表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
唐揚げと宇宙人  作者: 綾瀬 灯


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/5

プロローグ

「宇宙を救うヒーローの条件其の一。常人には理解できない孤独を抱えていること」


徹夜明けの頭でノートPCにそんなモノローグを打ち込み、深い溜息をついた。売れないSF漫画を描き続けて五年。僕の抱える孤独ときたら、家賃の引き落とし日に怯えるフリーターのそれでしかない。


狭い1Kのアパートには、換気扇の回る虚しい音だけが響いている。


腹が減った。ふと目をやった机の端に、先日の遺品整理で見つけた古いキャンパスノートが置かれている。生前、「夢なんて見ずに早く普通の幸せを掴みなさい」と口うるさく言っていた亡き母のレシピノートだ。


『絶対に失敗しない究極の唐揚げ』


そのページには、鶏肉のグラム数から下味を揉み込む回数、二度揚げの秒数まで異常なほどの細かさで工程が記されていた。僕の夢を否定し、普通を押し付けてきた母の唯一普通じゃない執念のレシピ。


「……たまには普通の飯でも食うか」


僕はスーパーの特売肉を取り出し、ノートの指示通りに調理を始めた。醤油大さじ一・五、ニンニクはすりおろしを三グラム、揉み込む回数はジャスト四十二回。油の温度は百七十度から、最後は百九十度で十秒。


パチパチという心地よい油の音が、徐々にリズミカルな音楽のように聞こえてくる。きつね色に揚がった肉を引き上げると、完璧でこれ以上ないほど見事な唐揚げが完成した。


──その時だった


『ピロリロリン♪ お湯張りを開始します』


突然、キッチンの壁に付いている給湯器のパネルがエラー音を鳴らし、赤いランプが激しく点滅し始めた。


「は? お湯?」


次の瞬間、ボンッ! という爆発音とともに給湯器のカバーが吹き飛び、もうもうと立ち込める白い蒸気の中から、黒ずくめの完全武装をした二メートル近い大男が現れたのだ。


「……Mission Accepted(任務を受諾した)」


大男は流暢な日本語でそう呟き、菜箸を持ったまま硬直する僕に向かって恭しく片膝をついた。


「遅くなって申し訳ありません、マスター。ところで、風呂場からひどい異臭がしますが、アレの処理も我々の任務で?」


大男の視線の先、完全に閉め切っていたはずのユニットバスのドアの隙間から、ドロドロとした青緑色のスライム状の何かが、不気味な泡を立てながら這い出してきているところだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ