表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/4

【プレゼンテーション・イン・ザ・ヘル】新魔王、究極の機能美で蛮族をわからせる

「ギャハハハ! 壊せ!ぶち壊せ! 吸血鬼どもの小綺麗な城をぶち破れェ!」


ミッドレス城の堅牢な城門は、剛腕のオークキング・トムが振るう巨大な鉄槌によって、あっという間に無惨にも火花を散らして崩壊した。


雪崩を打って城内に侵入してくるのは、緑色の醜悪な肉体を剥き出しにした三百のオークとゴブリン、オーガの軍勢。


鬼のパンツ一丁で金棒を振り回して突進する赤いオークの男。


鬼のビキニで薙刀を持ち突進してくる青いオーガの女。


ボロボロの服を着て、錆びた短剣を構えて集団で走り込んでくる緑色のゴブリンの男女たち。


彼ら、彼女らは略奪と暴力を本能とする、魔界でも最悪の脳筋集団だった。


「ひ、怯むな! 立ち向かえ!」


「防衛線を維持しろ! 魔王様をお守りするのだ!」


城内を死守せんとするバンパイア族の一般兵たちが応戦するが、急襲に満足な防備も整わず、圧倒的な物量と暴力の前に次々と押し潰されていく。


「ケケケッ! 小綺麗な服着やがって! まずはそれを剥ぎ取ってやるよォ!」


「綺麗な肌しやがって!男も女も、俺たちが貪り食ってやるぜ!」


「おい、そこのイケメンは私の獲物だよ!」


「たっぷり孕ませてやるぜぇ」


男のオークは女のバンパイアに襲い掛かり、女のゴブリンたちは、集団で男のバンパイアに襲い掛かる。


豪奢なドレスや鎧が力任せに引き裂かれ、バンパイアの女たちの悲鳴、男たちの断末魔の声が虚しく城内に響く。


魔界の戦闘において、衣服の損壊はそのまま防御力の喪失と精神的敗北を意味していた。


力による凄惨な蹂躙が、繰り広げられていたその時――。


「――そうかそうか、なるほどねー。現場の状況は実に危機的、原因は業務効率の低下ですかね?」


玉座の間の奥から、静寂を切り裂くような硬質のバリトンボイスが響き渡った。


その脳の奥まで直接響くような魔王の声に、戦場の喧騒が、ピタリと止まる。


オークたちも、服を引き裂かれたバンパイアたちも、一斉に声の主へと視線を向けた。


そこに現れたのは、四人の男女。


先頭に立つのは、二十五歳に若返った細マッチョのボディに漆黒の髪を持つ絶世のイケメン魔王・山室豊。


だがその身に纏っているのは、漆黒のハイレグ競泳水着『シックスフライト』一丁。


大企業の人事部長として数々の修羅場をくぐり抜けてきた男の圧倒的な威厳を放ちながら、股間は限界までモッコリと主張している。


その後ろには、真紅の『マジェスティライン』の超ハイレグに顔を赤らめるバンパイアクイーンのセレナ。


純白の極薄『ハイレゾCD』を纏い、既に肌を透けさせ、「白アジ」の特徴を遺憾なく発揮している淫らな目のサキュバスロードのリリア。


そして、黒と炎の模様のシルクのような光沢を放つ『シューコス』に強靭な肉体を包んだミノタウロスウーマンのミミ。


あまりにも前衛的、かつハレンチ極まる四人の登場に、オークキング・トムをはじめ、オーク族の一団は一瞬呆然とする。


だが、次の瞬間、オーク族の三百人は腹を抱えて大爆笑した。


「ギャハハハハハ! なんだあ!? そのピチピチしたド変態な布切れは! 新魔王とその幹部どもは、全員頭が狂っちまったのか!? 防御力ゼロの裸同然じゃねえか! おい野郎ども、あの最高にイケてる美女どもを捕まえろ! 最高の肉の宴だ! 最初から剥く手間が省けて最高だぜぇ!」


「オオオオッ!!」


オークキングの命令一下、オークたちの下劣な性欲が一気に爆発し、数十匹が鼻息を荒くして突撃してくる。


その光景を見ながら、服を剥ぎ取られて絶望していたバンパイア一般兵たちは、涙目で全く別の戦慄を覚えていた。


えっ……? 私たちの新しい魔王様、敵に剥かれるまでもなく最初から脱いでる……?いや、脱いではないが……。


なんか、全裸より圧倒的に官能的で……、あれは服なのか?


セレナ様たち、なんて破廉恥なお召し物なの?私たちより圧倒的に防御力も布面積もゼロなんですけど、一体何が始まろうとしてるの……!?


困惑する兵たちをよそに、豊は腕を組んだまま、微動だにせず部下たちに告げた。


「そうかそうか、なるほどねー。セレナさん、リリアさん、ミミさん。その水着は裏切らない。自信を持ちなさい。無駄な装飾を全廃し、機能性を極限まで高めたその『競泳水着』のスペックを、あの未開の豚どもに教えてあげるのです。――業務開始キックオフです!」


「かしこまりました、魔王様……!」


最初に動いたのは、ミミだった。


これまでは数十キロもある重厚なプレートアーマーを好んでいた彼女だが、今は『シューコス』一丁。衣服の重量は実質ゼロである。


「ミミ、軽い……すごく、動ける!」


ドォンッ!! と爆音を立ててミミが踏み込んだ瞬間、その巨体が残像を残して消えた。


「ぶひっ!?」と驚愕の声を上げる巨大な男オーガの目の前に瞬時に肉薄し、自慢の怪力を込めた拳を叩き込む。


衣服による摩擦抵抗が一切ないため、筋肉の連動が150%の効率で拳に伝わった。


バキィィィンッ!!!


一撃でオーガの巨体が遥か後方の壁まで吹き飛び、粉砕される。


「なっ、速すぎる!? 待ちやがれ!」


オークたちが束になり、錆びた剣や斧を振り下ろすが、ミミは『シューコス』のハイカットカッティングによって完全に解放された股関節の可動域を活かし、軽々と回避する。


「ほら見ろ! やっぱりな。当たらなければ、どうということはない!」


山室は悦にいって戦闘の行方を見守る。


一方、真紅の『マジェスティライン』を穿いたセレナの戦場もまた、驚異に満ちていた。


オークの棍棒が迫る中、セレナはウエスト位置まで切れ上がった超ハイレグの脚を、天に向かって美しく蹴り上げた。


「はぁっ!」


ズバァァンッ! と空気を切り裂く回し蹴りがオークの首を正確にへし折る。


その拍子に激しく飛び散ったオークの汚い血液が、セレナの胸元や太ももを濡らす――はずだった。


ピシャッ。 


「やだ!汚いっ!あら……?」


セレナが目を見張る。


飛び散った血液は、水着の表面に施された波状の撥水プリントによって、まるで油の上の水滴のように綺麗に弾かれ、床へと滑り落ちていった。


生地には一滴の汚れも残っていない。


「すごい……本当に、私の美しい身体も、衣装も、一切汚れませんわ……! 衣服が血を吸って重くなることもない……なんて素晴らしい戦闘合理性ですの!」


「ふふ、私の『白アジ』も見てくださる?」


リリアが妖艶に微笑みながら、ゴブリンたちの群れの中へと踊り出た。


既に先程山室と激しい一戦を交えたことによる汗と、戦場の湿気を吸った純白の『ハイレゾCD』は、豊の予言通り、恐るべき特性を発揮していた。


「な、なぁっ……!? お、おい、見ろ……!」


突撃していたオークたちの足がガタガタと止まる。


濡れた白い布地が完全にクリアに透け、リリアの豊満なバストの中心部、そしてハイレグの奥にある極秘の丘を、生々しく世界に露出させていたのだ。


「あ、ああ……なんてくそエロいんだ……」


「辛抱たまらん……!」


オークたちの目が完全にハートマークになり、呆然と立ち尽くして武器をポロポロと落としていく。


サキュバスとしての魅了魔法が、水着の「透け感」という物理的ブースターによって一瞬で限界突破していた。


「隙だらけですわね。うふふ、さようなら」


リリアは視線を奪われたゴブリンたちの首を、鋭い爪で次々と優雅に切り裂いていった。


三百いたはずの軍勢が、水着を纏ったわずか三人の女性幹部によって、文字通りゴミのように蹂躙されていく。


あっという間に百人を切るオーク軍団。


「お、おのれぇぇ! よくも俺の部下どもを!」


戦況の急変に激怒したオークキング・トムが、巨大な鉄槌を振りかざして自ら突入してきた。


その狙いは、後方で腕を組んで戦況を分析している新魔王・山室豊。


「死ねやァァ! このド変態の魔王ッ!」


「そうかそうか、なるほどねー。感情に任せたアプローチは、ビジネスにおいて最も悪手ですよ」


豊は冷徹な人事部長の目でトムを見据えると、右手をスッと突き出した。


イメージするのは、水着の中に秘められた強力な「着圧コンプレッション」。


肉体を限界まで締め付け、エネルギーを一点に凝縮させるあの強烈なパワー。


「我が魔力よ、高密度に圧縮コンプレッションし――対象の『性欲』および『破壊欲求』を全廃しなさい」


ブォンッ!!!


豊の手のひらから放たれたのは、漆黒のドーム状の制圧魔法。


それはトムを含めた、生き残りのオークたちを一瞬で包み込んだ。


「ぎ、ぎゃあああ!? な、なんだこれ、身体が……身体の芯が、もの凄くギュウギュウに締め付けられるぅぅ!」


魔法の障壁が、まるで極小サイズの競泳水着を無理やり着せられているかのような強烈な着圧となって、オークたちの肉体と精神を圧迫していく。


過度な邪念を削ぎ落とすその魔力は、オークたちの脳内を占めていた下劣な「性欲」と「凶暴性」を、物理的に根こそぎ消滅(無害化)させていった。


「あ、あ、頭が、冴え渡る……。俺は一体、なんて恥ずかしいことを! なんてお下劣なことをしようとしていたんだ……」


魔法が解けた時、オークキング・トムは、その場に両膝と両手をつき、賢者モードのような虚ろで澄み切った目で涙を流していた。


背後のオークたちも完全に戦意を喪失し、あるものは膝をつきうなだれ、あるものは天を仰いで己を恥じ、あるものは正座をして反省いる。


豊は漆黒の『シックスフライト』のレッグラインを堂々と誇示しながら、トムの前にゆっくりと歩み寄った。


「そうかそうか、なるほどねー。自分の過ちに気づけましたか。トムさん」


「は、はい……魔王様。俺たちが間違っていました。本能のまま、破壊欲求や性欲で戦おうなんて、頭が悪いどころの騒ぎじゃねえ……。俺たちオーク族は、今この瞬間から、新魔王様に絶対の服従を誓います……!」


「そうかそうか、なるほどねー。トムさん、素晴らしい、実によいマインドセットの転換パラダイムシフトです。あなたのその素直な評価、魔王(人事部長)として高く評価しますよ」


豊は満足げに頷くと、再び魔力を練り上げた。


「服従の印として、あなた方にも『我が軍の制服』を支給しましょう。我が内なるアーカイブから、オーク族の強靭な肉体を最も活性化させる『競泳水着の名作』をチョイスしました」


バチバチと空間が爆ぜ、トムの前に出現したのは――布地が極端に小さく、中央に三つの三角形が並んだ、独特のネイビーカラーの女性用競泳水着。


「これぞ、我が前世の世界における伝説のブランド『アニーマ』が誇る、旧ロゴ時代の『タフウェア』です」


「た、たふうぇあ……?」


トムがおずおずとその小さな布切れを受け取る。


「そうですよ。現行品とは違い、当時のカッティングは圧倒的にハイレグで小さく、特にお尻の露出面積が非常に広い、ハイカットが最大の特徴です。生地は非常に丈夫で、毎日の激しい労働や戦闘ワークアウトにも耐えうる、まさにあなた方脳筋……失礼、肉体労働派のオーク族にこそ相応しい『究極の作業着』なのです」


「お尻の露出が……広い……?」


トムは、衣服の無駄を徹底的に排除したその小さな『タフウェア』を見つめ、ゴクリと唾を呑んだ。


そして、その場で衣服(鬼のパンツ)を脱ぎ捨て、タフウェアへと足を通した。


パチン、パチン。


ポリエステル100%のゴワつきを伴う頑丈な布地が、オークの肉体に容赦なく食い込み、トムの引き締まった(しかし醜い)緑色の巨体に、超ハイレグのタフウェアが完璧にフィットしていく。


お尻の割れ目には、容赦なく布地が深く深く食い込んでいった。


「う、おお……! 股関節が、信じられないくらい軽い! それに、このお尻の食い込みが……戦士としての緊張感を、常に俺の脳にビンビンと与えてくれる……! 素晴らしい、素晴らしいぞタフウェア!」


トムは涙を流して歓喜し、その場で何度も見事なハイレグ姿でスクワットを繰り返した。


「ギャハハハ! 見ろよ野郎ども! 俺のお尻、めちゃくちゃ引き締まって見えるぞ!」


カシラ、最高に機能的で格好いいです!」


「頭、俺たちにも着させてくださいよ!」


生き残った百ほどのオークやゴブリン、オーガたちも、次々と豊から配られたタフウェアを奪い合うようにして着用し、城門前は一瞬にして「紺色の超ハイレグのオークやゴブリンたち」が狂喜乱舞する、この世の地獄のような楽園へと変貌した。


「魔王様……最高に狂っていらっしゃいますけれど、本当に……本当に、最強の国家が作れてしまいそうですわ……」


恥ずかしさを通り越し、タフウェアを着てお尻を突き合わせながら踊るオークたちを冷ややかに見つめるセレナ。


「そうかそうか、なるほどねー! 全員よく似合っていますよ!」


漆黒のハイレグ水着姿のイケおじ魔王・山室豊は、両手を広げ、月夜に向かって高らかに宣言した。


「魔界からすべての無駄な鎧とドレスを駆逐し、魔界を『競泳水着』のドレスコードで統一し、ハイレグで染め上げてやりましょう! 」


「オオオオオッ!!! 魔王様に栄光あれェェェ!!!競泳水着に栄光あれェェェ!!!」


パチパチパチンッ! バチィィンッッ!!!

(※百体分のタフスーツのゴムが、引き締まったオークたちの肉体に一斉に弾ける、凄まじい地獄の破裂音)


ミッドレス城に、前世の地球で絶滅したはずのハイレグの勝鬨が、割れんばかりの轟音となって盛大に響き渡るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ