9
馬にご褒美の角砂糖を与える時に、闘馬には塩飴を出して与えてみた。
長いクルンとしたまつ毛に縁取られた綺麗な瞳に、涙が盛り上がってきた。グッグッと押し殺す様な声が聞こえる。「好きだと思ったんだ。」
フンフンと鼻を鳴らす様に返事をしてくれる。
心なしか足取りも軽くなり、明るいうちにバークまで辿り着いた。
馬を貸馬屋へ一旦戻し、宿に戻った。魔獣1頭の追加料金を支払い、闘馬を中庭から入れて、部屋付きのお庭へ入れてもらう。
「先に闘馬のお世話しちゃうので、すみませんが少しお待ちくださいね。」
「サンタ、ママの代わりにお返事を聞いてくれる?」
「そうだね。」とサッと立ち上がる。
ブラシをかけて、汗ばんだ肌を冷たい水で絞ったタオルでゴシゴシと拭く。
ご飯は約束通りに肉にするとして…お米も食べるのかふと疑問に思いながら出してみた。
そしてどの位食べるのかもわからないので、焼肉丼を四つとバケツ二つを収納から出し、それぞれに水とご飯を入れて与えてみる。
全く足りず、あっという間に食べてしまったので、焼肉と白米をそれぞれ出して、ご飯を敷き詰めたバケツに豪快に肉を盛り付けてみた。
泣きながら無言で食べるのが不憫で、種族としての特徴を無視した飼育方法をしているアーロン達繁殖家に腹立たしい気持ちが溢れた。
念のためお腹に手をかざし、治癒の必要がないか確認してみるも、全く問題は起きていなかった。
「おかわりしてね!たくさん食べて…」
フンフンと返事を返してもらい、食事を何度も継ぎ足す。
「もういいってさ」
「そっか…藁をもらってくるから、今日はお庭で休んでね!」
馬子の子供に藁を運んでもらって寝床をつくり庭を離れた。
そういえばお腹はペコペコだ…
「サンタお腹空いたよね?ごめんねすぐご飯にしよう」ごめんごめんと申し訳ない気持ちで急いだ。
「焼肉丼がいい。美味しそうに食べてたから」
「いいねー」私も今日はがっつり食べたい気持ちだった。
居間ではスカーレットさんとトラジが焼き菓子を摘んでいた。彼等もお腹が空いているのに随分待たせてしまった。
「ごめんなさい。お待たせしました。すぐ食べれるもの出しますね」
丼を出してご飯と焼肉、ナムルを盛り付けていく。
卵とワカメのスープもスープ皿によそって、
「完成です!いただきましょう」
「美味いぞ。ピリっとしたスパイスダレがいい」
喜んでくれて良かった。
キンキンに冷えたビールも飲んじゃおう。
私はツマミとビールではなく、ご飯をビールで流し込む派であり、日本では正統派ではない派閥ではあるが、スカーレットさんには、同時が当たり前なんです風の顔をして出してみる。
「美味い!美味いぞ!」
ふむ…日本のみなさんは多数派がこちら側だったならば米を食べながらビールを呑む人がもっと多かったかもしれない。
昔の方々がビールで乾杯する時に米は後から、と偏った意見を押し付けた結果がああだったのかも。
「その入れ物を見せてくれ」
ビールを注いだ空き缶が気になる様だ。
「どうぞ」
笑顔で手渡した。食事しながらサクッと3缶飲んだ私はスカーレットさんにお代わり分を渡して立ち上がる。
「デザートに果物を出してくるね」
闘馬の様子が気になったので、庭に出る。
うつらうつらしていたのかとても眠たそうだった。
バケツを出してシャインマスカットを入れてみる。
フンフンと鼻を鳴らして、すぐに口に入れ、一咬みした途端に目をうっとりとさせた。
嬉しそうな顔を見て、部屋に戻った。
二人はベッドマットの上に移動してくつろいでいた。
「ごちそうさん。そろそろ俺も部屋に戻るわ」
「ハイ今日はありがとうございました。ゆっくり休んでくださいね」
おやすみと皆が言い解散した。




