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西門のすぐ近く、貸馬屋さんの前にはスカーレットさんが待っていた。

魔術師らしく荷物が少なく腰のホルダーに杖をさしただけで、編み上げの革のブーツはあちこちが魔術で強化されている。

上着は袖口や裾や中生地とか、色々と装備しているんだろうなぁ…何の革かはわからないけれどとっても高そうだ。



「おはようございます。遅くなってすみません。」

「あぁ。まずバークに行く。そしてバークで一泊して朝イチでアセニア渓谷に向かう。バークからは半日位で着く。」

「わかりました。おまかせしますね!」

当然馬代は私が払おうと思っていたのだけれど、

「もう払ったからいい。馬はこっちで選んだからな。」と…払ってくれちゃったらしい。

バークから帰ったら何かお礼をしなければ…と考えていたところで

「礼は酒でいいぞ」と言われて思わず笑ってしまい、

「では戻りましたら、お土産としてお持ちいただきますね」

馬代の相場がわからないのでどこかで確認して、失礼のない充分な物で返そう。


貸馬屋さんで馬を受け取り、門の外で騎乗する。サンタとトラジは家猫サイズになってもらい大型のリュック型キャリーの中で、安心安全に出発した。

こちらの世界に来る時に、魔力の高い魔獣に変化した元家猫達は、魔力をギュッと圧縮したり、薄く伸ばして広げる事により大型化が可能だ。


それでも本人達が

「猫なので…」

と言うので、こちらの世界の一般的な猫とは少し違うけれど、利口で元気で丈夫な、自慢の猫です。


道中街道にでるまでは、徒歩や馬車での移動をしている人が多く、並足程度の速さで移動していたけれど、その後は3時間程走り、山間を抜けると簡易的な休憩場所に到着した。近くに川があるらしい。


私の魔術収納の中には、前の世界で生きてきた人生

で、購入した全てのものが入っており、劣化もしない。例えば米なんて米屋に卸せる量が入ってるし、洋服や靴等から日用品などの品物は買った時の状態で出てくる。

大量の在庫があり、しかもあちらの世界の家族が購入した品物のコーナーまである。


飲食店の食事やテイクアウトの料理は提供された時の状態で出るので、野外での食事はとても便利だ。


皆んなに、テイクアウト品のお弁当とお茶、食後のエクレアを出し、昼ごはんにする。

スカーレットさんが土からテーブル、イスを作ってくれたので使わせてもらう。


「川で遊んでもいい?」と早々に食べ終えたトラジがこちらを見てる。

「かまわないが、馬の世話が終わるまでだぞ。」


「俺がみてるよ」

とサンタがついて行ってくれたので、スカーレットさんと一緒に馬にブラシをかけ、体を拭き、食事をさせる。

水を飲ませる為に川に行くと

「電気を流すより風ですくったほうが良くない?」

「川に入るのはナシだよね…」

あそこが浅いとか、川幅がせまい所から…とか、二人が相談をしている。

残念だけれど、30分くらいで出発だと伝える。


「ここからは道が悪いから並足で行く。休憩なしで、暗くなる前にバークまで行く予定だ。」

「行こうかー」と川に未練がある二人がリュックに入ってくれた。


天気も良く、馬達に角砂糖のご褒美を与えながら進み、予定通り閉門前にバークにたどり着いた。

馬達は貸馬屋のバーク支店に預けさせてもらう。


ここでも宿は魔獣の入れる宿をとる必要があり、部屋数は少なく、一部屋しか空いてなかった。

日本風に言うと、その部屋の間取りはワンLDKで庭がある。

スカーレットさんに寝室を譲り、私はベットマットと羽毛布団を収納から出して居間で寝るとする。


「おい…生活用品まで収納に入っているのか?

…普通は寝具や家具は入れないだろ」


「そうですねぇ。普通だったら入れませんが、備えとして必要だったので。

そもそも私が異国人なのはご存知ですよね?」

「そりゃな。黒髪黒目の人間なんてこの国ではまず見ない」


「私のいた国では数100年に一度、大きな厄災がありまして、その厄災は魔術師が強制的な転移で弾き飛ばされると歴史書には記されていて、

世界の果てまで飛ばされると書いてあり、戻って来た人がいないとの事でした。」

それで?と首をかしげて先を促され


「国もどんな厄災なのかわかってないんだろうと、皆が言っていました。

魔力の高い者が被害に遭ったと記録が残されていたので、可能性のある者は、それこそ何年もかけて収納に品物を備えていました。

そうしたところ、なんと…まさかの厄災が私に落ちたんですよね」

「ほぉー。それは災難だったな。国に戻りたくはないのか?戻ろうとした事はあるんだろ?」

「国も、その周辺国も、ここからではどこにあるのかわからないので、戻れないんですよ。

けど私にはこちらの水が合っているとゆうか、こちらのほうが生きやすいので、問題はないですね」


「お前の鑑定をさせてくれないか?」

普通は疑いますよね…まぁ話をした以上、そこら辺は受け入れますけども。

「いいですよ。けど文字が違いますから読めませんよ?」

「ふうん。全く見たことのない文字だな。もしかして黒海の向こう側から来たのか?」

「んー…私のいた国はここから陸続きで移動し、海を渡り、何年?何十年も移動し続けた場所にあるのかもしれませんし、黒海の向こうにしかないのかもしれません。」

「黒海の向こうの国が、地続きで繋がっているとしても、果ての果てにあるならば、そんな国など行く事は出来ませんし、そんな遠くの国なんて無いも同じですよね。」

黒海じゃ、あちらから来る事は出来ても、帰る事が出来ないし。そとそもあれは魔窟…


「ですので、わかりません。」

「だよなぁ。」


「けどまぁ、来てしまったものは仕方ないよな。

戻れないなら、あれは終わった人生だと思って、2回目の人生をやればいい」


「そうですよねぇ。猫達が私との繋がりを頼りに追ってきてくれたので、それだけで充分というか…あちらに未練は何もないんですよね」

それもそれでどうなのかと思うけど…私にとっての宝物を置き去りにした可能性なんて…考えるだけで恐ろしい。

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