第六話「アイリス」
ある配信画面に一人の配信者が映し出された
「こんにちはー!アイリスだよー!いえーへぇい…www」
「うおおおおおお」
「アイリスたーん!」
「ゴクゴクゴクゴクゴクゴク」
アイリスと名乗る配信者は
挨拶を交わすと何気ないトークで
視聴者の笑いを誘った
「アイリスたん今日もかわいいなぁ
コウタくんもいいけど
アイリスたんもサイコーだよぉ!!」
ベッドに寝そべり、傾けたスマホを眺めるのは
白ギャルだった
「推し活…それは推しを愛でると言うこと」
白ギャルは頭の中で語り出した
「気になる人を自分のお気に入りにして応援する文化、それが推し活
私には現在、二人の推しがいる」
「一人目は言わずもがなコウタくん
佐々木財閥の御曹司で頭脳明晰、顔面偏差値無限大、なんでもできる天才」
「大切なのは性格や中身という概念をぶち壊し、付き合いたい男ランキングを破滅へと導いた
お金持ちの息子という肩書だけじゃなく本人スペックも超高い、まさに女子が理想とする男No.1の男!!」
「もう一人が今私がスマホで眺めているこの子、アイリスたん
動画配信を中心に活動するインフルエンサーで
その可愛らしい声とルックスが話題を呼ぶ人気配信者だ」
「大人しめな印象とは裏腹に
時折見せる毒や無自覚なノンデリ発言のギャップが視聴者の心を鷲掴みにする」
「しかし、なにより注目すべきなのが
その性別、この子が実は男であると言う
ことだ」
白ギャルは鼻息を荒くさせた
「こんなにカワイイのに実は男であるという事実……私のハートは完全に射抜かれてしまった」
「かの著名な哲学者も
「革命は些細なことではない、しかし些細なことから起こる」と言ったが
まさにそれを体現した場面に遭遇したと言えるだろう」
「私は非常に彼の虜になっている!」
「アイリスたんを見るたびに心の汚れが浄化され、私の中に眠るオスが呼び覚まされる」
「私にも付いていたのだオスのシンボルが!!
そしてアイリスたんにもついてるはずだ
メスの穴が!!」
白ギャルはそう語ると一人ベッドの上でニヤついたーーー。
「昨日のアイリスたんの配信、すごく楽しかったなー、次の配信も楽しみー♪」
次の日、白ギャルが上機嫌で教室へ向かっていると廊下で男子と肩がぶつかった
「痛ったぁ、どこ見て歩いて…げっ!?」
そこにいたのは地味男こと倉田義和だった
「じ、地味男…!?え、ウソ!!サイアクなんだけど!!」
白ギャルは驚いてぶつかった部分を触れずに服を引っ張るように触った
「サイアクだよ〜、これ替えないのに〜…」
「ご、ごめん…」
「ちょ、話しかけないでキモいから」
「……」
「マジ無理なんだけど〜…ちんたら歩くなよ〜…もー…」
白ギャルは舌打ちをしながらトボトボと教室へと入っていった
「まじサイアク〜」
放課後、帰宅した白ギャルは
服にハンガーを通し、壁にかけて
肩の部分にファ〇リーズを吹きかけていた
「どうしたん、そんなファ〇リーズかけて…」
「今日キモい奴に肩ぶつけられて〜」
「男の子?お父さんに言って殴ってもらおうか?」
「いいよ別に、そこまでしなくて」
母親とやり取りを交わした次の日、白ギャルは友達に愚痴をこぼしていた
「廊下歩いてたら地味男とぶつかってー」
「えー、それ絶対変なウィルスついてんじゃん」
「ホントだよー、まじサイアク!!(アイリスたんいなかったらずっと寝込んでたよ…)」
「性病とかになったらマジ洒落になんないんだけどー」
「ホント迷惑だよねー」
「もーマジ死ねよキモ男がよぉー…」
教室から聞こえてくる声に倉田は「はぁ…」とため息をこぼした
「もうまじサイアクだわー
帰ってアイリスたんに慰めてもらおっと」
放課後、白ギャルは愚痴をこぼしつつ
アイリスの配信を楽しみにまっすぐ自宅へと帰宅した
「ただいま」
「おかえり義和、どうだった?」
倉田が帰宅すると
エプロンをかけた母親が出迎えてくれた
「うん、楽しかったよ…」
「ふふ、そう、あなたがクラスの子と馴染めてお母さんホッとしてるわ。いい学校に進学できたわね!」
「うん……」
倉田は母親にぎこちない笑みを見せると2階に上がり、部屋の電気をつけてノートパソコンを開いた
ベッドの下にある衣類を引っ張り出して
着ている服を脱ぎだし、ぶかぶかなピンクのニット服と、青いスカートを履き、紫のロングなカツラを頭に装着し、さくらんぼの付いた紐で左右の髪を結びツインテールを作るとPCの電源をオンにした
「ん"ん"」
倉田は小さな咳払いをしたあと、動画ソフトを起動してライブ配信に切り替え、いつもより高い声で喋った
「どうもー!アイリスだよー!」
倉田が挨拶をすると
配信画面にはたくさんの歓迎コメントで溢れたーーーー。




