23 素直になれない火の小鳥
3話連続投稿。1話目。
今回は、ユーナ視点スタート。
あの、メノゥとかっていう、お婆さん。
コドクが強いって言っているけど、全然そう見えない。
だって、感じ取れる気配も、魔力も、そう大きく見えないもの。
そう思ってコドクに聞いてみたら、力をどう使いこなすかが重要みたい。
……分かっているわよ。
力があればいい、というものでは無いって事くらい、私にも分かってる。
…はあ、駄目ね、私。どうやっても、素直になれない。
でも、いいわよね。相手はコドクだもの。
カナンの我儘も受け入れてくれるんだから、私のこういう所だって、受け入れてくれるわよね?
そんなコドクは、今、レジャンから「調律者」なる者についての説明を聞いている。
話を聞いてみると、どうやら、世界の地脈に干渉して、そのバランスを整える事ができる、貴重な存在みたい。
それで、レジャンは、コドクにこの世界の歪みを直してもらいたいようね。
でも、きっとコドクの事だから、私達の為にならないような事だったら、「どうでもいい」って言いそう。
コドクって、なんて言うか、「自分の為にやりたい事」っていうのが、あまりないのよね。中心にあるのが自分じゃなくて、私達だから。
……そのせいで、とても照れくさくなるから、余計私は素直になれないのよ。コドクのばーか。
そんな事を思っていると、調律者の説明をしていたレジャンが、こう締めくくった。
「―――だから、お前はこの世界を整える義務があるのだ。そこの娘との契約を破棄せよ、とは言わぬが、お前は」
「あの、さ。」
「……なんだ?」
コドクが、苦笑を浮かべながら、レジャンの言葉を遮る。
やっぱり、レジャンはそうくるのね。でも……
「どうでもいいんだよね、そういうの。世界がどうとか、そういう義務とか。」
ほら、やっぱり。
「この世界に、俺を受け入れてもらった恩はあるけど、それだけなんだよ。
俺はな、カナンやユーナが、幸せに生きてもらえれば、それで満足なんだ。わざわざ、世界がどうとか、義務があるとか、そんなのは本当にどうでもいいんだよ。
だから、そういった役割とか、義務なんかは、今は邪魔でしかないから、他の奴らに任せるよ。貴重ってだけで、いない訳ではないんだろう?」
「それは、そうだが……。」
「だったらいいじゃん。世界を調整する暇があるなら、カナンとユーナを鍛えたり、愛でたりする時間に使うよ。
……どうやって愛でればいいか、分からないけどな!」
そう言って、笑い出すコドク。
……。
な、何よあいつ!本人を目の前に、なんて恥ずかしくなるような事を言っているのよ!!
隣にいるカナンも、真っ赤になっているじゃない!
「……えへへ…」
え、なんか嬉しそう!?
くぅ、やっぱりコドクのせいだわ!あのロリコンめ!
……でも、カナンもきっと、不安なのよね。私と契約したばっかりに、今まで信じていた家族に、裏切られたんだから……。
きっとカナンは、コドクに、父親や兄みたいな、無条件で受け入れてくれる、頼りになる存在を求めている。そして、コドクはそれを満たしてしまっている。
前に、カナンが悲しそうに言っていた。昔は、お兄ちゃんもお姉ちゃんも優しかったのに、お父さんのせいで変わってしまったって。
カナンは、寂しいのね。今までいた、遠慮なく甘えられる存在がいなくなってしまったから。
だからこそ、思ってしまうの。私に、力があれば……こんな事には、ならなかったのにって。
カナンは、私と契約して、後悔していないって、前に言っていたけれど。私の中にある罪悪感や、焦り、自分に対する怒りは消えていかない。
ねぇ、カナン。
私は、あなたに何もできない私は。
あなたの友達でいて、いいのかな……?
「おーい、ユーナ?そんな暗い顔をして、どうした?」
そんな事を思っていたせいか、コドクが近づいてきている事に、私は気が付かなかった。
ハッとして顔を上げると、コドクの、心配そうな感情を浮かべた、金色の瞳が、目の前にあった。
「なっ、何もないわよ!!って、近いから離れて、このロリコン!」
「いや、だから何故ロリコンが出てくるんだ……」
思わず、飛び上がって離れる私に、それでも心配そうな表情を隠さないコドク。
心配してもらえて嬉しいのに、私の口からは、真逆の言葉が出てくる。本当、素直じゃないわ……。
そんな私に、コドクは尾羽を地面にぺたっと伏せながら(あんたは犬か)、心配そうに口を開いた。
「いや、でも、なんか思い詰めたような雰囲気だったぞ。大丈夫か?どこか、痛いのか?」
心配でたまらないのか、辺りをウロウロしながらそう言うコドク。
こら、やめなさい!なんか、身内が恥さらししているような、そんな恥ずかしさがこみ上げてくるから!
でもやっぱり素直になれなくて、なんとも言えないでいると、途端にコドクの目が座った。
え?今度は何よ?
「……もしかして、また、こいつらが何か言ったのか……?」
そう言いながら、コドクが殺気を出し始める。少し開いた嘴から、鋭利な牙が太陽の光を弾いて滑らかに光った。
周りで様子を伺っていた人間が、殺気を向けられて、さぁっと青くなった。
すると、あの、メノゥとかっていうお婆さ……あれ!?なんか若返ってる!?
もしかして、コドクが霊脈を調整したの!?いつの間に……。
とにかく、そのメノゥがコドクを宥め始めた。
「これこれ、そう、かっかなさんな。皆は何も言っとらんよ。」
なんか、声に張りがあるわね。さっきまでのしわがれた声を聞いていた私としては、なんか微妙な気分だわ。
……ああいや、よく見てみれば、レジャンも、カナンも、私と同じような表情をしているわね。コドクも思う所があったのか、黙り込んじゃったし。
はぁ。本当、コドクって馬鹿な奴。カナンにやった時に、懲りてやめないから、こうなるのよ。
でも、コドクのこういう馬鹿な所を見ていると、なんだかほっとするのも、また事実なのよね。
……もうっ!コドクがこんなのだから、私も正直になれないのよ!ばーか。コドクの、ばーか!
………………本当、馬鹿なんだから……。
こんなんでも、ユーナはコドクに対して恋愛感情は抱いておりません。
せいぜい、「頼りにはなるけど、格好悪い友達」くらいですかね?




