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勇者ですが何か?  作者: マイケヌ・ハクション
第1章ー勇者と女騎士ー
26/38

勇者ですが何か?(26)少女達は立ち向かう

「うわあぁぁぁぁぁ!!」


 アーシャはインバスへと突っ込み、勢い良く剣を振り下ろす。

 インバスは特になんともないような顔で剣を構え、アーシャの剣を防ぐ。


「っ!」


 アーシャの剣は確かに鋭く重かった。 しかしどんなに鋭い攻撃でも模造剣・・・なのだ。切れ味など無いに等しく、訓練用に作られたその剣では、切るために作られた剣には勝てない。


 折れては無いが、さっきまでのチーム戦で消耗していた模造剣はインバスの剣とぶつかった事で大きなヒビを作っていた。


「おいおい、そんなんじゃ本当にお前も逝っちまいそうだな」


 インバスはそう言いながら短刀をアーシャへと突き出す。

 それを避けたアーシャは距離を取ろうとするが、そうはさせまいとインバスは近づいてくる。


「逃げるなよ、遊ぼうぜ?」


「っ、来るな!」


 そう言って振り回した模造剣をがっしりと掴むインバス。アーシャは振りほどこうともがくのだが、ガッチリと捕まれビクともしない。


「まず一人っと」


 アーシャめがけて剣を伸ばすインバス。アーシャの顔にも絶望で溢れていた。


「ーーさせないっ!」


 インバスの剣はアーシャではなく空を向いていた。


「あっ?」


 二人の間に入るように青いポニーテールを揺らすアイリーンが立っていた。


「アイリーン!」


 アーシャに剣が届く寸前に、アイリーンはなんとか追いつき、力の限り剣を下から上へと振り上げたのだった。

 自分の腕が上を向いていることに一瞬、どうなっているのか理解できずに固まるインバス。厳つい身体をした自分が、少女の振り上げた力に押し負けたと言う事実に、戸惑いを隠せないでいた。


「……嬢ちゃんやるなぁ」


 だがすぐに冷静さを取り戻したインバスはアイリーンめがけて剣を振る。今度は力の限り。


「くうっ!?」


 その剣を受け止めたアイリーンはそのまま吹っ飛ばされる。そのまま転がるようにして倒れたアイリーンは気を失っていた。


「アイリーンッ! くそ野郎!」


 アーシャは剣から手を離して深く腰を下げ、インバスの膝裏めがけて足を振る。


「うおっと!」


 カクリとバランスを崩したインバスの顔めがけて、一振りの模造剣が襲いかかる。


「っ!!」


 鈍い音とともに、インバスの顔面を直撃した模造剣の持ち主はレベッカであった。

 顔面にまともに模造剣を喰らい、後ろに倒れるインバスを息切れしながらレベッカは睨んだ。


「これ以上の行為はフランチェルズの家名にかけて許さないわ!」


「レベッカ、ナイス!」


 アーシャと並びレベッカは倒れているインバスに剣を向ける。


「潔く投降しなさい、あなたの負けよ」


 だがインバスは、よっと飛び起きてから、模造剣を喰らって切った口から唾を吐くように血を吐いた。


「……やるじゃねぇか、痛かったぞ?」


 インバスはそのまま首をコキコキと鳴らし


「オラァァァアッ!」


 激しい剣幕で怒声を放つ。その怒声にレベッカはビクリと肩を揺らして模造剣を落としてしまう。


「あっ……!」


 落とした剣を拾うよりも早くレベッカの腹部にインバスの大きな拳がのめり込む。


「がっ……はっ!」


 レベッカは大きく吹っ飛び、くの字で倒れる。相当の痛みに顔を歪ませ、目からは涙が溢れていた。


「レベッ……ガァッ!」


 吹っ飛んだレベッカの名を叫ぶや否や、髪を掴まれて地面に叩きつけられる。


「うあぁ……!」


 アーシャはなんとか振りほどこうともがくがインバスはビクともせずにそのままアーシャの顔面を剣を持った腕で殴りつける。


「どうだ? 痛ぇだろ? あん? お前らには仕置きが必要みたいだからなぁ……たっぷりと味あわせて殺してやることにする!」


「あぁっ! っ! 痛っ、やめ……っ!」


 ゴッ、ゴッ、と鈍い音を立てながら何度も殴るインバス。抵抗も虚しく殴られて次第に抵抗も弱くなっていくアーシャ。


 倒れているレベッカもまた、か細い声でアーシャの名を呼ぶことしかできず、身体を震わせている。


「まだ死ぬんじゃねぇぞ! もっと苦しんで死ねっ!」


 他の少女たちは教官や警備兵を呼びに行きまだ戻ってきていない。遠くでは黒煙が空へと昇っていき、人々のざわざわとした声も聞こえる。


 気づけば空には黒煙が変化したかのような雲が太陽を隠し、曇天へと変わっていた。

 そしてポツポツと小さな粒の雨が落ちてくる。


「……ぅ……ぁ」


 アーシャの反応は小さく鈍くなっていた。


「ひどい有様だなぁ! まだ生きてるかぁ?」


 インバスは声を上げて笑う。


 レベッカは必死に起き上がろうとするも、恐怖と痛みで起き上がれないでいた。


「アーシャ……」


 力なく声を出したレベッカ、だがレベッカの目に一人の少女が立ち上がる姿が見えた。


「ハァ……ハァ……」


 アイリーンである。気絶していたアイリーンがゆっくりと起き上がったのだ。その手にはしっかりと模造剣を持っていた。その目は怒りで燃えていた。


 アイリーンは友を殴り続けている男の元に、一歩ずつ、そしてまっすぐに向かっていく。

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