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人を転生させて、幸せになろうと思う  作者: ふぇい
第一章 書界管理課司書室転生担当、二見 理
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第一章13 二見理の解決法

 と、いうわけで。

 我々は今、某県某所の旧茅島ハウスへとやってまいりました。


 築二十二年、木造二階建てで陰鬱な雰囲気をバシバシ醸し出しているこちらの物件。

 普通に私有地なので第三者である俺は入れないものなのだが、なんか天守さんが司書室として申請を出して許可をもらったそうだ。


 ていうか何でもしていいと言われた。現在の持ち主も呪われた家だと知っているようで、除霊してくれるならどうなっても構わないと言うことらしい。


 本当かな。


『それで、その備品は何時くらいに届くんですか?』


 胸のペンダントから茅島さんの声が聞こえてくる。


 すでに亡くなってしまっており、魂だけの状態となっている茅島さんはそのままでは外出が出来ないということだったので、今はこのペンダントの中に入ってもらっている。

 そうすれば俺が持ち運ぶことが出来るというわけだ。


「もう来る時間なんですけどね。渋滞とかに引っかかったのかな……」


 とか言っていたら、曲がり角からトラックの姿が見えた。

 どうやら備品が届いたらしい。



***



『あの……備品ってこれですか?』


 俺(with茅島)の前、というか旧茅島ハウスの前には二トントラックが止まっている。

 荷台には俺が手配した備品が山のように積まれていた。


 運転手さん引き渡しに関する手続きを終えたところで、この場に待機してもらうよう依頼をする。

 当然、事前に調整済みである。



「その通りです。清めの塩七十袋と塩放出器各種ですね」


 今回カタログから注文した備品は清めの塩とそれを噴射するための、各種重火器みたいな放出器。


 実は書界管理課ではよく使用するものらしく、清めの塩関係の武装は充実しているという話だった。

 武装て。


 ちなみに清めの塩は由緒正しい部署に清めてもらった一級品だそうで、その性能は折り紙付きとカタログには書いてあった。


 大丈夫かな。




 そして備品はもう一つあるのだけれど、それは最後のお楽しみということで。


「それじゃあ、先ほど説明した作戦通りやっていきますか……」


 さあ、ミッションの準備をしよう。



***



 まずは、天守さんからもらった五芒星のお札を張っていく。

 家を中心に五角形を描き、その頂点にお札をとりあえず五枚ずつくらい張っていくことにした。


 天守さんの説明によると。


「まあ一枚で十分なんだろうけど、何かの拍子に剥がれたりするからね。五枚くらい張っとけばいいよ」


 とのことだった。

 何たるアバウト。


 ちなみにこのお札は中の悪しきものが外に出ないようにする効果と、外の悪しきものを招かないという効果があるそうです。

 具体的には中で何をしても外に影響がでないようになります。


 ちなみに登録した者は出入り自由ということで、当然俺と俺に付属する茅島さんは出入り自由だ。


 いわゆる結界というやつである。




 しばらくしてお札も張り終わり、いよいよ本格的にこの家を攻め始める。


 まずは清めの塩で耕すか。


「ほい、ほい、ほいっと」


 結界を張った五角形内のあちこちに自動銃座型の塩放出器を配置していく。




 三十分くらいかけて家を囲むよう計十六箇所に設置した。

 自動銃座はマシンガンみたいなやつとかランチャーみたいなやつとかスプリンクラーみたいなやつとか様々である。

 一ヵ所に塩三袋を弾として、どすんどすんと置いた。


 その後、窓ガラスを開けたり外したりする。

 もちろん、開けた部分から自動銃座で清めの塩をぶち込むためだ。


『何らかの法に引っ掛かりそうな気がしますけど、大丈夫なんですか』


「大丈夫だと聞いています」


 新入社員である俺は上長の判断を信頼するのみである。


 最後に天守さんからもらった鏡のゴーグルと防護マスク、火炎放射器みたいな携帯型の塩噴射機を俺も装備して準備万端となる。


 にしても重いな、全身の装備を含めると二十キロ以上あるから当たり前ではあるが。気分は中世の全身鎧を着た騎士と言ったところだろうか。




「それでは茅島さん。作戦開始の号令をお願いします。説明したようにこれはあなたが参加しなければ意味がありませんからね」


『想像してた除霊とは、なんか違う気がするんですけど』


「なにか」


『いえ、なにも』


 茅島さんはなおもぶつぶつと言っていたが、何とか気を取り直して宣言した。


『こほん。それでは、悪霊退散大作戦を開始してください』




 まずは自動銃座を一斉に起動させる。

 ボタンぽち。


 ウィィィィィンとうなりをあげて設置した自動銃座が起動する。

 しばらくして、ダガダガダガダガ、バシュンバシュンバシュン、サァァァァァァァァ、と様々な発射音が聞こえてくる。


 家の中はというと予想通り、それはそれは無残なことになっていた。

 吹雪の日に一軒家の天井という天井をすべて取り払っていたらこんな感じになるかもしれないというような有様である。

 鏡やガラスは砕け塩の一部と化し、家具は塩の濁流に沈み、壁は穿たれ続けており、その内穴が開くだろう。


 故人はこの光景を見て塩撃壁を穿つということわざを残したという。

 嘘てす。




 まずは耕す。

 敵地を占領する際の作戦の一つだ。支援砲撃や航空支援によって敵陣地を叩けるだけ叩く。そして疲弊、混乱しきったところで本命の陸軍を投入するのだ。


 就活中のやむにやまれぬ事情の際に似たようなことをしたため、イメージはつきやすかった。


 各銃座が塩二袋を使い切るまでは、トラックの荷台に座って茅島さんのおすすめの動画でも見ることにしよう。



***



「突撃します」


 充分な時間がたったので、”じゃきん”と装備を構えた俺はそう言った。


『えいえい、おう』


 掛け声それかよ。

 まあいいか。


「えいえい、応ッ!」


 全軍(俺一人)突撃!


 まずは全身の重さをそのまま破壊力へと転じ、全速力で玄関へ体当たりし、扉を粉砕した。


『なんで? 普通に開けたら!?』


 度肝を抜いたほうがいいかなと思って。




 玄関に突入土間を越え廊下へ侵入した。

 ゴーグルの索敵機能を展開すると不明な反応が一階奥の部屋から検知された。


『そこはリビングです』


 リビングへ入る扉の前まで慎重に歩を進める。


 まずは扉をわずかに開けて、清めの塩拡散グレネードを二つ放り込む。


 ズバン、ズバンと二つ音が響く。

 わずかに”ぐぉぉぉ”と声が聞こえた気がした。


 さらにサーチングボールを投入し、部屋の中の様子をスキャニングする。

 ゴーグルへ状況を映し、特に問題ないことを確認。


 往くか。


 ドゴン、と扉を吹き飛ばす。


『なんでや』


「観念しろ! 書界管理課司書室だ!」


 部屋に侵入するとなんか黒い靄のようなものが部屋の隅から飛びかかってきた。




「うらめしやぁぁぉぼぼぼぼほぼぼほおぼおおぼぼぼおぼ」


 ので、清めの塩を思いっきり噴射してやった。


 ゴーグルの分析結果によると地縛霊タイプの悪霊(瀕死)とのことだった。

 悪霊なのに瀕死とはこれいかに。


 しばらく噴射し続けていたら、黒い霧が霧散した。しかし、まだ反応は消えていない。

 この家のどこかに潜んでこの場をやり過ごすつもりなのだろう。


 やはり直接的な制圧は厳しいか。


 仕方がないので最後の備品を家のあちこちに設置することにしよう。



***



 それからも備品を設置しつつ家の中を見て回って、不明な反応があったものに清め

(物理)を実施したが、根本の解決にまでは至らなかった。


 仕方ないので最終手段を使うとしよう。


『……あの、いろいろとありがとうございました。なんかここまでやってくれたのを見ると、少しは気分が晴れたように思います』


 玄関から出る時に茅島さんがそんなことを言った。


「いえ、まだです。フィナーレが残ってますよ」


『え? 作戦では二見さんが突入して塩をまき散らすだけでしたよね』


「まあ、見ててください」




 俺は玄関を出て数歩進み、ゆっくりと携帯端末のスイッチに手をかける。


「今回の相手は地縛霊タイプだそうです。それも建物についているタイプ」


『はあ。やっぱりこの家がいわくつきだったんですね。今となってはほぼ塩の塊ですけど。なんかわたしも浄化されそう』


「なのでこの家、爆破しますね」


 ぽち。



 ものすごい轟音と共に、さっきまで家だったものが木っ端みじんに吹き飛んだ。

 その衝撃に天は裂け、海は割れ、大地は崩れ、人々は我知らず滂沱の涙を流した…………ような気がした。

 

 いや、正確に伝えるのであれば家だけ消滅した。


「なんか書界にある魔法? 由来のものらしいですよ。なので法にも引っかかってませんし、結界のお陰で外に影響もないので大丈夫だと思います」


 自分で言っててちょっと心配になってきた。

 やりすぎたかな?


『…………』




 あ、宿主を失った黒い靄が宙に浮いてる。


 実はこのために自動銃座に弾(塩)を残してたんだよね。


「全弾発射!」


 フルファイア!


 全銃座から中空の靄に対して大量の塩が撒かれ。


「ぅぉぉぉぉぉぉぉぉん、円環の虹に栄光あれぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 ぷちっと音がして、おそらく茅島一家を無残にも死に追いやった元凶は消滅した。


 悪霊退散大作戦これにて作戦完了。




 ふう。


『なんか、思っていたのと違いますね。いやまあ、いい意味で……ですけど』


 俺が一仕事終えた達成感に浸っていると、胸のペンダントから茅島さんが苦笑いしたような気配が伝わってきたのだった。




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