感覚に身を任せ、俺はゆっくりと目を閉じた。
『悪意』のない子供には優しいコドク。
コドクの言っている事が矛盾しています(笑)
容赦がないだけで、本当は優しい性格なのかもしれませんね。




