朝の出発と、、、
第2話です。
三兄弟が田舎へ向かいます。
――土曜日の朝。
「起きなさい、もう時間よ」
母の声が、少しだけ遠くに聞こえる。
「……んー……」
陽斗は布団の中で顔をしかめた。まだ眠気が重く残っている。目を開けても、頭がついてこない。
「6時に出るって言ったでしょ」
カーテンが開けられ、朝の光が差し込んだ。まぶしさに思わず目を細める。
「はや……」
ぼそっとつぶやく。
その横で、美月はもう起きていた。
「いく!?もういく!?」
布団の上でぴょんと跳ねる。
「まだ準備してから」
母が軽く笑う。
結衣はすでに着替え終わっていて、静かに部屋を出ていった。
「顔洗ってきなさい」
「……はーい」
重い体を引きずるように起こし、陽斗はゆっくりと立ち上がった。
――準備はあっという間に進んだ。
歯磨きの音。水の流れる音。
キッチンでは、軽くパンを焼く匂いが広がっている。
「早く食べて」
「食欲ねえ……」
そう言いながらも、口にパンを運ぶ。
美月はすでに食べ終わりそうな勢いだった。
「おまつり!おまつり!」
「まだ行かないから」
結衣が冷静に言う。
「でもいくでしょ!」
「行くけど」
短いやり取りのあと、また少しだけ慌ただしさが戻る。
――やがて。
「じゃあ、行くわよ」
玄関のドアが開く。
外の空気は、思っていたよりひんやりしていた。朝の匂いがする。まだ人の気配も少なく、街全体が静かに目を覚ましかけている。
「さむ……」
陽斗は腕をさする。
車に乗り込むと、シートの冷たさが背中に伝わった。
父がエンジンをかける。
「忘れ物ないな?」
「たぶん」
母が確認する。
車はゆっくりと動き出した。
――最初は、見慣れた景色だった。
コンビニ。信号。朝の少ない車。
美月は窓に顔を近づけている。
「まだー?」
「まだよ」
母が笑う。
陽斗はシートに沈み込み、ぼんやりと外を見ていた。
(ねむ……)
頭の奥に、まだ夢の残りが引っかかっている気がする。
「……」
ふと、窓の外に目をやる。
道路の脇。
小さな草むら。
――虫が、集まっていた。
一か所に、固まるように。
「……?」
ほんの一瞬、違和感が走る。
でも次の瞬間、車は通り過ぎていた。
「……気のせいか」
小さくつぶやき、再びシートに体を預ける。
車は、少しずつ街を離れていく。
建物が減り、代わりに緑が増えていく。
空が、広くなる。
「すごーい!」
美月が声を上げる。
遠くに、田んぼが見え始めていた。
まだ、着いてはいない。
けれど――
いつもとは違う場所に向かっていることだけは、はっきりと分かった。
読んでいただきありがとうございます!
少しずつですが、違和感が出てきました。
次はいよいよ田舎に到着します。
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