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2.ドタキャン1

「またですか?」


「申し訳ございません」


「これで何度目でしょう?」


「お恥ずかしい限りです」


 オーファンラスター公爵家の執事が頭を深く下げ、私に謝罪をしています。


「当日にキャンセルなんて、普通では考えられませんわ」


「本当に面目ないことでございます」


「もう、いいですわ。頭を上げてくださいな」


 今日はオーファンラスター公爵家でお茶会の日だったのです。

 だからこそ、こうして公爵邸に来たというのに。本人が不在とは……。

 執事の話では、ほんの数分前までは居たそうですが。今いなければ話になりません。そもそもキャンセルにするなら事前に連絡するべきではないかしら。ああ、違いますわね。執事の言う通り、ほんの数分前までは私と茶会を開く予定だったのでしょう。


「それで、今日はどのような理由なのかしら?お教えいただいても?」


「はい、王女殿下に呼ばれまして」


「王女殿下のお見舞いでしょうか?」


「はい」


「王女殿下が体調を崩されていることは存じております。フリッド様が四日前にお見舞いに参上されたことも」


「はい、その通りです」


「体調も落ち着いていると、フリッド様からお聞きしていましたわ」


「はい、それが今日、急に体調を崩されたらしく……」


「それは大変ですわね」


「お恥ずかしい限りでございます」


 執事も王女殿下の意図を理解しているのでしょう。

 フリッド様の四日前の王女殿下のお見舞い。その件もありますからね。


 四日前、フリッド様は王女殿下のお見舞いに王宮に参上していました。

 それ自体は特に問題はなかったのです。

 私もフリッド様から見舞いの件については連絡を貰って知っていましたもの。

 けれど、問題が発生しました。


『どういうことですの?』


『申し訳ございません』


『王女殿下へのお見舞いについては、私もお聞きしております。ただ、見舞いは午前中と伺っていましたわ』


『はい、仰る通りです』


『それが午後になっても戻らない理由はなんでしょうか?まさかとは思いますが、王女殿下の御容態が悪化したとでも?』


『いえ、そのようなことはございません。ただ、王女殿下から是非とも傍にいて欲しいと頼まれたようでして……』


 言いにくそうな執事の様子に察するものがありました。 

 わざと引き留めた可能性が浮上しましたわ。もしかしたら、とは思いましたが。午後から私とフリッド様が観劇に出かけることを王女殿下が知ってしまったのでしょう。フリッド様がうっかり話してしまったのかもしれませんが、とにかく王女殿下はそれが気に食わなかったのでしょう。


『まあ!仲がよろしいのですね。確かお二人は幼馴染でしたわね。昔からこうですの?フリッド様は王女殿下に随分と甘いようですし』


『は、はい。幼少の頃からずっと、ご一緒でしたので……。王女殿下もフリッド様を兄のように慕っておいでで……』


 兄妹のように仲が良いと。

 幼少期から抜けきらないと、言いたのかも知れませんが、そんなもの私には関係ありません。


『それは羨ましい限りですわ。成人した今でも二(・)人(・)っ(・)き(・)り(・)で(・)過(・)ご(・)す(・)ほどの仲だなんて、余程信頼されている証拠ですもの』


『……恐縮でございます』


 そこは否定しておくところでしょう。

 この執事も何だかんだと、二人の関係性について麻痺しているのかもしれませんわね。

 それとも幼少期から見守っていた「若様(フリッド)」が過ちを犯すことはない、という信頼でしょうか?

 小さい子供ではないのですよ?

 成人した男女が二人っきりで過ごしている、なんて……。そのことを否定しないなんて……。

 ちょっとした意趣返しのつもりでカマをかけただけですのに。

 私の方が返答に困りますわよ。


『まあ、いいですわ。これからは気を付けてください』


 それ以外に言いようがありませんでしたわ。

 フリッド様の代わりに謝罪に訪れた執事をさっさと帰って頂きました。

 長居されても困りますもの。

 その後、侍女をつれて観劇に出かけましたわ。だって予約していましたもの。無駄にしてはいけませんでしょう?だってこれが初めてではないんですもの。嫌な言い方になりますが「慣れ」です。そう、こういうことに私は慣れてしまったのです。

 



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