第6話
■■透■■
「ぶっわかもーーーんっ!!」
職員室に響く叫び声。
うるせぇよ、じじい。
「ゲリラライブだぁ!?一体、何を考えているんだ!?お前らはっ!?沙田、お前まで一緒になって…」
結局、俺達は2曲しか演奏できなかった。3曲目に入ろうとしたら、今俺達に説教垂れてる生活指導の谷口がやって来て、ライヴを中止させられた。
そして、今に至る。
「いいじゃねーっすか?盛り上がっていたんだから!」
「ちょっと先生!?彩だけ贔屓する気っ!?」
「このたわけっ!!近隣の住民から騒音のクレームがきてるんだぞ!?おまけにPTAの耳に入っているんだぞ!?どうしてくれるんだ!?えぇっ!!?」
俺と舞の、言葉に耳を貸さず怒鳴りつける。
「焼け石に水だったな」
宗次郎がぼやいた。
「とにかく、お前達は1週間の停学処分だ!今後バンド活動したいなら、その間大人しくしていろよ!分かったな!ほら、もう行け!」
「へいへーい」
谷口に鬱陶しそうに追い払われ、俺達は職員室を出た。
職員室を出たあと、音楽室へと向かった。
そして音楽室にたどり着きドアを開ける。
「あら?早かったわね!」
中には蒼山奏が居た。言葉とは反対に待ちくたびれたという感じで言った。
「雪村透、あなたのバンドへヴォーカルとして加入の件…」
「あ!そういや、そうだった…。リベンジかましてたんだった!」
「あんたねぇ、忘れるんじゃないわよっ!目的はそれでしょうがっ!?」
「すまん、舞!俺も途中から忘れてた。……というか、どうでもよくなった」
「そうだね。私も楽しむ優先しちゃってた」
「あ、彩までっ!?」
悪いな舞、こればっかりはお前がアウェイになると思う。
そして、蒼山奏。わざわざここに来たって事は…。
「バンド加入の件、承諾したわ」
その言葉を聞いた瞬間、俺達は歓喜の声を上げた。
「それから雪村透!」
「あん?」
どうでもいいが、いちいちフルネームで呼ぶな。
「あの曲、2番目にやった曲。ソロパートを正式にいれなさい!」
「は?」
「それが条件ね!」
「いや…でもよ…」
「出来ないの?」
やれやれ、こんなものも出来ないの?といった表情だった。
…は、腹立つぅぅっ!何か腹立つ。
俺は地団駄を踏んだ。
「透、乗せられてるぞ」
「乗せられてるね」
「乗せられてるわね」
宗次郎、彩ちゃん、舞からの3連ダメ出しを貰った。
でも、ここまで言われちゃ俺も引き返せない。幸い、どうやって弾いてたかも覚えてはいるし…。
「やってやるよ!吠え面かくんじゃねぇぞ!?」
言い終えると同時に、パシィンと小気味良い音が響いた。
強烈なビンタである。
「何かムカついたから、1発お仕置きよ」
…こ、…この女……。
かくして、俺達はようやくスタートラインに立った。
■■舞■■
「気にいらない、気にいらないわ!」
会長が突然そう言った。
停学処分を終えた1週間後。私達はファミレスに集まっていた。
バンド名を決めるという、名目お喋りタイムだ。
透はこの1週間で、会長に言われた通りRe:startのソロを作り上げて来た。
そんな暇あるなら、バンド名の一つでも考えて来なさいよ、このアホんだら!
いい加減、決めないとチケット作れないのよ!
…という文句を垂れ、今に至る。
「透、あなた」
「あ?俺かよっ!?」
会長は透の何かがお気に召さないみたいだ。
「宗次郎、舞とは幼馴染みだから別としといて…。この際、タメ口は許してあげるわ!けれどね、私の事を呼び捨てで、彩の事は何でちゃん付けなのかしら?」
……会長…、そこ今触れなくても良くないですか?
「ん〜、何となくフィーリング?」
パシィンと小気味良い音がレストランに響いた。会長のビンタである。
会長…、他のお客さんも居るから。
「彩の事も呼び捨てなさい!そうしなさい。それで、私達は大きく一歩前進するわ!」
「何言ってんだ?お前、馬鹿じゃね?」
パシィンと再び、ビンタが炸裂。透、あんた少しは学習しなさいよ!
彩ぁ、助け船を出してあげたら?
そういう視線を送ってみた。
「透くん、私は別に呼び捨てでも構わないよ!私だけちゃん付けされてるのも、何かやりにくいし…」
私の視線に気づいた彩が発言した。
「ほら!本人もそう言っている事だし、呼び捨てなさい!今直ぐに呼び捨てなさい!」
「だぁー、分かったよ!んじゃあ、これからは呼び捨てるから、宜しくな、彩!」
「うん!こちらこそよろしく」
どことなく照れている2人に、会長は若干不満気ではあった。ジローちゃんは無関心。
しかし、そんな事は最早どうでもいい。
ドンとテーブルを叩き言う。
「バンド名!バ・ン・ド・め・いっ!!」
全員が無言で私に注目した。
「舞、落ち着いて!ちゃんと決めるから、ね?」
彩ぁ!やっぱり私の味方は彩だけだよぉ!!
「それで、何か候補はあるのかしら?」
「ダーク・レイヴン・スカイ」
会長の発言の後に透が即答した。
何だ、ちゃんと考えて来てるんじゃない!……じゃなくて、何処の中二病だ、あんたはっ!?
「ダサいわ」
「あぁんっ!?」
「次、宗次郎!」
「こんなの適当で良いですよ!炸裂ビンタで!」
ジローちゃん、それ会長のビンタの事だよね!?
「男性陣はダメね!彩は?」
「えっ?えっと…、ピンクスカーレット」
何か恥ずかしかったのか、彩は顔を赤くしながら言った。
「男性陣よりかはマシね!けれど私達のイメージに合ってはないんじゃないかしら?」
「あはは。やっぱり」
「次、舞!」
「は?わ、私っ!?」
……な、何も考えてなかった…。ど、どうしよう!?
「……。舞と愉快なバンド達」
「却下!」
小さく答えたが、皆同時に否定した。
何で、こういう時だけ連携が取れるのよ!?
その後も、私達はあーでもない、こーでもないと言い合いをした。
「はぁ…。疲れる、特に透!あなたと話していると本当に疲れるわ!」
「俺もお前と話してると疲れるよ、ヘボ会長」
「ムカつくぅぅ、ムカつくわっ!!」
「奏さんも透くんも、もうディスり合わないで!」
「そうね!」
「ああ。何か俺達、ディスり合ってばっかだな」
「仲が良い事で何よりだ!」
「良くねえよ!こんな女」
「良くないわよ!こんな男」
「もぉ〜、2人供っ!言ったそばから!」
「……ごめんなさい!」
見事にハモってるし。
私はそのやり取りを眺めながら、ドリンクを飲み頭を冷やしていた!
ん?あれ…!?
「彩っ!透っ!2人とも今、何て言った!?」
「えっ!?もぉ〜、2人供言ったそばから…?」
「その前!」
「えっと…、ディスり合わないで…?」
「あー…、ディスり合ってばっかだな…?」
「それよ!それっ!!ピッタリじゃないっ!?」
「???」
皆、ピンと来てないみたいだった。
私はノートとペンを出し、文字にして書いた!
ディスり合い。
それを今度はカタカナで分けて書く。
ディス リ アイ。
更に繋げ今度は繋げて書く。
ディスリアイ。
特にバンドのフロントマンである、透と会長を象徴するかのような名前。これ程、しっくりくるものはないだろう!
「確かにピッタリだな!」
「最後にズを付けてみたらどうかな?」
と、ジローちゃんと彩。2人は気に入ったようだ!
「……」
透と会長は、見つめ合い?いや、睨み合い?ともかく、無言で見合っていた。
「ぷっ……」
どちらかともなく吹き出した。そして、2人して笑い合っていた。
「俺達、こんなくだらない事で、ディスり合ってんだもんなぁ!」
「そうね!これ以上のものはないわ!あと少しは教訓にもなるかしら?」
透も会長も不満はないようだ!決まり!彩の意見も採用して、バンド名は…。
ディスリアイズ。
■■彩■■
階段を上っていたら、透くんを見掛けた。
透くんは1人じゃなく、男子生徒と居た。
そりゃ、透くんだって舞とジローくん以外に、友達もいれば話だってするだろうけど。
でも、相手の男子生徒は透くんに対して敵意みたいなものを抱いている。その感じがひしひしと伝わってる。
どうしよう?声を掛けるタイミング外した。気にせず足を進めればいいんだけど、何故かそのまま立ち尽くしてしまった。
これじゃあ、盗み見聞きしてるみたいじゃない!?私にそんな趣味は決してないよ?
心の中で、自分にそう言い聞かせる。
「おい!雪村!!この間のライヴで注目集めたからって、調子に乗んなよ!?あんな奇襲、誰がやっても注目される!!」
「ん?ああ、今度サードアイでライヴやっから、良かったら来いよ!ほれチケットやるから!」
透くん、会話噛み合ってないよ!
「行かねぇし、いらねぇよ!」
「そう言うなよ、遠慮せず彼女の1人や2人連れて、ほれ!ほれ!」
……無理矢理押し付けてるぅぅっ!?あと、彼女の1人や2人って、2人も居たらおかしいでしょ!?
「分かった!分かったっつうの!!行ってやるから。……幾らだ?」
「んぁ?いいよ、やるって言ったべさ」
「………。ちっ」
男子生徒は少し考える素振りを見せ、舌打ちをし、乱暴にチケットを受け取り何処かへ行った。
「透くん!」
今度こそはと、タイミングを逃さずに声を掛けた。透くんは、私の声に反応しこちらへと振り返った。
「今のって?」
「ああ、見てた?」
「う、うん!ごめん」
「ほら!前に舞が言っていた、えーと…」
謝罪はスルーされた!気にしてないって事だろうか?透くんって、未だに分かり難い所あるんだよなぁ。
「えっと…、確か…佐久間くん?」
「ああ!そうそう、それそれ!」
舞が言うには、透くんの事をライバル意識しているって話だったけど。成る程、私がさっき感じた、敵意みたいなものはそれか。
「チケット押しつ…じゃなくて、渡してたね。来てくれるかな?」
「ん〜、どうだろな!」
「来てくれると良いね!」
「そだな!」
素っ気なく答えてはいたものの、どこか嬉しそうだった。
私もチケット捌かなきゃなぁ!いくら、サードアイがノルマ制度じゃないとはいえ、全く売らないって訳にはいかないし。
いよしっ!
「ライヴまで、あともう少しだけど頑張ろうね!」
「当然!!」
透くんは不敵に笑いながら言った。
……そして、瞬く間に日は過ぎていき。
「いよいよだね!」
「今回は、邪魔の入る心配もないしな!」
「あら?透、ゲリラライヴ邪魔されると思ってたの?」
「いや、別に」
「どちらにせよ、思いっきりやれる」
「ええ!暴れるわよ!!」
私達ディスリアイズの、初ライヴの本番の日を迎えました。




